旅する日本語 第3語 「寸景の神楽坂」
もんぺが欲しいーー。
最近「パンと日用品の店わざわざ」という長野の山の上にあるパン屋として話題になっていたお店をTwitterで知り、何度かパンや食品などをネットで買っている。そして店主のヒラタさんのTwitterやnoteをウォッチしている中で、うなぎの寝床という福岡にあるブランドが作っているもんぺの存在を知った。
そんな中、先週7月10日から14日まで、わざわざの倉庫で開催されていたもんぺ博。金曜日の朝までは行こうと思っていたのに、その日急遽残業になり、体力的にしんどくて翌日出かけるのを諦めてしまった。
しかし一度行こうと決めていたせいかどうしても気になってしまい、東京でもんぺを買えないかとネットで検索し始めた。すると神楽坂にある「jokogumo」という生活雑貨のお店で、7月24日から29日まで「うなぎの寝床もんぺ博」をやるということがわかった。そしてそのお店では常時、うなぎの寝床のもんぺを取り扱っている、とある。
来週まで待ちきれなかった。
「神楽坂行きたい」
土曜日、昼までしっかり寝て、目が覚めた私は夫に言った。夫は他に行きたい場所を先にあげていたが、私のわがままを優先してくれることになった。ありがたい。
そうして二人、神楽坂に向かった。最寄駅から有楽町線一本で行ける飯田橋駅で降り、神楽坂に歩いて向かう。
歩いたことのない町は全てが新鮮で楽しい。道すがらいろいろなお店には入ったり、神社に寄り道したり、町並みを写メったり、町歩き自体を楽しんだ。
そして、ようやく目的地につくともう3時を過ぎていた。
jokogumoと書いて、よこぐもと読むらしい。店先の看板には、「くらしの知恵と道具」と書かれていた。
店内にはいろいろな生活雑貨が丁寧に置かれていて、とても居心地のよい空間だった。お目当てのもんぺは見つけたが、試着スペースは見当たらない。私は店員さんに話しかけた。
「すみません、これ試着ってできますか?」
するとリトグリにいそうな雰囲気の、感じのよいかわいらしい店員さんが、準備しますので、と奥のスタッフスペースに場所を用意してくれた。
幸い、店内には他にお客さんがいないタイミングで、気になるもんぺを全部試着し、店内で鏡を見たり、写真を撮ってシルエットを確認したり、と着心地や見た目をじっくり確かめることができた。
サイズもSからLまで試し、生地による伸びの違い、色柄による見た目の違いなど、手にとり、身につけて、自分に合うものを探した。
身につけるものはやはり試着して買いたい。ネットでも買えるけど、どうしても試着したかった。左2つがMサイズ、右2つがLサイズ。Sサイズはそもそもふくらはぎがきつくて入らず、Lサイズだと楽だけど、Mサイズが一番シルエットがキレイに見える。結局左2つの2着をお買い上げ。とてもいい買いものができた。
外に出ると少し風もでて日差しも落ち着いてきていた。せっかく神楽坂にきたんだからと、散策を続行。甘味屋さんでかき氷食べたい、なんていいながら歩いていると路地の先に鳥居が見えた。
赤城神社。
そういえば前に友達と飯田橋あたりで遊ぼうかと予定を立てていた時に、境内の中にカフェがある神社というのでリストアップしていた場所だった。
外国人や浴衣女子など多様性のある来訪者が目につく。神社という何人にも開かれた場所がそうさせるのだろうか。お参りをして、カフェで一休み。かき氷はなかったが、神楽坂らしい?ものということであんみつをいただいた。
神楽坂を堪能し、帰路につく。帰りはまた有楽町線で帰れるよう、江戸川橋駅まで歩いた。神楽坂は、地名に坂がついている通り、本当に高低差のある町で、坂や階段など町並みがおもしろかった。中には路地を入った先にその高低差を利用した公園があり、興味深かった。
日常の中にある非日常は、案外簡単に見つかる。遠出をするだけが旅じゃない。欲しいものを探しにでも、そうでなくとも、行ったことのない町、歩いたことのない道をいけば、それがいつでも「旅」になる。
寸景の神楽坂。
また別の目的で、別の道を歩けば、それは新しい旅になる。
帰りの電車の中、私は夫に言う。
「つきあってくれてありがとね」
すると夫は私に言う。
「つきあってないよ、結婚してる」
このやりとりは今じゃすっかりお約束になっている。そんな風にいつも快くつきあってくれる夫が一緒だから、私はいつも、どこでも、出かけても、出かけなくとも、「夫婦」という旅を楽しめているのだろう。