Z世代の消費傾向
11月5日の日経新聞で、「華流ブランド新時代(3)ナイキより「中国」着たい 国旗や漢字、アパレル新風」という記事が掲載されました。同記事の一部を抜粋してみます。
~~「『中国』の二文字が印刷されたデザインが大好き」――。カナダの大学に留学中の20歳の中国人女子学生、呉さんは最近、ネット通販で「李寧(リーニン)」のシャツを買い父親に贈った。欧米のブランドと比べ「中国のブランドの方が新鮮に感じた」という。
中国のスポーツアパレル市場では長年、米ナイキや独アディダスといった欧米のブランドが高い人気を誇ってきた。だがここ数年、若年層を中心に中国のブランドが注目を集める。その代表格とされるのが、呉さんが買い求めた李寧だ。
李寧は「体操王子」のニックネームで親しまれている1984年のロサンゼルス五輪の金メダリスト、李寧・共同最高経営責任者(CEO)が90年に創業した。プロスポーツに強いブランドとして30年以上の歴史を誇るものの、2010年代初めには会社の業績が赤字になることもあった。
転機は18年だった。「中国李寧」と漢字で大きく描いたロゴを用意して「ニューヨーク・ファッション・ウイーク」に出展し、鮮烈なデビューを飾った。街着として日常的に着られるファッション性の高い商品も増やし、若者が支持するブランドとして台頭した。
李寧と同様に勢いのある中国ブランドが「安踏(アンタ)」だ。運営会社の安踏体育用品は1991年の創業で、最近では五輪のスポンサーとして中国の国旗をデザインに取り入れたウエアが注目される。英ユーロモニターインターナショナルによると、中国のスポーツアパレル(靴を除く)の20年の小売販売額のシェア(見込み値)は、安踏が11.9%で3位、李寧が8.2%で5位となり、首位のアディダス(19.5%)と2位のナイキ(12.8%)を猛追する。
右肩上がりの背景には「Z世代」と称される、1990年代半ば以降に生まれた10代後半~20代前半の若者層の支持がある。これらの世代を中心に、国産ブランドを再評価する「国潮」と呼ぶトレンドが広がった。~~
今では機会が少なくなりましたが、私は10年ぐらい前まで別の仕事をしていた時に、多くの中国人と関わる機会がありました。皆さんのお話からは、日本製品の品質への信奉、憧れが感じられました。「買うなら日本製品がいい」「日本にいる間に家電を変えるだけ多く買って帰りたい」。日本人アイドルのプロマイドを持ち歩いている人も多く見かけました。
私が仕事で関わるわけですので、日本によいイメージを持っている中国人との接点が多かったためにそのような印象が残っているのかもしれませんが、全体的な傾向として確かにあったと言えると思います。その傾向も、上記記事からは変わっていることが想像されます。
7月14日付の「中国、国産ブランドが台頭 若者、海外発より実利」でも、次のように紹介されていました。
~~「独身の日」に次ぐ中国最大級のネット通販セール「6.18セール」。2021年も中国ネット通販2位の京東集団(JDドットコム)の取扱高が、過去最高の3438億元(約5兆8000億円)となるなど活況だった。なかでも富裕層による高額商品とともにセールを盛り上げたのが、中国語で「国潮」と呼ぶ新たなトレンドだ。
国潮とは「中国」と「潮流」を掛け合わせた造語で、国産ブランドの商品を再評価する動きを指す。中国ではここ1~2年、国産ブランドに回帰する消費者が増えており、なかでも10代後半から20代の支持を集めている。
「価格も安いし品質も悪くない。十分おしゃれが楽しめる」。上海市に住む女性会社員の張さん(23)は、中国の新興コスメブランド、完美日記(パーフェクト・ダイアリー)の口紅などを6.18セールで大量に購入した。高価な海外ブランドには「興味がない」と話す。
消費者をひき付けたのは、価格面に加えて品質や機能の向上だ。その波がいまは日用品や食品などにも広がりつつある。
1990年代半ば以降に生まれた「Z世代」はこうした国産ブランドとともに育ち、海外ブランドへの憧れは低い。さらに最近増えている草食系の若者「寝そべり族」は実利を重視する。そのため身の回りのものも高価な海外ブランドよりも、品質と価格のバランスをみて商品を選ぶ傾向が強い。~~
これらの記事からは、2つのポイントがあると思います。
ひとつは、中国消費者に対する国外ブランドの神通力が戻ることはないという点です。中国の「Z世代」は生まれた時から国産ブランドとともに育っているため、そもそも国外ブランドに憧れるという概念がないと言えます。米国ブランド同様、「日本ブランドだから売れる」という、日本発だけを理由にした訴求力は今後期待できなくなるだろうということです。
もうひとつは、お客さまが求めているもの、本当に良いものであれば、売れるはずという点です。中国に限らず、「Z世代」は実利主義の面があります。何でも所有したがるのではなく、本質的に持ちたいと思えるものだけ所有する、そうでなければ買わないか借りるか廉価品で済ませる傾向があると指摘されています。ブランドに関係なく、本人にとって良い・ほしいと思えるものは受け入れられるというわけです。
この傾向は国を超えてある程度普遍的に成り立つという前提で、自らは何をどのように提供するのかを研ぎ澄ませていく必要がありそうです。この観点からは、今後一層マーケティングの視点と取り組みが重要になってくると言えるのではないでしょうか。
<まとめ>
世代によって消費傾向が変わる。