オンラインレッスンを考える(2)
前回の投稿では、オンラインレッスンの市場の広がりについて取り上げました。
オンラインレッスン市場にとってさらに追い風となるのは、「リスキリング」のニーズの高まりです。リスキリングとは学び直しのことで、最近メディア等でよく聞くようになった言葉です。「日本の人事部」では、リスキリングについて次のように説明されています。
~~「リスキリング(Reskilling)」とは、職業能力の再開発、再教育のことを意味する。近年では、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略において、社内で新たに必要となる業務に人材が順応できるようにする再教育という意味でも使われることが増えている。技術の進歩によって衰退する産業がある一方、新たに生み出され、必要性が高まる業種・職種もある。2020年11月に日本経済団体連合会(経団連)が発表した「新成長戦略」においても、失われる雇用から新たに生まれる雇用へと円滑に労働力を移動できるよう、企業が従業員のリスキリングを推し進めることを推奨している。~~
しばらく前から「リカレント教育」という言葉がよく聞かれるようになりました。リカレント教育について言及される場面では、社会人が大学編入学などで一時的に仕事を離れ、教育課程に戻って学び直す意味合いで使われることが多く見られます。一方、リスキリングは仕事をしながら再教育を受け、これからの実務に直結する職能を開発していくことが強調されている概念だと言えるでしょう。
そして、リスキリングを後押しするのが、CtoC(消費者から消費者へモノやサービスを販売する個人間取引)によるオンラインレッスンです。一例として、Udemyのサービスを見てみます。Udemy は2010年にサービスが始まり、ここ数年で急速に人気が高まっているオンライン学習サービスのひとつです。Udemyのサイトを参照すると、同サービスについて次のように説明されています。
~~Udemyは世界最大級のオンライン学習プラットフォームで、世界中の学びたい人と教えたい人をオンラインでつなぐサービスである。Udemyは米国Udemy,Inc.が運営するプラットフォームで日本ではベネッセが事業パートナーとして協業をしている。C2Cにより生まれる豊富で多彩な講座により個人の学習ニーズに応じた学びをみつけることができる。~~
2021年8月現在では、180の国で展開し65の言語に対応、法人顧客7000、受講生4000万人、受講登録が4億8000万となっています。2020年時点の情報では受講生が3000万人ほどとなっていたので、現在急拡大中と言えます。受講テーマも、Pythonなどリスキリングの主役となる開発系を筆頭に、ビジネススキル、財務会計、IT・ソフトウェア、マーケティング、写真、音楽、趣味・実用・ホビーなど幅広い領域を網羅しています。Udemyを活用し、個人で億を売り上げるオンラインスクール講師もいるそうです。
このように、リスキリングの市場は今後も拡大が見込まれますが、日本においてはそのことが特に当てはまるのではないかと考えられます。なぜなら、日本企業は従業員の解雇が難しいからです。各社はコロナ禍の環境下で、雇用調整助成金も活用しながら雇用維持に努めてきました。これについては、その必要性と意義が認められながらも、成長分野への人材の再配置が妨げられているという指摘も各方面で見られます。感染状況が収束に向かった後には、ウィズコロナの社会環境も踏まえた事業再編をより踏み込んで行うべき局面となります。
そして、再編後の事業領域に人材を投入する必要があるのですが、諸外国のように、従来の人材からその事業に適した人に単純に入れ替えるというわけにはいきません。日本社会の雇用慣行上、従来の人材に対して新たに必要となるスキルを身に着けさせたうえで配置転換する必要性が出てきます。個人の自発的な学びによるケースもあれば、企業の支援を受けて学びに取り組むケースもあるでしょう。これらによって発生するリスキリングのニーズはとても大きなものとなるのではないでしょうか。このリスキリングの多くが、オンラインで行われることが予想されます。この市場に注目し、自社や自身の知識や技能で、消費者に欲しいと思われるものをオンラインレッスンとして提供する形をつくれれば、法人も個人も大きなチャンスになり得ることでしょう。
<まとめ>
リスキリングのニーズの高まりが、オンラインレッスン市場拡大を加速させる。