読後メモ・『世界は贈与でできている(資本主義の「すきま」を埋める 倫理学)』近内悠太著 2020.03.13発行
「 贈与の原理を知ることで僕らは世界の成り立ちを理解し 大切な人たちと出会い直すことができる」と裏表紙に記載がありました。資本主義に限ったことでもありません 。
この本では、必要としているにもかかわらず 「お金で買うことのできないもの」を贈与と呼んでいます。
私が一番感化されたところは、ヤマザキ マリさんの漫画『 テルマエ・ロマエ』 に 絡めて書かれた部分。
浴場設計者としての職務に熱心な ルシウスが、タイムスリップする日本の浴場にワープするたびに、戸惑い、ありとあらゆる 勘違いをしながらも、「そこに存在しているもの」にいちいち 真剣に驚く様子。僕らにとっては取るに足らない現代日本のあらゆるものが、恐ろしいほど高度な技術や センスの結晶と映る。
ルシウス が見て驚くもの、それらは古代ローマには存在していなくて 現代においては存在しているもののおよそ 全て。それらは僕らが“ 気づかぬうちに 受け取っていた 贈与” なのです。
何気ない日常の中で溢れている無数の贈与のありがたみ は隠されている。あって当たり前であって、それがなければ文句を言いそう。 逆説的なことに 現代に生きる 我々は、何かがないことには気づくことができますが、 何かがあることには気づけません 。
と、逸脱的思考で世界と出会い直すための 想像力を働かす。
そう、 山の手線をはじめとする電車の驚くほどの定時 運行 や 自動販売機、いつでも便利なコンビニの陳列棚等々。我々を取り巻く環境も、全て おじいちゃんおばあちゃんが子供の時代にはなかったものであるにも関わらず、当たり前のように 享受できています。
翻って考えてみても フィギュアスケートの4回転 だって、もともとのルーツは100年以上前のアクセルジャンプ1回転半だとか。 2回転3回転ジャンプの様々な形を経て、 4回転も出来上がっている。 3回転の技術がなければ、4回転も生まれていない。当時の3回転を誕生させた選手が、今と比べて大変劣っていたわけではないですものね。
体操の技もそう。塚原選手の月面宙返りからの発展があったからこそ、その後様々な回転ひねり技が生まれています。
そう思うと色々なことで タダ乗りさせて頂いていることに感謝感激します。
そんなに多額のお金がなくても、生きていける気がしてきました。