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ついに西浦先生が予測死亡者数を発表した

この記事で西浦先生が決意していたことは、これでした。

科学的なエビデンスで、最悪の事態を予測し、それに至らない道を探す。

当たり前のことが、今の厚労省、コロナ対策大臣、そして総理大臣に分かっていないからでしょう。

西浦先生の発表内容

新型コロナウイルスの感染を防ぐための行動制限を何もしなかった場合、国内で重篤になる感染者が計85万人に上るとする試算を、厚生労働省クラスター対策班に参加する西浦博・北海道大教授(理論疫学)が15日、明らかにした。

なぜかといえば、人工呼吸器が足りなくなるからです。

試算では、1人の感染者が2・5人に感染を広げ、新たな感染が起きるまでに平均4・8日かかると仮定。こうした場合、ある段階から感染者が急速に増え、人工呼吸器や集中治療室(ICU)で治療が必要になる重篤患者は、1日あたり高齢者で10万人あたり230人、15~64歳で70人がピークになる。

西浦さんによると、国内で新型コロナに使える待機中の人工呼吸器は約1300台で、10万人あたり10台ほどだ。現状で試算した事態を迎えると、多くの人が適切な治療を受けられないとみられる。

数字をあげたがらない日本政府

こうした数字を突きつけられても、政府は変わらないのか。

菅義偉官房長官は15日の会見で「推定死者数については、様々な要素が関係することもあり、政府としては公表はしていません」と述べた。

アメリカではトランプ大統領が数字を上げていた。

最悪の数字を掲げておくことで、それより下回ったときに、成果が出ていることが見える。わかりやすい危機管理だと思う。

しかし、日本ではこうした予測数値を上げることを好まない風潮がある。特に為政者に。なぜだろう。

一つは、言霊信仰だろう。言ってしまうとその数字になってしまうかも知れないという恐れだ。

もう一つは、極端なまでの安心思考だ。安全と安心を混同しようが、何のエビデンスもなかろうが、安心させたがる。人心の揺れを抑えることが為政者の仕事だと思っている節がある。それは、天皇が天下を治めていたころの話ではないかと思う。平安時代からこの国は変わらないのか。

いずれにしても全く科学的ではないし、現代の民主主義でもいいし、SNS社会でもいいけど、これだけ情報が飛び交う時代に、数字でモノを語らずに、勢いと強がりだけで、何を統治しようというのだろう。

西浦先生が心配だ

この数字を発表した西浦先生の身の回りが心配だ。

先ほど挙げたように、日本では言霊信仰の基づいて、悪い結果が出た場合、その結果を出した人ではなく、悪い結果が出ると予言した人を恨む傾向がある。

この場合、積極的な策を取らず、はっきりしたことを言わない日本政府ではなく、数値予測をした研究者に向かって「お前のせいだ」と言い出す輩が必ずいるのである。

そういう人は凝り固まっているから、神風が吹くと思ったり、神国日本は守られていると言って結界を張ったりする。どうぞ張ってください。

でも、ウイルスは日本人ではないので、結界も知らないし、誰にでも寄ってくるのですよ。中国人だけかかることもなければ、欧米人だけひどく振る舞うということもない。日本だから大丈夫、という理由にはならない。

今後、間違いなく、西浦先生の予測の方向に動くでしょう。押さえ込まれているとは言い難い状況になっていくでしょう。

そのとき、お前が言い出したからだ、という妄想の輩が出ないことを願います。

西浦先生の原点は神戸の震災と1冊の本だった

今、この国に西浦先生がいることは奇跡のように思える時があります。日本人で、ここまで数字で感染症を予測できる人がいるとは思いませんでした。

この記事は、コロナウイルス感染の前に書かれたモノです。

西浦先生が、これまでどういう結果を出してきたか、その道に進んだのはなぜかがわかります。

そして、SARSの時の水際作戦の失敗を予言した結果を出したのが西浦先生だと知りました。

それでも神戸と大阪でH1N1による流行が起こった。感染していても発熱しない人が4割ぐらいいるし、感染しても発症前で発熱していない人もいる。仮に発熱していても市販薬を飲んで熱が下がっている人もいる。サーモスキャナーだけではとても捕捉しきれない。検疫を通り抜ける感染者が出る。ではどれくらい素通りしたかという分析を数理モデルを使って推定した。
その結果は衝撃的ですらある。発熱者を探すだけでは100人にわずか1人の感染者しか発見できないというものだった。延べ3万人が動員されたというこの水際作戦はほぼ役に立たなかった。作戦は見直しを余儀なくされ、研究結果をもとに効果が極めて限定的であることが報告された。

この時の反省が厚労省にあれば、今回も水際作戦ではない方法があったかも知れない。しかし、厚労省の役人は数理モデルを信じていないことが記事中からもわかる。HIVの時のこと。

しかし数理モデルを使うことで、診断された人、治療下にある人が何パーセントで、診断されてない人がどれくらいということが出せるようになった。その上で制御がうまくいっているかどうかを評価しながら予測できるようになった。この武器を持って厚労省のエイズ動向委員会のメンバーにもなったが、「それって本当か?」という疑問をぶつけられてしまう。

本当とはどういうことなのだろう。数理モデルで導き出した予測を信用せず、ちょっとした言葉に踊らされている。例えばインフルエンザ。

1990年代までは学童にインフルエンザの集団接種をしていた。あるとき集団接種をしていた群馬県のある街と、していなかった街の間で感染リスクがあまり変わらないというリポートが発表された。これをきっかけに、ワクチンは効かない、副作用があるという反対運動が起こり、結局、集団接種を止めてしまう。そして何が起こったか。インフルエンザは毎年学校を中心にして流行し、高齢者の死亡が増えるという事態になったという。

ワクチン投与に関する話は、必ず「効かない」という反論が出て、問題になる。

「経験と勘」を頼りに決められているのは予防接種だけではあるまい。そこに数理モデルに基づいて一定のエビデンスを持ち込み、それによって政策が形成されれば、政策の効果が上がり、コストも安くなっていくかもしれない。

政策に数理モデルを

これはコロナウイルスに関する話ではない。

しかし、コロナウイルスでも、数理モデルの導入で効果的な政策を決定できるだろうし、コストも安くなるかも知れない。

コスト感覚がない、身内の反応だけで効果測定するような施策ばかり提案する総理の側近とやらに、是非、西浦先生を紹介するこの記事を読んでもらいたい。JSTが出したモノなので、国の施策に反映する価値はあると思う。


サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。