70年代少女漫画は「シュラバ」で生まれた?
最近読んだ本で、これほど感激したものも珍しい。
妻が買ってきたのだけど、私も70年代の少女漫画はリアルタイムで読んでいたくちなので、懐かしさが止まらなかった。
美内すずえ先生、くらもちふさこ先生、樹村みのり先生、三原順先生、山岸凉子先生etc……、
数々の名作を生み続けるレジェンドたちーー、の元でかつてアシスタントをしていた著者の、とんでもなく貴重な体験を描いたコミックエッセイ。
美内先生との初対面と、想像を絶するシュラバ。才能ある若き漫画家たちの知られざる努力とこだわり。
あの作品のあのエピソードの誕生秘話など、少女漫画好きなら身悶えする様なお話がたくさん!
若き先生方と若きアシスタントたちの、血と汗と涙と喜びの青春時代を綴ります。
美内すずえ先生といえば「ガラスの仮面」だし、山岸涼子先生といえば「日出処の天子」、くらもちふさこ先生ならば「いつもポケットにショパン」。
NHKの朝ドラ「半分、青い」で注目されたという話ですが、70年代から80年代にかけての少女漫画は、社会的にはマイナーだったものの、今見ても、その世界観、コマ割り、セリフ、全てに映画やドラマを超えるようなクオリティがありました。
この本は、そうした数々の作品のアシスタントをしていたという作者から見た70年代少女漫画の裏側を描いた漫画です。
同作は、1970年代の少女マンガ勃興期にレジェンド作家たちのアシスタントをしていた笹生が、当時の出来事を振り返るエッセイマンガ。中学3年生のときに編集部へ原稿を持ち込みに行ったことをきっかけに、大ファンだった美内がカンヅメになっている旅館へ案内されたところから物語は始まる。
アシスタントをしていたと言っても本人もプロ漫画家だっただけに、絵は懐かしの70年代風だけど、実によく特徴を掴んでいる。特に、各作家のエピソードを書くときに、作家本人がその作家のタッチになるところがマニアにはたまらないものがある。
先生方の画風を意識してお姿を描きましたが、描いていて違和感はありませんでしたね。皆さん、ご自身の作品のキャラクターにどこか雰囲気が似ているんですよ。
ちなみに、タイトルにある「シュラバ」とは、校了に至るまでの漫画家の追い込み現場のこと。三日三晩満足に食べず・寝ずに描き続ける作家とアシスタントの姿こそが、シュラバ。
その言葉の生みの親は、美内すずえさんだという。
遅筆で知られ、いまだに完結しない「ガラスの仮面」を何度も落とした美内さんの現場は、まさに「シュラバ」に相応しいものだったことが、この漫画からわかる。
また、山岸涼子の「天人唐草」が生まれた時の現場に何があったかも、ここでしか知ることができないエピソードが描かれている。
岡村響子、30歳。キエーーーーッ!
毒親に育てられた少女や育児放棄された子供が大人になったらどうなるのか――。山岸凉子の天才ぶりをあますことなく伝える究極のトラウマ漫画5篇を厳選。
時代錯誤なまでに厳格な父に育てられた少女が、過剰なまでに他者を警戒し、複雑に成長していく「天人唐草」。
青春ものの日本ものを編集部から求められて書いたのがこの作品だったとは。
そういう珠玉のエピソードと作家への愛に満ちた作品は、あの時代の漫画をもう一度読みたくなるものでした。