強度近視のメガネは、小さい方が見栄えがいいードイツの眼鏡士が解説
こんにちは、ベルリンにいる眼鏡士/メガネデザイナーのユータローです。前回はメガネが痛くなる/滑る理由について書きましたが、今回はもっとニッチなテーマです。
メガネを選ぶ基準は、似合う、似合わないだけではなく、もっと複雑なものです。プロは、個人個人の視力、レンズの種類、鼻の形/高さ、目と目がどれだけ離れているか、などなどあらゆる要素を考慮して一本のメガネを選びます。
強度近視の人のためのメガネを選ぶ基準について解説します。
強度近視用のレンズは端が分厚くなる
強度近視とは、レンズの強度がマイナス6以上ある人のことです。感覚でいうと、目から10cmくらい対象物が離れたらそれが急激にぼやけ始め、2m先の人の表情を読み取ることが難しいです。
そんな近視を矯正するにはレンズの表面をより大きく曲げ、光を屈折する力を強くする必要があります。下図の通り、強度近視用のレンズは中心が薄く、端が分厚くなります。
レンズは、切削される前は丸い
一般的な単焦点レンズは、切削される前は丸く、CGで再現すると下図のようになります。まるで灰皿のようですね。
目がフレームの中心に位置していた方がいい
細かい技術的なことは省略しますが、レンズをカットする際にその中心である光学中心点が、正面から見たときの目の瞳孔とぴったり合うようにします(老眼鏡や遠近両用レンズはまた別の話です)。
近視レンズにおいて、レンズの一番薄い部分が光学中心点です。
フレームの幅は広いとレンズが分厚くなる
ようやく説明のための材料が揃って来ました。
見栄えをよくするポイントは:
● フレームの中心に目が位置していること
● フレームの幅が広すぎないこと
レンズは当然、フレームの形に合わせてカットします。
もし、強度近視のレンズを幅が広いフレームに入れたらどうなるか。自然と目はフレームの中心から外れ、レンズの分厚い部分もフレームの中に入ることになります。下図をご覧ください。
下図は切削されたレンズを斜め上から見たものです。ものすごく分厚いレンズになり、このまま入れたら横から見るとフレームの後ろの方に飛び出してしまいます。
フレームの幅が狭いとレンズを薄くできる
今度は目がほほ中心に来るメガネだったらどうでしょうか。下図のように、分厚い部分を切削することによって、レンズを薄くすることができます。
上図よりもはるかに薄いことがお分かりになると思います。
小さくなった目が強調されず、入り込む背景もカット
小さいメガネを選ぶ利点は他にもあります。強度近視のレンズはその強い屈折力のせいで目を小さく見せてしまいます。
その上で大きいフレームを選ぶと、枠に対して目が、その大きさの差によって相対的により小さく見えてしまいます。
対して小さいフレームならば相対的にそこまで小さく見えません。大きい皿にある食べ物の量が小さく見えてしまうのと同じ原理です。下図をご覧ください。
上図では左右の顔の目を同じ程度小さくしました。目の大きさの印象は、右が断然大きく見えることがわかると思います。また、斜線で表された背景の入り込みが少なく、より自然な顔の印象になります。
まとめ
以上で、強度近視のためのメガネの解説を終わります。
● 小さいフレームは、分厚い部分をカットすることでレンズを薄くできる
● 小さいフレームは、目の小ささを目立たなくする
● 小さいフレームは、入り込む背景を少なくできより自然な印象を与える
これらがポイントです。
最後に私自作の3Dプリントメガネを紹介します。私も実は強度近視で、マイナス8以上あります。小さいフレームを作ったことで、分厚さが全くないことがわかると思います。実際かけて見ると入り込む背景も最小限に抑えられていて目の小ささも目立たず、堂々と外を歩けます。
私のインスタグラムのアカウントで自作のメガネを紹介しているのでぜひ見てよかったらイイネ押してください。
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