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高田明と世阿弥という取り合わせが素晴らしかった話

今、世阿弥に関する本を読み始めています。

その手始めに、この本を読みました。

きっかけは、この晩から始まります。

先日、中世の和歌が専門だという方と楽しく飲んだ話を書きました。

この時、中世史のことを色々話しまして、別れ際に「次回は、ノウですね」と言われました。

ノウ? 脳科学ならば、前職で関わったので少し分かりますが、そうじゃないですよね。

「中世といえば世阿弥ですよ」と言われ、能楽だと気づきました。

確かに、中世から600年も変わらずに続いている芸能である能について考えないと中世を語ることにならないかもしれません。

能楽堂に行ったことはありますが、イベントばかりで、ちゃんと見たことがない。千駄ヶ谷の国立能楽堂に入ったのは、ガラスの仮面だった。

渋谷のセルリアンタワー能楽堂に行ったのは、講演会でした。

どちらも大変美しい場所で圧倒される想いがあったのは覚えています。

その能の真髄というか、原点となるのが、世阿弥の風姿花伝を始めとする花伝書と言われる書物たちです。

やはり一次情報と言うか原典にあたって理解しないと、付け焼き刃では太刀打ちできないのが能ではないかと思ったので、世阿弥を読むことにしたのです。でも、花伝書をそのまま読んでも、今の私には理解できそうもない。

そこで、解説書を探します。

実は前から気になっていた本があったのです。

この世阿弥の花伝書に、自らの仕事との共通点を見出し、人生のあるべき姿を見つけたのが、ジャパネットたかたの前社長でサッカーJリーグのVファーレン長崎の現社長である高田明さんでした。

ジャパネットたかたの創業者、髙田明氏が600年の時を超えて出会った盟友が世阿弥。
能を大成した世阿弥の名言「初心忘るべからず」「秘すれば花」などを
髙田流に読み解き、現代人に役立つエッセンスを紹介。

なぜ、あの通販の王者が、世阿弥なのか。日経ビジネス誌上で日経トップリーダーという姉妹誌での連載があると見かけた時から気になっていました。

一種の違和感がある取り合わせだったからです。

ところが、読み始めて、何もかも納得しました。

能も通販も生の劇場(ジャパネットの通販番組は生放送が多い)で、お客様にどのように喜んでもらうかに尽きるという共通点があるのだというくだりを読んで、なるほどと感心し、さらに、同じように聞こえる商品説明の言葉に、どれだけの工夫と試行錯誤があり、1秒の間を大切にし、直接見えないテレビの前のお客の心の動きを全身で測りながら進めているかを知り、その凄さ、奥深さに思わず声にならない呟きが漏れるほど心に染み入りました。

高田さんが世阿弥に出会ったのは、転勤する社員が「社長が普段反していることが書かれているように感じたので読んで欲しい」と世阿弥について書かれた本「世阿弥の世界」を渡されてからだと言います。

読んでみると共鳴する部分がとても多かった。それから世阿弥を読み、講演や取材などでも言葉を引用し、素晴らしさを語っているそうです。

この本は、実に多面的に、世阿弥の言葉を実際の通販の現場で高田さんが工夫してきたことと結びつけて説明しています。それだけに具体的にイメージでき、分かりやすい。しかも、文体が書き言葉ではなく、語り言葉風になっているので、テレビで聞いてきた高田さんの声が聞こえてきそうです。

実際に講演会やテレビ取材での高田さんの声はテレビほど甲高くなく、落ち着いた奥行きのある声で、私は好きなんです。だから、その声で読み上げる、この本のリーディングブックも作って欲しいと思いました。

内容は4章からなります。

第1章は、「積み重ねる」自己更新 として、他人と比べず、自分を磨き続けるくせの付け方を紹介

第2章は、「伝える」 プレゼンテーション として、テレビ通販番組の語り手として、世阿弥流のプレゼンテーションの極意

第3章は、「変える」革新 として、「難しい」「自分には無理」と考えがちなイノベーションを起こすヒント

第4章は、「つなぐ」永続 として、人生100年時代に最後まで明るく朗らか位に生きるための秘訣

こう書くと、ビジネス書の印象が強いですが、この各章の中は、見出しのある項目ごとに一つ一つ世阿弥の言葉を紹介しながら語る構成になっていて、さらに各章の終わりに専門家(「世阿弥の世界」の著者・増田正造)による能に関する解説が入っているので、能という芸術を知る入門書にもなり、人生を考える名言集にもなっています。

例えば、最初の項目は「変えられないことで思い悩まない」というタイトルで「時の間にも、男時・女時とてあるべし」という世阿弥の言葉を紹介し、不遇の時代にどう過ごすか、勢いのある時はどう過ごすかについて、自らの人生の中ではどうであったのかを語り、世阿弥の人生についても説明し、タイトルにある考え方について解説していきます。

そのため、ジャパネットの歴史、高田さんの人生を知ることができ、世阿弥がこの言葉を書いた頃どうだったかを知ることができ、その言葉を受けて高田さんの考え方を知ることができるという、大変お得な内容になっています。

これで、Kindleならば1436円と単行本より104円もお得なんですよ、奥さん!

と思わず、通販風になってしまうほど、読み応えのある本でした。

一度読んだのですが、これは、読むごとに感じる部分が変わる本だと思うので、なんども読もうと思います。








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fujita244
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