時空を超えた旅part1
(ハワイでの休息)
彼の名前は風間野悠斗。60代で、1991年にYYY株式会社を32歳で退職し、その時期におけるIT業界の変化を捉え、1993年にIT企業に転職した。彼はこの時代の波に乗り、34歳で自らが立ち上げた彼は元々はプログラマーだったがネットテクノロジーズ(株)というIT企業設立し成功させた。この成功は、インターネットの普及という時代の流れと、彼自身のビジネスに対する洞察力があったからこそ可能だった。更に最近は生成AIを使った事業も順調だった。成功後、彼はハワイのオアフ島にある別荘で穏やかな生活を満喫した。社長職からは退いていましたが、それなりの資産と、執筆活動、そして彼が設立した会社の株式からの配当金により、安定した収入を得ていた。彼にとって、ハワイの海辺での読書は格別の楽しみであった。なんの経済的な不自由はなかった。彼はある日の昼下がり「時空を超えた旅」という小説を読んでいた中々面白いと思った。すると急に眠気がさした。うたた寝をすると。眩しい光と共に過去への扉が開く不思議な体験が彼を待っていた。
(ドクターデイトリッパーの登場)
ドクターデイトリッパーと名乗る人物が現れた。ちなみにデイトリッパーはビートルズの曲から来ている様だった。彼の案内で大学時代にタイムスリップした充実した学生生活を送っていた。悠斗は若き日の選択が未来にどう影響したかを見る機会を得た。彼はかつてYYY株式会社に入社し、営業成績は良かったものの、その職に向いていないと感じていた。厚木基地の防音工事の営業の仕事だった。そして、地方公務員を目指す夢は捨てきれず。彼の営業車には公務員の問題集があった。そんな時父親の知り合いでS事業団に入社の話があったが断念した。
ドクターデイトリッパーにS事業団への転職したらどうなっていたかという事を聞いた。すると彼を別の世界へ導いていった。悠斗が彼に聞いた。すると関西の神戸に赴任し、人間関係のトラブルや仕事のプレッシャーに悩まされた。常に緑川健一という気配りが上手な同僚と比較され、劣等感に苛まれた。
(彩乃との出会い)
29歳で知り合いの紹介で一つ年上の彩乃という女性にあった。交際が始まり一時は結婚を考えたが、彼女の実家の京都府綾部の実家に行ったが悠斗が父親の前で「娘を下さい」とハッキリ言わなかったことに「俺はハッキリしない奴に娘を嫁に出せない」と言ってきた。
「愛こそが全てさ」
空に浮かぶ雲を見上げて、
君の笑顔を思い出すよ。
風が吹くたびに、
君の声が聞こえる気がする。
手をつないで歩いた、
あの日の道を忘れない。
夢中で話した、
未来のことも、今も。
君といると、時間が飛ぶように感じる。
笑顔でいられる、それが僕にとっての幸せ。
どんな時も、君を想って。
離れていても、心はひとつだよ。
愛の歌を、君に捧げよう。
ビートルズが教えてくれたように、愛こそが全てさ………
でも……暫く付き合っていたが関係は破綻した。
(やがて東京へ)
その後、東京への赴任を経て、パソコンという新しい世界に希望を見出すが技術者としては出遅れたと思っていた。だが彼は事業団を辞めようとしなかった。
悠斗が安定を求めて事業団に留まった結果毎晩残業した結果、彼は同期がどんどん出世していくのに自分が取り残されていると思い悩んだ。そして精神的な疾患に苦しんだ。医師から統合失調症と診断され最終的には彼は会社を休職したが、休職期間が満了し退職することになった。
(事業団を辞めて)
人生の落伍者になったと思った。彼は結婚もせず、就労継続支援A型事業所を転々とする生活を送っていた。最後は就労継続支援B型事業所に入るが会社との雇用関係は無かった。
最終的にハローワークで職を探すがなく。最後は就職できないで65歳を迎えようとしていた。彼は昔読んだヘルマンヘッセの「車輪の下」という小説を思い出した。彼は自暴自棄になりアルコールを飲んで、睡眠薬を大量に飲んだ。彼は意識が朦朧としてきた。
すると彼は小学校に入る前腎臓炎になり入院した時の事を思い出した。ラジオでビートルズのミッシェルが流れていた。「アイラブユー、アイニードユー、アイウオントユー」意味は分からなかったが哀愁に満ちたメロディーだった。若いお兄さんのところにフィアンセが毎日の様に通ってきた。彼は「人間死にたくても中々死ねないもんだ」と言っていた。
(夢から覚めて)
すると目覚ましが鳴り、妻の明美が「もう、夕方4時よ何時まで寝てるの」と言う。そこにはもうドクターデイトリッパーの姿はなかった。夢だったのかと思った。私の選択は間違ってなかった。実際は36歳で出会った明美と結婚して、彼らの2人の子供娘の真奈と息子の匠はすでに成人し、それぞれ就職し家庭を持っていた。ハワイの眩しい太陽の下で、悠斗は自分の選択が彼をこの幸せな現実に導いたこと、そして過去の選択が彼に幸せな生活をもたらしたことに心から感謝した。