従業員の働きがいを役員評価に加える
7月4日の日経新聞で、「社員の働きがい、役員賞与に反映」という記事が掲載されました。パナソニックホールディングス(HD)の自動車部品を手掛ける子会社、パナソニックオートモーティブシステムズ(PAS)で、従業員約6千人のエンゲージメント(働きがい)の結果を役員賞与に関連付けるという内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
同記事から、3つのことを考えました。ひとつは、仕事を通じて従業員を生かしているかどうかを、本格的に求められるようになったことの表れだろう、ということです。
経営学者のドラッカーは、経営・マネジメントには3つの役割があると定義しています。
1.自らの組織に特有の使命を果たす
2.仕事を通じて働く人たちを生かす
3.社会の問題について貢献する
これらのうち、1.は以前から問われてきました。3.についても、SDGsやESGなどの形で、各企業なりの結果を重点的に問われるようになってきています。2.も重要ながら、その具体的な結果については1.3.ほどには声高に言われてこなかったのかもしれません。
しかし、ここにきて、人的資本の情報開示などが叫ばれるようになってきています。上記は、2.に対するPASなりの解のひとつということでしょう。この動きは、今後ますます広がっていくはずです。
2つ目は、結果を生み出すための取り組みを適切に定義し、実行することの大切さです。
上記3つの役割のうち、1.の結果は例えば売上という形で測れると言えます。売上高の大きさは、お客さま=社会からどれだけ必要とされたかの量、つまりはお客さま=社会からの評価の高さの表れ、と捉えることができるためです。
ここで、「売上をあげるために何に取り組むか」が歪んだメッセージとなって取り組み施策化してしまうと、例えばお客さまのことを考えない理不尽な売上至上主義の営業活動となってしまいます。
働きがいの追求も同様です。そのことが歪んだメッセージとなって各組織に落とし込まれてしまうと、本質を外した取り組み施策化してしまうかもしれません。「心理的安全性づくり」が「表面的に心地よいだけの、単なるぬるま湯コミュニケーション」になりかねないようなイメージです。
例えば上記のアンケート結果は、売上高同様、結果を確認するための指標にはなります。そのうえで、同指標を高めるためにやるべきことを適切に定義し実行できるかが、大切になってくると思います。
3つ目は、評価ルールのメンテナンスの大切さです。
上記内容に沿うと、(制度詳細は違うのかもしれませんが、指標に天井があるのなら)指標が改善すれば賞与の支給額アップ、変化がないor悪化の場合はダウンということになります。そうすると、指標が最高得点近辺にまで達してしまうと翌期はダウンしかありません。今の局面としては同ルールが妥当なのかもしれませんが、期待する成果を上げて指標が上がっていった場合は、ルールの見直しが必要のように思われます。
これに似たことは、私が訪問する企業でも時々見られることです。
例えば、昨対比で業績目標を設定したり、昨対比の業績結果で評価されたりする営業部門があります。そのような部門では、往々にして「すでに今期目標は達成した。もっと頑張れそうだけど、実績を上げ過ぎると来期の目標が吊り上がるから、この辺でセーブしておこう」「今年はどっちみち目標達成できそうにない。今年は思い切って業績落としておいて、来期以降段階的に上げていって、もらうもの増やそう」といった、「目標ゲーム」が起こることがあります。
このようなゲーム調整が起こってしまうと、働きがいどころではなくなります。
「そのルールが本当に適切に機能しているのか」も、よく見極めていくべきだと思います。
<まとめ>
仕事を通じて働く人たちを生かしているかどうかについての、自社なりの結果の指標と適切な取り組みを定義し、実行する。
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