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読み比べると知識が深まる気がします
日本文化が現代日本で「遠い」のは何故なんだろう、などと大それた話を考えているうちに、近代日本について考えることになりました。
さらに考えていくと、やっぱり日本を知らないといけないなと思い直し、それには、江戸の前をもう少し知ろうと思って、この本を読みました。
これだと書影が地味ですが、店頭では、こんな帯をというかカバーを巻いています。
史実とフィクションは明瞭に違う!
◆本能寺の変に黒幕あり?→いない。光秀をバカにしすぎ
◆関ヶ原は家康の陰謀? →違う。家康も追い詰められていた
◆義経は陰謀の犠牲者? →誤り。義経の権力は砂上の楼閣だった
もともと陰謀論はあまり好きではないので、一刀両断ならば面白かろう、それが、あの「応仁の乱」の呉座勇一さんならば、さらにと期待して買ったところ、期待以上に面白かったです。
ただ、この本を面白いと思うのは、理屈っぽい人じゃないかなと。なぜかというと、私も相当理屈好きなので、この本の構成には本当に納得したんです。
まず、自分の論を述べるのではなく、色々な人の論(その中には当然、トンデモも陰謀論もある)を並べ、その矛盾点、取り上げるべき点を列挙して、比較し、自分の論を強化していく流れがあり、そこでの広く史料を読み解き、他社の論文を誰何していく過程が何とも理屈っぽい、これぞ歴史オタクの極み。
中世日本史は、最近になって、新しい史料が登場し、学説も大きく変わっているため、歴史教科書でも私が習った頃と変わっているのですが、その最新の検討内容に触れる喜びが、この本にはあります。
元ライフネット生命会長で世界史の著作も出している出口治明さんが書評(週刊文春 2018年04月12日号掲載)で指摘しているように、
陰謀論は、「因果関係の単純明快すぎる説明」、「論理の飛躍」、「結果から逆行して原因を引きだす」という三つの特徴を持つ。
人はなぜ陰謀論を信じるのか。それは、「単純明快で分かりやすく」、「歴史の真実を知っているという優越感を抱ける」からであり、インテリほど騙されやすいのである。その点、陰謀論は疑似科学に似ている。
疑似科学の話は、私は比較的身近に見てきたが、インテリほど騙されるという点が悲しい。
さて、実は、この本が面白かっただけで話は終わらず、この本の中に出てくる論を確認しようと、もう1冊日本中世史の本を読んでいます。
それがこちら。
これも帯が怪しい。本郷先生の顔で売りますか!
乱と変というのは中世に多く、日本中世史を検討する補強になるわけです。
しかも、この本は、対照的に、本郷先生の主張で全編シンプルに通されていて、他の論などは一部補強に出てきますが、自分の言説を通すための道具程度です。でも、その分、呉座先生の本の数倍読みやすい。スラスラとはいきませんが、ふむふむと読めます。
呉座先生の本は、いろんな登場人物に加えて、論を提唱した研究者の名前が飛び交うので、行ったり来たりしながら、読むことになるのですが、その分知識量が増えます。
本郷先生の本は、語り口もわかりやすいし、ある統一した考え方(本郷先生の理論)に貫かれて、武家政権時代を考えることになるので、読む側も迷わずに済みます。でもその分読後感は物足りない。
この2冊を同時期に読んだことで、日本中世史を考える上において、自分なりに新しい基準を手に入れることになりそうです。
そういう読み方ができたというのが面白い体験でした。
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