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自律型人材を考える(3)

前回まで、自律型人材をテーマにしました。「自律」を目指すにはまず「自立」に至る必要があり、当該領域で「自立」に至るにはその領域の知識や技能のインプット=型を学習することが必要であるということを考えました。

前々回の投稿では、「自立」は以下のうち1.の段階、「自律」は1.から4.にまで至っている状態だと考えました。

1.やるべきことを理解し、上司や他者からの指示がなくても自ら行動できる
2.やるべきことの目的や意味を自ら考え、やるべきことに対して改善ができたり、必要に応じてやるべきこと自体を見直したりできる
3.やるべきこと・やりたいことが何かを自ら考え、行動できる
4.やるべきこと・やりたいことが何かを自ら考えたり、やるべきことを見直したりするための判断基準となる行動規範を、自分の中に持てている

しかしながら、すべての人が、「自立」段階の後そのまま「自律」に至るとは限りません。「自立」段階でとどまったままになる場合もあります。

それでは、私たちが自律型人材のステージまで進んでいこうとするには、どうすればよいのでしょうか。その大きな手がかりとなるのは、「承認欲求」を発動できるかどうかだと考えられます。誰に、どのようなことで認められたいかを、はっきりと認識するということです。

私たちは、現状維持を望むという本能を持っています。水は低きに流れ、人は易きに流れます。わたしたちは基本的に変化を嫌う生き物です。「自立」まで到達すれば、その業務で一人前と言われ、それなりに立場もできてきます。そこで安定できるような状態になれば、「できればこのまま安定的な状態を維持したい」と思うようになります。

そこで、同じように本能として備えている承認欲求を発動させるわけです。

私たちは、基本的に誰かに認められたいという欲求を持っています。SNSで文字や写真、動画を熱心に投稿する人の中には、ビジネスや収益目的で行っている人もいますが、多くの人は収益と直接的には無関係でしょう。原動力になっている大きな要因のひとつは、自分のことを認められたいという承認欲求です。ニュースサイトでのコメントはその典型です。

経営学者のドラッカー氏の遺した言葉の中に、「何によって憶えられたいか」という問いがあります。この言葉は、「どのような人に、どのようなことで認められたいかを明確にすること」と言い換えることができると考えます。「誰」と「何」が入るかは、人それぞれです。つまりは、どのような形で自身の承認欲求を満たしたいかをはっきりと認識するということです。

「自立」で現状維持にとどまりたくなる本能に待ったをかけ、「自律」ステージにまで進んでいきたいと思い自身を行動に導くためには、別の本能である承認欲求を現状維持欲求以上に大きくする必要があるということです。

やりたい目標・業務を設定し、「●●の人たちに、●●によって認められたい」という承認欲求を発動させて、わざわざ取り組んでいく。そうならなければ、「やらなければならない目標・業務をこなす」でとどまってしまうわけです。これでは自律には進みません。現状維持欲求は強力です。であれば、それを超えて、あえて安定を崩してでも認められるために、更なるチャレンジに進むには、強力な承認欲求を自覚する必要があると思います。

誰に、どのようなことで認められたいかを明確にするには、企業をテーマによく言われる「ミッション・ビジョン・ウェイの明確化」を個人版として自身にも応用する視点が有効です。すなわち、自身の職業人生で何を使命とし、中長期的にどのような状態になっているのを目指し、そうなるための行動規範を明確にすることです。

このことによって、上記で挙げた自律型人材の状態を表す「4.やるべきこと・やりたいことが何かを自ら考えたり、やるべきことを見直したりするための判断基準となる行動規範を、自分の中に持てている」を実現することができます。

そのうえで、自律型人材の育成には注意点も挙げられます。それは、従業員個人の自発的な判断・行動が、組織の目指すビジョンや戦略と合致していない場合、組織戦略が達成されなくなる可能性です。

本人がやりたいこと、自発的に設定する目標や業務が、組織の戦略に合っていれば何も問題になりませんが、合っているとは限らないわけです。両者のコラボが必要です。

また、各人が自身の判断や裁量で動く自律型組織では、個人や各チームで意思決定が行われていくがゆえに、全体での情報の一元化が難しくなる一面もあります。

こうした逆効果を最小限に抑えて、自律型人材の行動発揮が最大限に活用できるように、例えば次のような取り組みも考えられるとよいでしょう。

・上司・メンバー間の1on1ミーティングなどを活用し、各人のミッション・ビジョン・ウェイを可視化していく。それらの内容と、組織のミッション・ビジョン・ウェイとの接点を見出すこともする。
・情報共有のためのシステムを整備し、必要な情報が埋もれないようにする。
・Off-JTや合宿など、相互理解を深められる機会をつくる。

以上、3回にわたって自律型人材について考えてみました。
ご参考になれば幸いです。

<まとめ>
「承認欲求」を、「自立」から「自律」への変化の原動力とする。

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