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内定辞退者とのつながりを考える

7月3日の日経新聞で、「内定辞退者「最終面接のみ」 イオンモール、転職希望時に即採用」というタイトルの記事が掲載されました。内定を出して辞退された人材に対し、他社への就職後に再度自社を志望すれば最終面接の機会を優先的に提供するというものです。

同記事の一部を抜粋してみます。

イオンモールは2025年、新卒学生が同社の内定を辞退しても3年以内なら最終選考だけで採用を決める制度を始める。辞退者が別の所で働いた後、転職を希望する時に即座に採用できるようにする。小売業は新卒の採用競争が激しい。小売り大手によるユニークな人材のつなぎ留め策は他社にも波及しそうだ。

25年以降に大学や大学院を卒業し、イオンモールの内定を辞退した学生が対象だ。内定をいったん受諾した後に辞退した学生は対象外となる。

3年以内に再度同社へ入社を希望する内定辞退者には書類選考と1次面接を省略し、役員の面接による最終選考だけで採用を決める。内定辞退者には事業に関する情報や採用情報などをメールで配信し、つながりを保つ。

イオンモールはここ数年100人前後を採用している。25年は新卒だけで100人を採用する計画。ただ例年、内定辞退率は約4割に及ぶ。短い選考期間では企業への理解を深めることができず、コストをかけて内定を出しても入社につながらないという課題があった。

リクルート就職みらい研究所が3月、全国の学生約960人を対象に実施した調査によると、24年卒学生の内定辞退率は63.6%となった。学生が複数の就職内定先を得て、企業を選別する傾向は強まっている。

また同研究所が1月までに全国約1490社へ実施した調査では、24年卒の学生を計画通りに確保できたとする企業は36.1%にとどまり、調査を始めた12年卒以降で最低を更新した。

厚生労働省によると、20年3月に卒業した大卒者の3年以内の離職率は32.3%で19年3月卒と比べて0.8ポイント上昇し就職のミスマッチは高い水準が続く。イオンモールはミスマッチで他社への転職を検討する若年層が一定程度いるとみて、新制度が採用数の底上げにつながると考えている。

三井住友海上火災保険など金融業界では、イオンモールと同様の制度を導入した企業がある。また、トヨタ自動車やパナソニックホールディングスなどは学校などの同窓会から派生した「アルムナイ」と呼ぶ退職者の再雇用制度を拡充。人材をプールする仕組みを整える動きが広がっている。

イオンモールも6月、退職者向けのSNSを開設したほか、退職者を再雇用する制度を始めた。新卒の内定辞退者を対象とした今回の新制度も人材を確保しておくアルムナイと同様の機能を持つと言えそうだ。

内定者に対してパスポートを出し「○年以内を期限に、入社の意志表明をしたらいつでも入社できる権利を認める」といった制度はこれまでにも聞いたことがありますが、内定辞退者に対する同記事のような仕組み化は、聞き慣れない人も多いことと思います。

だいぶん前の話になりますが、私が就職活動をしていたころは、内定辞退した人はその企業の敵のような扱いを受けました。

私も辞退した会社がありましたが、辞退の電話をして以降音信は不通でした(当然ではありますが)。大学のゼミ仲間の中には、「対面で会ってお伝えすべき」と律儀に考え、喫茶店で内定辞退の意志を伝えてお詫びしたところ、「ふざけるな」と相手の採用担当者から手元にあった水をかけられた人もいました。同記事からは、時代が変わればずいぶん変わるものだと感慨深く感じます。

同記事のイオンモールの取り組みは、たいへんユニークかつ有力な方法だと考えます。

内定辞退者の立場としては、辞退時にその後のつながりを提案されることで、間違いなく今後の選択肢のひとつとなるはずです。

最終選考まで進んでいるということですので、少なくとも本人の中で有力な就職候補先のひとつになっていたはずです。今後の選択肢として残ることは、キャリア開発の一助と励みになります。その選択肢のチャレンジを行使しなかったとしても、少なくともその会社に対するイメージはよくなります。水をかけてくるような会社とは比較にならないでしょう。

同記事では、「大卒者の3年以内の離職率は32.3%で対前年比0.8ポイント上昇」とありますが、「大卒3年以内の離職率約1/3」は数十年間ほぼその前後で推移する、安定した数値です。

職業や会社を初めて選ぶ学生が、自分に最適な環境を選ぶために必要な知識・判断力をつけることは、学生時代だけでは限界もあります。高卒の場合は、人生の経験年数的に大卒より短いため、さらなりでしょう。大卒より高卒のほうが、就職後数年での離職率が高いのは、このことが大きな要因として想定できます。

自社として、せっかく入社してくれた人材をみすみす退出させないように努めることは、言うまでもなく大切です。そのうえで、社会全体での就職後数年以内の離職率は、しばらくは今の水準が続くという前提で、第二の環境として自社を選択肢に入れてもらえるような取り組みを意欲的に進めていくことも、大切だと言えそうです。

イオンモールの例は、自社を退職した人材をアルムナイとしてネットワーク化することに加えて、潜在的な人材プールづくりを進めるという、さらに拡充した取り組みだと言えそうです。

同社の内定辞退率は約4割ということですが、一般的な内定辞退率63.6%と比較すると既に優等生だと言えます。それでもなお、このような取り組みをしているという点は、他社にとっても参考にするべき動きではないかと思います。

<まとめ>
自社を辞退した人材も、積極的に人材プールに取り込む。

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