管理職の準備を促す組織的な取り組み
7月8日の日経新聞で、「女性管理職、「幸せ」の理由は 積水ハウス、やる気引き出す2年研修」というタイトルの記事が掲載されました。女性人材の管理職就任を促す取り組みを取り上げた内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
上記から想像したのは、管理職の担うマネジメント業務について、偏ったイメージが先行しているのではないかということです。
私が仕事で関わる非管理職の人の間でも、管理職について魅力を感じないという話は多く聞きます。業務や責任が増えることに加え、「ハラスメントや労務管理への対応が厄介そう」「残業手当がなくなることも含めて、対価が割に合っていると思えない」といった声があがります。確かに、そういう面もあります。
そのうえで、同記事に見られるように、組織のメンバーに仕事を任せて全体で大きな成果物をつくりだすのを主導できる、その過程の中でメンバーと共に成長できるなど、本来のマネジメント業務のやりがいがイメージできていない人も多そうです。
知らないことはそもそもイメージもできません。マネジメント業務のイメージを持ってもらうために、本来のやりがいと、業務の進め方や壁にぶつかったときの対応方法の考え方など、積極的に伝えて吸収してもらう機会をもっと持つべきなのかもしれないと感じます。
同社は、自社なりのやり方でそのことを実現しているということだと思います。同記事の続きを一部抜粋してみます。
マネジメント業務について理解を深めて関心を高め、必要なスキルを先取りするうえでたいへん有効な取り組みだろうと見受けられます。そのうえで、「ウィメンズ」に限らず、「メンズ」も対象になってよい内容ではないかと感じました(メンズ用の別のプログラムも存在しているのかもしれませんが)。男性人材も、案外このような機会のない会社が多いと思われるためです。
別の調査も見てみます。パーソル総合研究所の「働く10,000人 成長実態調査2022」では、「管理職意向」(現在の会社で管理職になりたい人の割合)について、2018年と2022年の比較で、次のようになっています。左から、2018年、2022年の結果です。
男性20-24歳: 47%、44%
男性25-29歳: 44%、37%
男性30代: 38%、33%
女性20-24歳: 19%、24%
女性25-29歳: 19%、20%
女性30代: 18%、18%
女性人材の管理職意向は、まだ低いながらも、若い世代ほど高まっている結果となっています。これは、各社による多様性推進や女性活躍推進の取り組みが高まっていて、それに若い世代ほど反応しているという、成果を見てとれるひとつの指標ではないかと想像します。同記事から連想すると、同社についてはこれらの数値を上回っていそうだと想像します。
一方で、男性は減少傾向です。
同じパーソル総合研究所による別の調査「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」では、各国で管理職になりたい人材の割合が、次の通りとなっています。左から、全体、男性、女性です。対象の18ヵ国・地域で、日本は最下位となっています。しかも、17位のオーストラリアから大きく数値が離れています。
1位:インド 90.5%、91.8%、88.5%
2位:ベトナム 87.8%、89.0%、86.5%
3位:フィリピン 80.6%、81.8%、79.1%
4位:中国 78.8%、79.3%、78.4%
5位:マレーシア 73.6%、82.3%、65.3%
7位:フランス 68.9%、74.5%、64.5%
13位:アメリカ 54.5%、65.7%、48.4%
17位:オーストラリア 38.0%、46.1%、33.1%
18位:日本 19.8%、27.0%、13.8%
これを見ると、ほぼすべての国で女性のほうが割合が低くなっていて、特に先進国と呼ばれる地域は男女差が大きくなるというのが、大まかな傾向と見てとれそうです。そのうえで、日本はそもそも性別などに関係なく低い傾向が見てとれます。
日本の人材投資は取り組みが不十分なことが指摘され、例えば対GDP比の人材投資規模や学びに使っている時間が、国際比較すると低いなどということがよく指摘されます。そのような結果が、こういうところにも表れているのかもしれません。
すべての人が管理職に向いているわけでもなく、すべての人が管理職を担うべきというわけでもありませんが、マネジメント業務について知り、必要な準備を促すための取り組みは、もっと行われてもいいのではないかと考えます。同記事の例は、そのことを示唆していると思います。
<まとめ>
マネジメント業務を知るための、体系的な機会をつくる。