心の余白をとりもどす。対話による精神療法『オープンダイアローグ』とは?
先日、『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』という本を読みました。
漫画の事例+解説という構成がとても読みやすく、内容もよかったです。
そこで、こちらの本をもとにオープンダイアローグの概要と、実際にやってみた感想を紹介します!
オープンダイアローグって何?
フィンランド発祥の「オープンダイアローグ」は、精神疾患に対する治療方法のひとつです。
オープンダイアローグを一言でいうと、複数人で対話を続けること。
オープンダイアローグを日本語にすると…
「開かれた対話」とは何ぞや…?
というわけで意味を理解するために、単語を分けて考えてみましょう。
そもそも対話ってなに?
アニメや小説などで登場人物が1人語りする演出をモノローグと呼びますが、ダイアローグ=対話はその反対の言葉です。
この本によると対話とは、正しさや客観的さをいったん無視した「個人の主観のやりとり」をさします。
どうやって開かれた状態にする?
主観と主観をぶつけ合うと、喧嘩になったり、主張が平行線で煮詰まったりしがちです。
そこでオープンダイアローグでは、複数人がひとつの場に集まり対話を共有することで「開かれた」状態にします。
まずは患者と1人の治療者が話し、その様子をほかの治療者たちで観察します。
対話が終わると、ほかの治療者たちは感じたことをチーム内で共有(リフレクティング)しますが、患者本人は加わらずに観察します。同じ複数人でも、皆が同じ場で発言するディスカッションとは異なりますね。
オープンダイアローグでは、さまざまなバックボーンをもつ人が、それぞれの主観をフラットに見せあいます。
それにより相手は自分と違う人間なんだと気づき、理解できない相手の考えや行動を受け入れやすくなるわけです。
こうした対話を繰り返し、自然と患者によい変化が訪れるのを待つのがオープンダイアローグです。
リフレクティングとは?
オープンダイアローグのポイントを、本を参考にざっとまとめてみました。
治療者は2〜3人を集めよう
ほかの治療者が話すのを、患者は観察しよう(リフレクティング)
相手を変えようとせず、とにかく対話を続けよう
改善の予測はたてず、無計画でいこう
オープンダイアローグで特徴的なのが、上記にもあるリフレクティングです。
リフレクティングとは、治療者による、チーム内での共有タイムのこと。
このとき聞き手と話し手は、自分たちの対話がほかの人にはどう映ったのか? を知ります。ほかの治療者たちの声を介することで、患者は自分を冷静に見つめられるのです。
またワンクッション挟んで意見を聞くことで、結論をだすこと・変わることへのプレッシャーが薄まり、他人を受け入れる心の余白が生まれます。
詳しくは本にある事例を読んでいただきたいのですが、オープンダイアローグを体感するには実践がおすすめです。
オープンダイアローグの手順
本によるとオープンダイアローグは、患者役が1人、治療者役は2人以上いれば実践できるそうです。
今回は本に記載されていたガイドライン[※]にそって、4人以上でおこないました。
オープンダイアローグを体験するには、まずは以下の3つの役割に分かれましょう。
①2人で対話
雑談もまじえつつ、決めた時間はとにかく対話を続けます。
②リフレクティング
2人の対話を聞いて感じたことを、ほかの治療者はチーム内で共有。聞き手と話し手はその様子を黙って観察します。
③2人でまた話す
ほかの治療者のはなしを聞いてから、ふたたび聞き手(治療者)と話し手(患者)で話します。
④全員でシェア
全員で集まり、それぞれ感じたことをシェアします。
実際にやってみた感想
今回、私は聞き手(患者と話す治療者の役)として参加しました。
もっとも印象的だったのは、1回目と2回目で対話の空気感が変わったことです。
ほかの人たちの感想を挟むことで、2回目の対話はお互いにより本音で話せている感じがありました。
おそらく、ほかの人にも聞いてもらえている安心感からだと思います。というのも、リフレクティングを挟むと、不思議とチーム感がでるのです。
仲間がいる安心感から「この人に伝わるように話さなくては」「私がすべて理解しなくては」というプレッシャーから2人とも開放されたのかなと思います。
また役割によって、さまざまなな感想が聞けるのでおもしろかったです。
誰しも苦手なタイプはいると思うのですが、オープンダイアローグを意識すると、心に余裕が生まれ、自分と異なる考えの人を受け入れやすくなれるかもしれません。
よかったら皆さんも、お友達を誘って気軽にチャレンジしてみてください♪
参考書籍・資料
解説 斎藤環,まんが 水谷緑(2021)『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』株式会社 医学書院
※ オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン「対話実践のガイドライン」2024年1月13日閲覧