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女性管理職比率3割以上の中小企業事例を考える

7月25日の日経新聞で「〈小さくても勝てる〉中小で女性管理職「3割当然」先行する企業に求職者絶えず 育児に理解、男女とも安心」というタイトルの記事が掲載されました。

同記事の一部を抜粋してみます。

産業界で人手不足が深刻化するなか、求職者が引きも切らない中堅・中小企業がある。共通するのは女性管理職が多いことだ。政府が目標に掲げる3割の比率をほぼ達成した企業も少なくない。女性が働きやすい職場は男性も働きやすい。労働環境の改善が社員の定着率を高め、人材獲得競争でも優位に立つ好循環を生んでいる。

香川県の名物、うどんの乾麺や半生麺を製造販売する石丸製麺(高松市)。約160人の従業員がいる同社の事務所や工場の生産ラインは女性の姿が目立つ。課長級に相当する女性管理職の割合は27%と、労働政策研究・研修機構(東京・練馬)が集計した日本企業の平均値(12.9%)を上回る。

転機は会社を支えてきたベテラン社員の定年ラッシュだった。2008年から13年にかけて現場の責任者クラス30名が迎えた。採用活動に力を入れたところ、応募者は年10人に満たなかった。

「自分たちは働き手から人気のない会社だ」――。厳しい評価に直面した石丸芳樹社長と石丸祥子専務は社員の働き方や待遇面の改善に着手し、人材の確保とつなぎ留めに挑んだ。

社員の年間休日数を100日から120日へ段階的に増やした。時短勤務制度は子供の小学校入学まで認めるなど、国が育児・介護休業法で定める以上の中身にした。効果は着実に表れた。社員は増え離職率も低下した。

現在は工場で勤務する15人の管理職のうち7人が女性だ。女性が活躍する企業として知られるようになり、石丸専務は「育児と仕事を両立できるとして、男女問わず優秀な人材が集まってくる」と手応えを語る。23年は約40人の応募者から13人を採用した。

労働政策研究・研修機構によると、海外では管理職に占める女性の比率が40%前後の国も珍しくない。性別を問わず活躍できる職場づくりは企業規模の大小に関係のない喫緊の課題だ。

医療用品メーカーのダイヤ工業(岡山市)は25年3月卒業予定の学生が働きたい岡山県内企業ランキング(地元の人材会社調べ)で9位に入った。福利厚生の手厚さなどが評価された。従業員109人のうち女性社員の割合が54%、女性管理職比率は37.5%に上る。産休や育休から復帰後、1年以上働く社員の割合は100%だ。

社員が生涯を通じて働くことができる職場づくりを目標に掲げ、産休や育休で会社に来られない社員のためにオープンチャットを開設した。育休から復帰した社員の話や社内行事の様子などを発信し、復帰後の働き方をイメージしやすくした。

人事部門で働く今東慶子さんは「周りや上司が『仕事と同じくらい大事なのがお母さん(の役割)なんだよ』と言ってくれた」と話す。時短勤務のなかで「子育てをしながら責任ある仕事に挑戦できた」と打ち明ける。

ニプログループの全星薬品工業は社員数約800人で、女性管理職比率が25.8%と製造業の平均値8%を大きく上回る。23年には女性の活躍推進に取り組む企業として厚生労働省が認定する最高峰の「プラチナえるぼし」を大阪府内で初めて取得した。

かつては従業員80人ほどで女性管理職はいなかった。後発薬(ジェネリック医薬品)が社会に普及した直近20年間で会社は急成長。工場新設などで社員数を増やすなかで、薬の包装作業などに従事する女性も増えた。

澤井俊哉社長は「当社では『人材』ではなく『人財』だ」と強調する。係長級の役職につく女性の割合はすでに3割を超え、政府が掲げる女性の管理職比率3割の達成も目前に迫る。

全星薬品の人事担当者は「専門職を除いて人材確保に苦労した記憶はない」と話す。採用面接では求職者がプラチナえるぼし取得を話題にする。働きやすい職場環境づくりが企業のブランドづくりに役立つ。

人口の約半数が女性だとすると、管理職の約半数も女性人材が占めていておかしくありません。女性管理職比率が高い国でも40%前後、日本含めた低い国ではそれ以下の比率という現状からは、女性人材が管理職を務めにくい要因が明らかに存在していると、改めて認識されます。

同記事からは、改めて「総力戦」というテーマが頭に浮かびます。

家庭内の子育ても、負荷が母親に寄っているのが現状ですが、父親をはじめとする母親以外の人材もさらに参画すべき余地があります(私自身も明らかにそうです)。職場でも、性別などの属性を問わず、各人の強みやできることを融通・連携し合っての総力戦が、ますます問われるようになるということです。

労働力人口が減っていくこれからの環境では、改めて、社をあげて総力戦に取り組んでいる企業が、そうでない企業に比べて求職者から選ばれやすくなっていくはずです。

社員の年間休日数が120日、時短勤務制度は子供の小学校入学まで認めるなどが以前から既に実現しているという企業は、大企業を中心に少なくありません。そのうえで、同記事の事例のように、中小企業を中心にまだそこまで至っていない企業も相応にあります。こうした環境を何とか実現するだけでも生み出せる雇用の余地がありそうだと、同記事は示唆していると感じます。

先日もある会社の方々と意見交換をする機会があり、「特に子育て中の従業員は、子どもの急な発熱や突発的な事象への対応が求められる。皆が快く臨機応変に、柔軟にシフト調整するなどの対応を心がけている」「就業時間帯や場所、何かあったときの柔軟な調整など。ちょっとした柔軟さがあるかないかで、勤続できるかどうかを分けることも多い」というお話を聞きました。ポイントは「快く」にあるのだと思います。

やむを得ない事情で調整を依頼する側が「申し訳ない」と感じてしまう状態(そうした気持ちになるのは当然かもしれませんが)だと、真の働きやすい環境とは言えないのだと思います。

私自身も保育園送迎を行うことがありますが、朝保育園に子供を預けてそこから通勤して始業時刻9:00に間に合おうとすると、ぎりぎりになります。私の子どもの場合、諸条件から預けるのを認可されたのは、基本的に始業1時間前の8:00から。通勤時間は45分間。8:05に預け終わり、10分で自転車に乗って駐輪場に置き、電車に乗ってぎりぎりです。都内の電車は運転間隔調整がよく発生し、少し遅延すると間に合いません。

さらに、日によっては、保育園の体育館で昼寝用の布団を布団カバーに入れるという作業が加わります。この作業は子どもを預けた後に行うというルールになっているため、この作業が加わると物理的に始業時刻に間に合わないということになります。同様のような環境の方も多いのではないかと思います。

今の勤務先ではありがたいことに、出勤の時間調整が可能、テレワークが可能となっているため、私が送迎を担当する日も調整しながら仕事をすることが可能ですが、そうでなければ私が朝の送迎を行うことはできません。

冒頭の「社員の年間休日数が120日、時短勤務制度は子供の小学校入学まで認めるなどにしたことで、明らかに応募が増えた」という事例からも、働きたくても働けていない人材はまだ相当数いるのではないかと想定されます。

同日の日経新聞別記事「女性活躍基準「えるぼし」 中小認定、5年で6倍 トップが率先垂範」では、次のように紹介されています(一部抜粋)。「プラチナえるぼし」などの公的な認定を受けることは、企業の取り組み度合いを示すことにもつながります。そうした取り組みが感じられる企業は、現状で子育てを中心的に担っている母親だけでなく、男性の人材からも選ばれやすくなるということでしょう。

厚生労働省が女性活躍の推進に取り組む企業を認定する「えるぼし」の取得企業は増えている。女性管理職の比率が産業別の平均値以上であることや、採用環境に男女で大きな差がないなど、5つの基準をすべて満たす「えるぼし(3段階目)」の認定企業は1800社を超えた。

より厳しい基準が問われ、全体で約60社にとどまる「プラチナえるぼし」は301人以上の企業がまだ多いものの、女性活躍の取り組みは着実に中小企業に広がっている。

厚労省の担当者は「えるぼし取得で自社の評判が高まるメリットを感じている企業が多い」と説明する。認定を受けた企業は自社の製品に専用のマークを付与し、性別を問わない職場づくりをアピールできる。

女性が活躍し入社希望者が多い企業に共通するのは、人事制度が「仏つくって魂入れず」に陥らず機能している点だ。制度それ自体は際だって先進的なわけではない。だが、つくった制度を社員が当たり前に利用できる企業風土をトップが率先垂範してつくっている。

会社は、働きやすさを追求するのが最終目的の場ではありません。仕事を通じた成果を追求する場です。そのうえで、働けないことには成果を追求する仕事に取り組む機会がありません。働きやすさを実現するための制度面の後押し、柔軟な調整といった取り組み面の後押し、両方が必要だと考えます。

<まとめ>
「総力戦」を後押しする、制度面と取り組み面が必要。


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