【ショートショート】週末ミラクル
週末の夕方になると、近所の公園にある芝生の小山に出かけていく。
私は木でできた小さな台を広げる。子どもたちのそわそわした雰囲気が伝わってくる。
私はまずは茶色い折り紙を取り出し、馬を折った。
台の上に乗せると、馬はとことこと歩き出す。
子どもたちがわっと歓声をあげる。
折り紙の馬は十歩ほど歩いて、歩みを止める。
私は馬を取り上げ、腹の部分にふっと息を吹き込む。馬はまた歩き出した。
大人はふんといった顔をして通り過ぎていくが、気にしない。
次に私は青い折り紙と白い折り紙を取り出し、ペンギンを作った。
ペンギンもとことこ歩く。すると、足の下にあった卵が取り残される。卵はあわてて親ペンギンを追っていく。
すこしストーリー性を加えてみた。
拍手が来る。そろそろ夕暮れだ。
「気をつけて帰るんだよ」
と言って、私は年代物の台を畳み始める。
私は大きくなった馬の背中に台を乗せ、ペンギンと一緒に家に戻った。
「おかえりなさい」
と折り紙の妻がいう。
(了)
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