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作った商品が思った以上に売れないお話【卓上フリーカレンダー】

お世話になっております。
今日(24年10月14日)まで富士リプロTwitter(X)担当です。
生き急ぐように記事を書き、更新しています。


さて!
印刷会社である弊社は『ジデイク』という紙製品ブランドをゆるゆると運営しています。

「卓上フリーカレンダー」という商品があるんですが、これが全く売れません。

卓上フリーカレンダー(チアフルブラウン)
卓上フリーカレンダー(グルーヴィーブルー)

売れないというか、売りたい人に届いていない。
作り手なりに分析しつつ、この商品について語ってみます。

「卓上フリーカレンダー」チアフルブラウン(左)とグルーヴィーブルー(右)

卓上フリーカレンダー、売れない

そもそも、この商品を見て購買意欲が湧く方は少数派だと思うんです。
その少数派の方たちに届けられなかったこと=「売れない」です。

「じゃあ少数派の方はこの商品を認知したら、調べたり購入したりといった行動を必ず起こすのか?それほどの商品力はあるのか?」と問われたら、そうだ!とは答えられませんが、やはり発売当初から現在に至るまでのマーケティングやPRが弱すぎたことが理由としてはデカいと思っています。

とはいえ、せっかく作った商品です。
この商品を売り出すには力不足だったこと、まずは言い訳します。
そしてこれを機会に改めて紹介などさせていただければと思います……。

封入された状態
裏側(説明書き)

それでは、この商品に関して難しかったところ、力不足だったところを5点挙げてみます。
他にもっとあるはずだから、ぜひご指摘いただきたいです。


①商品写真だけでは隠されしギミックが伝わらない
見た目はよくある余白の多いフリーカレンダー。
瞬間的に惹き付けるような商品ビジュアル&パッケージではない。
アピールしたいギミック(後述)が伝わりにくい。
問題:デザイン力の弱さ


②「売り」の要点を押さえられない
ギミック(後述)を説明しようとするとやや長くなります。
説明過多になるのが怖くて却って売り込みを控えてしまったのもある。
文具マーケット出展時なんかそうですね。
問題:宣伝力の弱さ

我々作り手側がこの商品を表現するフレーズを取っ散らからせたのも問題。
以下の複数の表現(?)が伝わりにくかった気もする。

OPP表面に貼ったラベルシール

12枚
好きに使えて
最後は
アルバムにもなる
カレンダー

「卓上フリーカレンダー」ラベルシール記載

12枚は自分のキャンバス。
立てて飾って、
思い出に残して。

「卓上フリーカレンダー」説明書き記載

「作品作りを楽しむ・立てて飾る・思い出に残す」三拍子揃った、創作好きのためのカレンダー

プレスリリースなどでよく使っている表現(後から考えた)


③ターゲットが限定的すぎる
ざっくり言うと「アナログ創作好き」の人。
絵を描いたり、スクラップしたり、自分で自由に何か良い感じに作って、それを保存・保管しておきたい人です。
一定数いるけど、マジョリティではないかもしれない。
これはわかっていたことだし、そういうペルソナ設定だからOK。


④マーケティング戦略設計の不十分さ
特にカスタマージャーニーマップ設計。
ここを怠ったせいで社内で共通認識を形成できず、自らの首を絞めた感があります。

コンテンツマーケティングとSNSマーケティングで費用をかけずにできる限りのことをやっていきたいな…くらいに考えていましたが、本腰入れて取り組まないと成果なんか出ません。
マーケティングには興味があっただけに残念です。
問題:マーケティングスキルのなさ


⑤PRができなかった
自社発のSNSと「PressWalker」などのプレスリリースのみ。
テレビ番組で御社の商品を紹介しませんか?というお問い合わせを何件かいただいたんですが、どうせ営業でしょう!と費用が発生するものをハナからスルーしてしまったんですよね。

「市場や顧客を理解する力」「モノを作る力」「モノを売る力」がないのが弊社の弱み。
PRのための費用や報酬はナシという方針でも全く問題ないけど、思考停止だけは本当にダメ。検討もせずに機会損失してしまった。
というか、自社が一番自社の商品に期待せず何も考えていないからこうなる。
問題:事業戦略の不十分さに起因するもの



聞いてくれ!商品紹介

ここで改めて「卓上フリーカレンダー」について紹介させていただきたい。

先に私が考える「売れない理由」を述べましたが、以下の商品紹介を踏まえて思うことがある方はアドバイスいただきたいです。
「商品力がないから無理」以外で!


【商品の仕様】

〈サイズ〉A5
〈枚 数〉12枚
〈用 紙〉本文:マーメイド210Kg
    ※チアフルブラウンはナチュラル/グルーヴィーブルーは絹
     台紙:GAファイル450Kg
    ※チアフルブラウンはココア/グルーヴィーブルーはブルージーン
〈製 本〉ダブルリング製本


開発のきっかけ

まず、なぜこの商品を作るに至ったのかということからお話しします。

描いたり書いたりしたものを綺麗にまとめて、後から眺めるのが好きな人はどのくらいいるでしょうか。
私自身、イラストやライブレポート、読書記録などいろいろなものをアナログで作成して、表紙まで飾り付けたいという欲求の強い人間です。
そして、そういう理想があるものの、最後までやり切ったことのないヤツです。


「どんな画材や素材にも対応できる」うえに「白紙を埋めていけば勝手に小綺麗な作品集になる」アイテムを作りたかった。
これがきっかけです!


でもそれ、頑張ればスケッチブックで代用可能です。
が、カレンダーの12枚という制限や日玉(カレンダーの日付部分のこと)が入っていることで、使い方のアイデアがいろいろと浮かんできて楽しめるんじゃないかと考えました。
何かをつくってみたい!というモチベーション的な意味で、創作ガイドの役割をカレンダーに期待した、みたいなことになります。

また、フリーカレンダーというものは他社の商品にもあります。
お絵描きできる系なんかも多いですが、一線を画した「ちょっと大人向け」商品にしたかった。


そういうわけで『ジデイク』の「卓上フリーカレンダー」は、
スケッチブック×カレンダー×作品アルバム
として誕生することになりました。

① さまざまな素材で作品づくりを楽しめる
「どんな画材や素材にも対応できる」

② 立てて飾っておける
「カレンダー」としての機能

③ アルバム化できる

→「白紙を埋めていけば勝手に小綺麗な作品集になる」

前述の複数の「売り文句」はすべてこのことを言っています。


使い方としては、

  • 12枚を12ヶ月分として使用する

  • 12枚を12年分として使用する

  • 12枚を自由に使用する(作品集/旅行など都度記録 etc…)

など、何でもありです。フリーなのでいつから使い始めてもOK。
買った方が面白い使い方を考えてくれると思っています。


ギミックのこと

さっきから「ギミック(後述)」としか言っていなかった。
ここから、そのギミックとかいう小さな仕掛けとこだわりをお伝えします!

【こだわりその1:カレンダー部分】

  • 本文12枚すべてに1から31までの数字が入っている
    何枚目は何月、といった縛りがない

  • カレンダー部分は切り取ることができる
    ミシン目入り

  • 12枚はパラパラ漫画のようにバスの位置が移動している
    こちらの意地!全部同じ12枚じゃないぞ

本文下部のカレンダー部分


【こだわりその2:台紙部分】

  • 形態を変化させられる ←最大のポイント!
    台紙の底面をミシン目(2ヶ所)で切り取ることで、立てている状態からアルバムへと変身!

立てている状態(よくある卓上カレンダーの形)

 切り取りの際、ハサミを使う場合はお怪我しないように!

  • アルバムにすると表紙にバスの空押しが出現する
    アルバムにしないと出てこないぞ

立てている状態では内側にあります
  • 角が丸い
    折れないし、可愛らしい


【こだわりその3:紙】

  • 台紙も本文用紙も厚い
    長く残しておくことを前提にした丈夫な台紙
    水彩やインクなど、水気が多い画材でも波打ちにくい本文用紙

  • 使いやすいカラーバリエーション
    チアフルブラウンと名付けた方は、茶色の台紙に黄色がかった本文用紙
    グルーヴィーブルーは、薄いブルーグレーの台紙に真っ白な本文用紙

組み立てていない状態


モチーフのこと

何でバスがモチーフなのか?と思った方もいるかもしれません。
理由は2つあります。

ひとつめ。
デザインを考えていたころ、飯豊まりえさん主演のドラマ『何曜日に生まれたの』(朝日放送テレビ)視聴をきっかけに、The Hollies の「Bus Stop」をずっと聴いていたから。
良いドラマだった。「Bus Stop」は今でもよく聴く。


ふたつめ。
ブランドコンセプトを体現したような商品にしたかったから。
ジデイクのコンセプトは「As you like , at will.(好きなように、思いのままに」です。

この商品は自由さを売りにしたかったんです。
いつ使い始めてもいいこと。
カレンダーだからといって、12枚だからといって、12ヶ月で使い切る必要はないこと。

そして、バスは自分だけのために停車して乗せてくれるし、降ろしてくれる乗り物です。
乗降車できる場所の多さ、小回りの利く感じ、身近な感じ、柔軟さ、そういうのはバスならではないでしょうか。

外装OPPに貼った円形のラベルシールには、しれっと英文を入れました。
As you like , at will . I can go whenever you're ready .
(好きなように、思いのままに。準備ができたらいつでもどうぞ)

乗るのも降りるのも自由で、電車よりも目的地に近いところへ連れていってくれるバスに、創作の自由と理想を(無理矢理)かけた…という感じです。


商品の名前のこと

◆商品名について
「卓上フリーカレンダー」というシンプルな商品名になりましたが、MTGでは「12枚好きに使えて最後はアルバムにもなるカレンダー」という案も出ていました。
円形ラベルシールの文言ですね。
ちなみにラベル文言は商品名より先に決まっています。


…どっちが良かったかはわかりません。

「フリーカレンダー」で検索する方が結構いる。
おそらく大半がこういった商品を探しているユーザーではないんですが、それでも表示されるようになってるんだからチャンスです。
偶然目に入ってサイトに飛んでくれた方もいらっしゃるからありがたい。

「12枚好きに~」はちょっと気になる感じがして悪くはない。
ですが、伝票やレシートにフル印字できる文字数じゃないかもと考えたこと、店頭や電話口でお客さまが商品名を言うのが煩わしいだろうと思ったことから、「卓上フリーカレンダー」に決定します。
別の商品が「卓上万年カレンダー」と名前が決まっていたから、ソレと揃えたってのも理由です。


◆カラー名について
「卓上フリーカレンダー」は2色展開が決定し、その2色を選んだのも私たちですが、最終的にカラーの名付けに悩みました。
台紙に使用したGAファイルという紙のカラー名は「ココア」と「ブルージーン」。

せっかくバスをモチーフにするんだし、紙のカラー名をそのままつけたくなかった。

台紙の底面を切り取り、アルバムになった状態
GAファイルは厚みを生かした加工が楽しめる紙です

「ココア」を先に選んだ覚えがあります。可愛いと思って。
さらに、「ブルージーン」にベージュのダブルリングを合わせたときに感じた、洗練された都会っぽい可愛さのイメージが離れず、「ココア」には敢えて素朴な自然・田舎っぽさを自分たちの中で印象付け、「都会↔田舎」と対になるようにその2色を採用しました。

結局ベージュのリングは使っていません。
ブルージーンと同レベルでココアに似合う色のリングがなかったから。
どちらもメタリック系からゴールド(青金)を採用しました。


当初、カラー名をバスの行先風にしたかった
商品名が「卓上フリーカレンダー」と超絶シンプルなんだから、カラー名はわけわからんようなやつにしたかったんです。

この時期、かなり類語辞典引いていました
前スライドの追記版

こういう名付け、性別や世代によってウケるウケないがハッキリします。

私は当然好きでモノを名前買いするタイプです。
万年筆インクなんか、色はほぼ同じでも名前で買ってしまうことが多い。
KATEさんのリップモンスターは品質の良さに加え、ネーミングで成功している典型だと思います。
言葉の意味や響きはイメージに直結します。
言葉っていうのはデザインだと思っています。


…とはいえ、MTGメンバーはしっくりきていない。
そして私も、方向性は(自分は)好きだが、これだ!というものが思いつかない。

ジ1 心象の里ゆき(ブラウン)
ジ2 感興タワーゆき(ブルー)

とりあえず最後に絞り出したバスの行先をメンバーに示す。
「わしにはこれ以上の行先は思いつきません!路線変更しましょう!バスだけに」
そんなことを言って「都会↔田舎」イメージを表出させることを諦めます。

そしてその場で書き殴ってみせた!

23年12月4日のメモがスマホに残されていた

Cheerful Brown(チアフルブラウン)!!!
Groovy Blue(グルーヴィーブルー)!!!

「これでどうでしょうか!!!」

MTGメンバーはこれで良いじゃんという反応。
心象とか感興とかいう言葉に辟易していたんだと思う。

「シンプルだが、なけなしのオリジナリティという、せめてもの抵抗を感じられるネーミングだ」という評価をいただき、決定。


「チアフルブラウン」「グルーヴィーブルー」はMTG終盤にポッと出て、そのまま決まった感じです。



大変なんだ!見本づくり

そんな「卓上フリーカレンダー」ですが、販売開始以来見本づくりをInstagram担当とともに行ってきました。
見本づくりは「この商品はこんなことにも使えます」という、使うイメージを湧かせてもらうために必要な業務です。

広告や宣伝に費用をかけず、コンテンツマーケティングとSNSマーケティングで地道にやっていくつもりだったと先に述べましたが、自分たち2人だけでは時間的にも効果的にも限界があったのは事実です。

アンバサダーマーケティングを初めから検討しておけば良かった。


ECサイトやSNSに掲載した使用見本の一部をここに載せます。
これを見て、自分ならこんな風に使ってみたい!と思ってくださる方が一人でもいたら嬉しいです。

「月のハイライトを描く」見本(作:Twitter担当)
「子どもが描いた風」見本(作:Instagram担当)
「万年筆インクで描く」見本(作:Twitter担当)
「コラージュ日記」見本(作:Instagram担当)
「読書記録」見本(作:Twitter担当)
超力作!「シャドーアート」(作:日本大学 中村萌聖さん)


この「卓上フリーカレンダー」見本づくりで発狂しそうになった。
その話は次の記事で書きます。

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