富士通グループ社員2,500人以上が参加!?新規事業創出プログラム「Fujitsu Innovation Circuit」に迫る!
こんにちは、フジトラ探検隊、隊員の浜田です!
富士通の全社変革プロジェクト「フジトラ」における実践事例や取り組みの背景、新企画などを紹介するフジトラ探検隊。連載第3弾は、新規事業創出プログラム Fujitsu Innovation Circuitに迫ります!
Fujitsu Innovation Circuitってそもそも何?何でスタートしたの?そこから何が生まれたの?これから目指すことは?…と、いう疑問にすべてお答えしていきたいと思います。
1. Fujitsu Innovation Circuitって何?
Fujitsu Innovation Circuit(以下、FIC)は、富士通グループにおける「アントレプレナーシップ人材の育成と、新規事業の創出を目指すプログラム」です。アントレプレナーシップとは創造的でオープンマインドな思考や革新的な問題解決力、挑戦するマインド(起業家的思考)を身につけた人材のこと。
つまり、「富士通グループ社員が起業家のような思考を身につけて、新規事業にどんどん挑戦するための仕組みと機会を用意し、応援するよ!」というプログラムです。
FICは、フジトラ活動の一つとして2021年に始動。立ち上げの起点は「今の富士通は、失敗を恐れるあまりイノベーティブな風土とは程遠い状態にあるのではないか」という課題感でした。
「社会をより良くしたい!」、「私の考えた事業アイデアを育てたい!」という熱い想いを持った社員は存在していたものの、「どうせ無理でしょ…」という閉塞感もあったのです。
例えば…
・新規事業のアイデアを考えても、それを評価できる人材が社内にいないじゃん!
・アイデアを育てるための方法がわからない・・・
・新規事業は頑張っても評価されないし、うちの組織のミッションじゃないもんね…
などなど、ボトムアップで生まれた新規事業のアイデアの芽を育てる仕組みも支援体制もないため、「新規事業創出に自ら手を挙げるなんて損」という雰囲気が一部で漂ってました。
それを打破し「誰もが挑戦の舞台に立てる、挑戦が当たり前の富士通をつくりたい!」という想いのもと、FICが立ち上がったのです。
” Innovation Circuit” という名称は、世界最高峰のカーレースであるF1に由来しています。
・信号や制限速度などの障壁がないサーキットを走るF1のように新規事業に挑戦する障壁を取り払うこと
・ピットに入ってきたF1カーを、ピットクルーが手際よく給油やタイヤ交換で支えるように、社内外の有識者が新規事業の挑戦者を支えること
・F1の観客が熱狂するように、新規事業の挑戦者だけでなく周りの応援者も巻き込むこと
「挑戦するために必要な仕組みとは?」と試行錯誤しながら、100%新規事業創出に選任できる人事制度改革や、挑戦者を人事、知財、経理などの社内プロフェッショナルがサポートするピットクルー制度などにも取り組んできました。
2. Fujitsu Innovation Circuitでできることは?
FICは大きく二つのプログラムで構成しています。一つは方法論やマインドセットを身につける学びの場、もう一つは新規事業実践の場です。それぞれIgnition(イグニッション)、Challenge(チャレンジ)という名称が付けられています。
Ignitionでは、起業家教育全米No.1のバブソン大学で教鞭をとるアントレプレナーシップ准教授 山川 恭弘氏による3か月にも及ぶ全11回のワークショップ(Academy)をはじめ、社外プロフェッショナルからの方法論やマインドセットを学ぶコンテンツを多数展開しており、これまで国内外2,500名以上の富士通グループ社員がこのプログラムに参加しました。
バブソン大学の教えである”Action Trumps Everything(行動は全てに勝る)”を愛と情熱をもって伝えてくださる山川先生のAcademyでは、講義やグループワーク、ピッチなどの経験を経てVUCAの時代を生きる我々にとっての「失敗」とは、新しいことに挑戦しないことだということを徹底的に学びます。
受講前と受講後の参加者のセルフアセスメント(自己評価)によると、アントレプレナーに必要な力である「共感力」、「失敗力」、「実行力」、「ビジョンを描く力」が右肩上がりに向上していることが見て取れます。こうして、アントレプレナーのマインドが社内に少しずつ広がっていきました。
そしてもう一つがChallengeです。こちらは学びの場ではなく、新規事業実践の場。審査に通過した人たちだけが、イントラプレナー(社内起業家)として通常業務から離れて新規事業創出に100%専任し、社外プロフェッショナルや社内有識者の支援を受けながら最大6か月で本格投資に値する事業を作り上げる実践型プログラムです。
これまで145チームがChallengeへの参加審査を受けて、35チームが審査を通過し活動してきました。
3. Fujitsu Innovation Circuitから生まれた事業って?
これまで様々な事業が創出されてきましたが、2024年4月にもChallengeの卒業生による新たなサービスが誕生しました。それが「セルフ動画型リサーチKOE」*です。
「セルフ動画型リサーチKOE」は食品・化粧品メーカーを中心とした消費財メーカーのプロダクトオーナーをターゲットとしており、クイックに低コストで生活者の自撮り動画を収集できるのが特長です。従来のモニタリング(モニター募集→サンプル利用→利用後インタビューのような流れ)や家庭に訪問してリサーチするフィールドワークなどは高コストで時間もかかるため近年は敬遠されがちですが、リサーチをせずに商品を投入することによる失敗損失も課題となっています。
その課題に着目したのが「セルフ動画型リサーチKOE」です。
*「セルフ動画型リサーチKOE」は、株式会社ジー・サーチより商標登録申請中です。
企画リーダーの蓮井美希さんは2022年1月から7月にChallengeに参加し、株式会社富士通ローンチパッド(新規事業創出のため、富士通が2022年7月に立ち上げた会社)を経て現在事業化を進めています。
蓮井さんは、過去にユーザーリサーチ不足によりサービス開発が失敗した苦い経験があったと言います。とにかく早くサービス化させることを優先して1社のみにヒアリングし、その人たちが「欲しい」と言った機能をとりあえず作ったり、顧客にとって今すぐお金を払ってでも解決したい根本課題のヒアリングや分析を怠って、コア機能がぶれてしまい、結局何を解決するものなのかが不明確なソリューションを作ったり。
ユーザーリサーチの重要性を痛感する蓮井さんだからこそ、「100%事業開発に専念できる環境に身を置いて、本当に必要とされる新なサービスを生み出したい」、「ユーザーリサーチに関わる事業をつくりたい」という強い想いが生まれたそうです。
「Challenge活動期間中は、顧客課題の解決策や、そのプロダクトへの実装方法など、悩みにぶつかることも多かったのですが、機能設計の検討やユーザー視点のアドバイスなど、様々な場面でFICを通じて関わる社内外のメンター、サポーターが協力してくれることで、一人ではなく、みんなが応援してくれていると力になりました。こうして、『ユーザーの声を聴き、活用したい』というビジョンのもと、事業アイデアを創出し、『セルフ動画型リサーチKOE』にたどり着きました。」(蓮井さん談)
「セルフ動画型リサーチKOE」は今後更なる事業拡大に向けて活動を続けていきます。その他にもFICから生み出されたアイデアは続々と成長し始めています。これからどんな事業が生まれるか、楽しみですね!
4. Fujitsu Innovation Circuitのこれから
「誰もが挑戦の舞台に立ち、挑戦が当たり前の富士通をつくりたい。挑戦する人を皆で応援し、今どのような挑戦をしているのか、そこから何を学んだのか、といった会話や、挑戦している人たちへの応援が当たり前になされる会社にしたい。会社のためだけではなく、自身の成長とパーパス実現のために、そして、世界をより持続可能なものにしていくために、このプログラムを活用してください。」
これは、FIC設立時に社長の時田から全社員に発信されたメッセージです。プログラム開始から3年が経過し、2,500名以上の富士通グループ社員がこのプログラムに参加してマインド変革・挑戦をし続けることで、当初描いていた世界が少しずつ現実になっていることが感じられます。
とはいえ、個人の想い・発案から新規事業を創出するプログラムの完成はまだまだ道半ば。これからもFICはフジトラのマインドである「全員参加で」、「オープンなコラボレーション」をしながら進化していきたいと考えています。
今後のフジトラ探検隊連載の中でも、活動をご紹介していきたいと思いますので応援よろしくお願いします!