シンプルイシューで臨む(2)
前回の投稿では、「シンプルイシューで臨む」というタイトルでした。重点主義で、やるべきことや課題をシンプルに絞り込むことの意義について考えてみた内容でした。
https://note.com/fujimotomasao/n/n5fc62b3727d4
先日、ある経営者様にお会いしました。
いろいろな意見交換やご相談をしている中で、私のほうからある問いかけをする場面がありました(ここでは、その内容は控えますが)。その問いかけに対して同経営者様からかえってきた答えがとても印象的でした。
「答えは一択ですね。○○しかありません。理由は・・・」
まったく何の前触れも前提もない問いかけでしたので、想像していない回答でした。「そうですねえ、、(しばらく考えて)・・・」「こういうこととか、ああいうこととか・・・」のような回答かなと想像していましたので、「一択」とかえってきたことが意外で印象的だったわけです。
同経営者様とは数年前からの関係性があります。初めてお会いした時は、ある企業様の社員というポジションでした。以降、経営幹部になられた後、今は独立して会社経営をされています。上記のお話を聞いて、今は経営者という立場の方なのだというのを改めて感じたと同時に、かくも見事な経営者の視点だと感じた次第です。
上記の「一択、すなわちこれ」は、究極の抽象化だと言えます。
経営やマネジメントでは、この「抽象化」がとても重要です。
抽象化は具体化の逆です。「今やるべきことは、要するにとにかくこれ」と大きく括り、イシューをシンプルにまとめることが抽象化です。
例えば、スポーツの中で私は、見るのもするのも、
・サッカーより野球が好き
・サッカーよりテニスが好き
・相撲よりサッカーが好き
・テニスと野球は同じぐらい好き・・・
と個別事象を明確にしながら考えることが具体化です。
一方の抽象化は、これらの具体的な事象も踏まえて、「(要するに)私は時間制限のない球技を好む傾向にある」と大きく括り、仮説を立てることです。クリケットもアイスホッケーも、私は見たこと・やったことがありません。しかし、「私は時間制限のない球技を好む傾向にある」という抽象化された仮説が立てば、「アイスホッケーよりクリケットを好む可能性が高いだろう」という結論を導くことができます。
これが、抽象化できないままだと、「アイスホッケー、クリケット、、どちらが好きか両方最後まで見比べてみないと分からない」となります。抽象化された仮説から、答えを見たことのない未来に対して、確度の高い意思決定が可能になるわけです。
企業活動の中でも、すべての事象を実際に見て試してみないと結論がわからないより、抽象化された仮説から結論を導き出せるほうが、環境変化への対応力が高いと言えます。(もちろん、現場現物を実際に見て考えることも、テーマや状況によっては重要ですが)
中には、「当年度の会社方針」が中途半端な抽象化レベルで20箇条以上も並べられているような経営計画書を見ることがありますが、たいていすべての兎を取り逃がしてすべて中途半端に終わります。
前回のコラムでも、重点主義でやるべきことをシンプルに絞って言い切る経営会議の例を取り上げました。今優先されること、目指すべきことをシンプルに抽象化し大方針として掲げて、全員でそれに取り組む状態をつくることは、経営やトップマネジメントに必須の要素です。
ミドルマネージャーは、その方針を自部署内で行うべき個別具体的な行動目標に細分化してメンバーと共有し、メンバーに取り組んでもらうことになるわけです。
リーダーシップ、財務の知識、・・・など、経営やマネジメントに必要とされるアイテムはたくさん挙げられます。その中でも、「物事を抽象化しイシューをシンプルに定義する」という「抽象化」アイテムは、最上位に位置付けられるぐらい重要なものだろうと思います。
<まとめ>
やるべきことや課題をシンプルに絞り込むことは、抽象化するということである。