11月3日の日経新聞で、「データ編(4)キャリア官僚、若手流出続く 年100人超、5年未満多く」というタイトルの記事が掲載されました。以前は離職ということがなかったキャリア官僚の間で、離職が増えていることについて取り上げたものです。
同記事の一部を抜粋してみます。
上記から感じるのは、望まない離職を起こさないようにすることと、離職全体に対する評価とを、分けたほうがよいだろうということです。
組織の慣習が非生産的なためにうんざりしたり、本来は意義のある仕事でありながらもそのことを感じられないために展望を見失ったりして離職が発生しているのであれば、もちろん問題です。記事の内容からは、それらしいこともありそうな感じもしますので、組織的な課題かもしれません。
以前より倍率が低くなっているとはいえ、中央省庁はなんとなく応募して採用されるような仕事ではないと思います。高い志と仕事の目的意識、意欲を持ちながらも、本来望まないネガティブ離職となっているのなら、予防・減少させたほうがよいと言えます。
一方で、離職率では民間企業より格段に低いと言えます。新卒就職者の1/3が3年以内に離職するという目安からすると、5年以内の退職率11%は低く抑えられています。1年未満では1%です。民間企業ではなかなかない水準です。
同日付の日経新聞の別記事「「官邸1強」の後(4)草刈り場の霞が関 退職しても役所の仕事」では次のように書かれています。(一部抜粋)
途中で辞める人がだれも出てこない前提で人材マネジメントを想定するのは、通常外の考え方だと言えます。現状のほうが自然だと言えるのではないでしょうか。
また、中央省庁出身者が民間企業で重宝されたり、民間企業を経験した後に回転ドア式に出戻りしたりすることは、人的資源の有効活用、官民双方での生産性向上という点で喜ばしいことだと思います。
以前、大学時代の学友が国家公務員として就職が決まったときに「一生勤めるわ。公務員は途中で辞めたらできることがない」と言っていました。今では、だいぶん景色が変わってきたのではないかと、両記事からは感じます。
中央省庁にこのような離職の選択肢ができたこと、離職による人材のポジティブな流動化も全離職ケースのうち一定の割合を占めていること、そもそもの離職者割合も民間企業に比べて高くないことなどを考えると、(トータルで悪化はしているのかもしれませんが)冒頭のタイトルの記事から受ける印象ほど事態が悪いわけではないように感じられます。あるいは、捉えようによっては、以前よりあるべき姿に近づいていると言えるかもしれません。
何をあるべき姿と定義するかによって、現状に対する評価も変わってくることのひとつの例ではないかと感じました。
<まとめ>
人材の流動化はあらゆる領域で起こっている。