フィクション (2017年作品)
スタジオで微笑む写真をまた見つめ ゆかりの糸を 宙に手探る
水無月に艶めく石の輝きが後には只の幻ひとつ
無理矢理とおどけた彼女に「いいね!」する君が寄り添い私をはじく
来る別れもっと早くに言い出せば彼から言われず痛みも軽きか
新聞のニュースメールが鳴らしてる別れ以降は朝の着信
京都より君がくれたる手ぬぐいの店を見つけて 記憶上書く
絨毯にきらりと落ちた一粒は何処からか来て忘れられたか
距離越えて移動したぶん想い出に今日はピリオド打てる気がする
八月を彼方に高く吹き飛ばす冷めて乾いた九月がまた来る
白昼のバス降りる人 制服に君とも同じ名前見つける
ありのままそれぞれ時間を生きていく二人を繋ぐ友いればいいのに
失恋も出会ったひとは皆全て 運命の人と考えている
幸せは見えにくいとは言うけれどベンチでラテ飲む独りの幸せ
本当にホッとするのに誰か要る? 思うようにはいかなくてもよ
明日からは思い出さない過ぎた恋 作者不詳のフィクションとなる
(第19回 NHK全国短歌大会 近藤芳美賞 入選)
いちばん最初に作った連作ですが、なんと入選しました。