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【ショートショート】日本消滅
うちは青梅街道に面している。
朝早くから轟轟という騒音に驚かされ、飛び起きた。
小刻みに家が揺れている。地震というわけではないらしい。
玄関の扉を開けて、唖然とした。
目の前の道を、コンクリートミキサー車が走っている。何台も何台も。途切れ目なく。
タクシーもバスも乗用車も、その他の車の姿が見えない。
はじめからそのためだけに作られたかのように、コンクリートミキサー車だけが走りすぎていく。
どのミキサー車もドラム部分をゆっくりと回転させている。
なかに生コンクリートが詰まっているということだ。
建築というわけではないだろう。こんなに何百台、何千台ものミキサーを必要とする建築などないはずだ。
なにかを覆い隠すつもりなのだ。そうに違いない。チェルノブイリ原子力発電所事故級の災害ではないのか。
私はリビングにとって返し、テレビをつけた。まずNHKにチャンネルを合わせる。ちょうどニュースの時間だった。スタジオは騒然としている。中継のヘリコプターは滔々と流れるミキサー車の群れを画面に映し続けている。
やがて、ミキサー車の行き先が判明した。千代田区だ。
国会議事堂、議員宿舎、官公庁などが一斉に埋め立てられた。
慌てたのは政府である。
まるまるコンクート詰めにされてしまった。地下から脱出しようとしたところ、地下通路にもコンクリートを流し込まれてしまった。どうにもならない。
誰がどんな意図をもってやったことかはわからないが、一瞬にして日本政府は壊滅してしまった。
このあと、また新たな政府ができるのか、中国に占領されるのか、アメリカが再占領するのか、なにも予測はつかない。
見上げる空が青い。
(了)
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