内定辞退者とのつながりを考える
7月3日の日経新聞で、「内定辞退者「最終面接のみ」 イオンモール、転職希望時に即採用」というタイトルの記事が掲載されました。内定を出して辞退された人材に対し、他社への就職後に再度自社を志望すれば最終面接の機会を優先的に提供するというものです。
同記事の一部を抜粋してみます。
内定者に対してパスポートを出し「○年以内を期限に、入社の意志表明をしたらいつでも入社できる権利を認める」といった制度はこれまでにも聞いたことがありますが、内定辞退者に対する同記事のような仕組み化は、聞き慣れない人も多いことと思います。
だいぶん前の話になりますが、私が就職活動をしていたころは、内定辞退した人はその企業の敵のような扱いを受けました。
私も辞退した会社がありましたが、辞退の電話をして以降音信は不通でした(当然ではありますが)。大学のゼミ仲間の中には、「対面で会ってお伝えすべき」と律儀に考え、喫茶店で内定辞退の意志を伝えてお詫びしたところ、「ふざけるな」と相手の採用担当者から手元にあった水をかけられた人もいました。同記事からは、時代が変わればずいぶん変わるものだと感慨深く感じます。
同記事のイオンモールの取り組みは、たいへんユニークかつ有力な方法だと考えます。
内定辞退者の立場としては、辞退時にその後のつながりを提案されることで、間違いなく今後の選択肢のひとつとなるはずです。
最終選考まで進んでいるということですので、少なくとも本人の中で有力な就職候補先のひとつになっていたはずです。今後の選択肢として残ることは、キャリア開発の一助と励みになります。その選択肢のチャレンジを行使しなかったとしても、少なくともその会社に対するイメージはよくなります。水をかけてくるような会社とは比較にならないでしょう。
同記事では、「大卒者の3年以内の離職率は32.3%で対前年比0.8ポイント上昇」とありますが、「大卒3年以内の離職率約1/3」は数十年間ほぼその前後で推移する、安定した数値です。
職業や会社を初めて選ぶ学生が、自分に最適な環境を選ぶために必要な知識・判断力をつけることは、学生時代だけでは限界もあります。高卒の場合は、人生の経験年数的に大卒より短いため、さらなりでしょう。大卒より高卒のほうが、就職後数年での離職率が高いのは、このことが大きな要因として想定できます。
自社として、せっかく入社してくれた人材をみすみす退出させないように努めることは、言うまでもなく大切です。そのうえで、社会全体での就職後数年以内の離職率は、しばらくは今の水準が続くという前提で、第二の環境として自社を選択肢に入れてもらえるような取り組みを意欲的に進めていくことも、大切だと言えそうです。
イオンモールの例は、自社を退職した人材をアルムナイとしてネットワーク化することに加えて、潜在的な人材プールづくりを進めるという、さらに拡充した取り組みだと言えそうです。
同社の内定辞退率は約4割ということですが、一般的な内定辞退率63.6%と比較すると既に優等生だと言えます。それでもなお、このような取り組みをしているという点は、他社にとっても参考にするべき動きではないかと思います。
<まとめ>
自社を辞退した人材も、積極的に人材プールに取り込む。