見出し画像

『サイコパス 秘められた能力』

『サイコパス 秘められた能力』は、イギリスの心理学者ケヴィン・ダットンの著書。
彼はケンブリッジ大学セント・エドマンズ・カレッジのファラデー科学・宗教研究所に務めています。

社会的影響の研究における第一人者とされている人です。

サイコパスについて見方が変わるとても興味深い本。
人間社会を生き抜くための参考にもなるため、忘れないうちにまとめておきます。
サイコパスについて興味のある方はぜひ本書を読んでみてくださいね。

サイコパスの意味

そもそもサイコパスの意味は「反社会的人格の持ち主」を表す言葉。
日本語にすると「精神病質者」であり、精神障害者と定義されています。

サイコパスときくと、異常犯罪者を思い浮かべる方が多いかもしれませんね。
しかし実際罪を犯す者はまれとされている点に注意が必要です。

またサイコパスは病気(精神病)ではありません。
パーソナリティ障害の一つとそれています。
ほとんどの人は普通の社会生活を営んでいるのを知っておくと良いかもしれません。

サイコパスは社会に一定数存在しており、その数は0.2%~3.3%。
もしくは4%とする研究もあります。
(アジア人は割合が低いとされているそうですよ。)

「学校のクラスに一人くらい」
「会社にも必ず何人もの」

精神病質者(サイコパス)がいると考えられているから驚きです。

参考:Wikipedia「精神病質」

トロッコ問題 (trolley problem)


本書ではトロッコ問題を例に挙げてサイコパスを説明しています。
トロッコ問題とは功利主義と義務論の対立を扱った有名な問題。
興味のある方は以下の解説を読んでみてくださいね。

余談ですが……
本来の「trolley problem」の「trolley」は路面電車を指しています。

日本人の間では手押し車の「トロッコ」が定着しているよう。
そのためここでもトロッコを想定して説明していきたいと思います。

トロッコ問題 Aパターン

  1. トロッコが線路を猛スピードで走っています

  2. その先には5人の人間が線路に縛られていて逃げられません
    (本書では縛られていましたが、出題の仕方によっては状況が異なるようです)

  3. あなたは5人の手前にある線路分岐点に立っています

  4. 目の前の分岐器を使うとトロッコの進路を切り替えることが可能です

  5. しかし切り替えた先の線路にも、別の人間が1人線路に縛られています

  6. トロッコはどちらに進んでも線路の人間を必ずひき殺すでしょう

    あなたは分岐器を切り替えますか?

トロッコ問題は、いかにして倫理・道徳的なジレンマを解決するかについて知るためのものです。
正解はないので直感で答えてみてくださいね。

多くの方は不本意ながらも分岐器を切り替える選択をしたのではないでしょうか?
もしくは「答えなんて出せない……。」と答えた方もいるかもしれませんね。

では続いて次の「トロッコ問題 Bパターン」を考えてみてください。

トロッコ問題 Bパターン

  1. トロッコが線路を猛スピードで走っています

  2. その先には5人の人間が線路に縛られていて逃げられません

  3. あなたはこの線路の上にかかる橋の上に立っています

  4. そしてあなたの目の前にはとても大柄な知らない男が立っていました

  5. 5人を救う唯一の方法は、知らない男をトロッコに向かって突き落とすことです

  6. 大柄な男は確実に死にますが、大きな体はトロッコを止めてくれます

    あなたは橋から男を突き落としますか?

これらのトロッコ問題はA・Bともに単純化すれば
「5人を助けるために他の1人を殺してもよいか」
を問う問題です。

合理的に考えれば5人を助けるために1人を犠牲にする答えを導きますが……。
多くの人はそのように考えません。
道徳的・倫理的な判断との板挟みになるのがほとんどだからです。

トロッコ問題 Aパターン → モラルジレンマ
トロッコ問題 Bパターン → 感情的モラルジレンマ

著者はサイコパス傾向の高い人を対象にこの問題を出題しました。
するとほとんどの方がA・Bともに短い時間で結論を導き出したそうですよ。

もちろんサイコパス傾向の高い人はA・Bともに答えは「YES」です。

 

サイコパスの特徴


  • 良心の呵責(かしゃく)を感じない

  • 課題な自己評価

  • 口がうまい

  • 病的な嘘つき

  • 自己中心的

  • 冷淡で衝動的

  • 暴走しやく無責任


    これらの特徴を見て
    「とんでもないやつだ!!」
    と考える方が多いかもしれませんね。

    しかし発想を変えると以下のような特徴を持つ人物でもあるのです。

  • 自信にあふれカリスマ的魅力がある

  • 巧みな会話で人々を魅了する

  • プレッシャーの中でも冷静でいられる

  • リスクを恐れず果敢に行動できる

事実サイコパスはとても魅力的に見える人が多いのだそう。
付き合いが深くなり問題行動が目につくまでは……の話ですが。

どうでしょう?
あなたの周りにこんな特徴の人物はいるでしょうか??


じつは企業のリーダーに多い



サイコパス的特性は、犯罪者よりも企業のリーダーのほうによく見られると著者は述べています。

「サイコパスは黒か白かというものではなく、さまざまな度合いがあり、いわばスペクトラムである」

人間の人格の一類型と見られがちなサイコパス。
しかし当然のことながら一人一人大きな違いがみられます。

サイコパス的性向が高い人間の、成功するか失敗するかのカギは「反社会的」側面です。
違法行為、身体的攻撃、衝動性の「調整つまみ」が高いかどうかとされています。

成功するサイコパスの特徴

  • 衝動をコントロールできる

  • 知能指数が高い

  • サディスティックな動機

  • 他者に共感しやすい

失敗するサイコパスの特徴

  • 衝動をコントロールできない

  • 知能指数が低い

  • 他者への共感が乏しい

人の感情がわからないといわれているサイコパスですが、実はそうではありません。
ただ他人の感情に共感しない(しにくい)だけです。

むしろサイコパスは他人の感情に敏感であり、また人の弱みを嗅ぎつける能力に定評があるとされています。

よく知られている凶悪犯罪を起こすタイプのサイコパスを例に考えてみましょう。

彼らはどういう時に人が恐怖を感じるかをよく理解しています。
他人の恐怖を敏感に感じ楽しめるからこそ、凶悪犯罪を犯すのです。

罪悪感を感じないのもサイコパスの特徴とされています。

気にしないからといって、わかっていないわけじゃない
ホーマー・シンプソン

『サイコパス 秘められた能力』から

七つの中核原理

サイコパスの秘められた能力とは具体的にどういう特徴なのでしょうか?
著者はこれを七つの中核原理として解説しています。

  • 非情さ

  • 魅力

  • 一点集中力

  • 精神の強靭さ

  • 恐怖心の欠如

  • マインドフルネス※

  • 行動力

※「今この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに捕らわれのない状態で、ただ観ること」

引用:Wikipedia「マインドフルネス」


サイコパスの持つ「七つの中核原理」。
この配分を間違えず、しかるべき配慮と注意を払って使えば自分の望むものを手にするのに役立つと著者は述べています。

事実、企業のCEOにはサイコパスが多いとされてるのです。
七つの中核原理が社会の中で役立つ能力というのは、非常に説得力があると感じました。

また著者はサイコパスについて
「高性能スポーツカーのようなもの」
だとも述べています。

生まれながらにして役に立つ能力を持っている。
しかしそれは危険を伴う両刃の剣。
運転の仕方によっては死も招きかねない……。

サイコパスはそんな人物であるのを忘れてはならないと解説しています。

偉大な人と善良な人が同一人物であることはまれだ
ウィンストン・チャーチル

『サイコパス 秘められた能力』から


サイコパス度が高い職業

それでは最後にサイコパス度が高い職業について紹介していきましょう。

ここで勘違いしてほしくないのですが……、
犯罪者=サイコパスではないようにサイコパス=犯罪者ではありません。

これと同じく次の職業に就く多くがサイコパスだと思わないでくださいね。
あくまでサイコパス度が高い
(サイコパスのプラス能力を最大限に活かせる)
職業なんだなと参考にしてみてください。

サイコパス度が高い職業

1位 企業の最高経営責任者(CEO)
2位 弁護士
3位 報道関係(テレビ/ラジオ)
4位 セールス
5位 外科医
6位 ジャーナリスト
7位 警察官
8位 聖職者
9位 シェフ
10位 公務員


サイコパス度が低い職業

1位 介護士
2位 看護師
3位 療法士
4位 職人
5位 美容師/スタイリスト
6位 慈善活動家
7位 教師
8位 クリエイティブアーティスト
9位 内科医
10位 会計士

サイコパス度が高い職業の中に聖職者が入っているのは興味深いですね。

サイコパスの特徴である、
「カリスマ性」「自信にあふれている」「精神の強靭さ」「一点集中力」
を考えてみると、聖人とサイコパスは表裏一体なのもうなずけます。


まとめ

以上「サイコパス 秘められた能力」について解説してきました!!

もともとサイコパス傾向の低い人がサイコパスになれる訳ではありませんが(なれたら怖い)
サイコパス的特徴を訓練によって、ほんの少しつまみを調整するのは可能です。

特にマインドフルネスは、社会でうまく生き抜くのに大変役に立つと思います。

生まれながらにしてそれらの能力を備えているサイコパス。
とても興味深い内容です。
私自身は自分がサイコパスだとは全く思っていませんが……、
確かに彼ら(男性のほうが多い)から学ぶべき点は多いように感じました。

興味のある方はぜひ本書を読んでみては?
強く生き抜くためのヒントになるかもしれませんよ。

では最後に著者が本書で述べていた一言を紹介して終わりたいと思います。
サイコパスについて熱く語った後の言葉なので重みがありますね……。

彼らを参考にするのはいいですが、実際会った時は対応に十分気を付けるようにしましょう。

サイコパスは危険で破壊的で致命的……
思慮深く扱うよう細心の注意が必要だ
著者 ケヴィン・ダットン

『サイコパス 秘められた能力』から


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?