「社員教育の大義」について~町工場の夫は准教授
「他人は変えられない。自分が変わる。」と言いながら、社員教育、社員教育などという。何か違和感があるのです。
なぜなら、「教育」は変化をもたらすものだからです。
「他人は変えられない。自分が変わる。」といいながら社員教育という矛盾。そして、教育しても成長しない。さらには、教育をするだけ無駄ではないかという虚無感。だから、自分が変わるというのか?
それよりも、「社員が思い通りにならない」ストレスから「自分が変わる」と言い聞かせながら、「思い通りに動くために教育をする」となれば、会社が矛盾した空間を生み出しているものです。
ここで、あることに気が付くかもしれません。「社員教育とは何か?」ということ。
社員教育を何のためにするのか?
まずは、「自社のため」「自社の売上のため」というところでしょうか。あとは、意識が高いと「自社の社員の幸せのため」というでしょうか。
何かにつけて、自分の会社のため、自分の会社の社員のためという言葉が出てきます。これはこれで結構なことです。そして、教育も自社のためというのも結構なことです。
ただ、次を見てみましょう。
「企業内教育」という言葉が出ています。そして、企業内教育は、学習する機会、選択肢であり、その成果が社会に適切に評価されているということが大切なことになりそうです。
社員教育は、「自社のため」ということだけでは、済まなそうですね。
生涯学習の理念
企業内教育、生涯学習の一つとして位置づけられます。そして、生涯学習の理念は、教育基本法3条に次のように書いてあります。
この規定から、企業内教育も「自己の人格を磨き」「豊かな人生を送り」「成果を適切に生かすことができる」ようにしていかなければならないということですね。
社員教育は「社長の思い通りにならない」からなんて、どうでもいいことですし、「自社のため」という要素も、第一義的なものではないとうことになりそうです。
生涯学習社会の背景
生涯学習社会では「自立」「協働」「創造」の3つの理念を実現に向けたものとされています(第2期教育振興基本計画)。
「自立」とは、一人一人が多様な個性・能力を伸ばし、充実した人生を主体的に切り開いていくことのできる生涯学習社会
「協働」とは、個人や社会の多様性を尊重し、それぞれの強みを生かして、ともに支え合い、高め合い社会に参画することのできる生涯学習社会
「創造」とは、自立・協働を通じて更なる新たな価値を創造していくことのできる生涯学習社会
と「第2期教育振興基本計画」に描かれています。
これらの実現は、今、日本における危機的状況を乗り越えていくための、今後の社会の方向性といて描いているものです(いつまでも1970年代やら80年代の話を見直し・検証もせずに鵜呑みにしていないだろうか?というのは、また別のお話でしょうか)。
危機的状況とは
第2期教育振興基本計画では、少子化・高齢化の進展、グローバル化の進展、雇用環境の変容(終身雇用・年功序列等の変容、企業内教育による人材育成機能の低下)、地域社会、家族の変容、格差の再生産・固定化、地球規模の課題への対応といったことが挙げられています。
これらの危機的状況に対して、生涯学習社会の実現を目指し、その学習の機会として「企業内教育」があるというものです。
残念なことに、企業内教育による人材育成機能の低下ということも、危機的状況とされています。
社員教育というものを、「自社のため」という視点だけでとらえてはいけないということに気が付いてほしいと思うのです。
おわりに
日本において、中小企業は99.7%を占めています。また、日本の従業者の約7割が中小企業で雇用されています。
もし、この7割の従業者に向けて、「生涯学習の実現」ができたならばと想像してみてはどうでしょうか?もちろん、その100%が実現できるとは限らないでしょう。
現在の求められる社員教育は、「規模が小さいから手がまわらない」「うちの社員に勉強しろと言ったって意味がない」とか、「仕事を通じて体で覚えていくもの」というレベルだけで語るものではないのです。
社員教育は、地域社会の課題、日本社会の課題に向けた取り組みであるということですね。
生涯学習という視点から、社員教育を考えていくと、どのようなフィールドを用意していくか?ということも考えやすくなるのではないでしょうか。
そして、学習の機会だけではなく、成果を出し適切に評価されるという仕組みも合わせて考えていくものです(具体的に言えば、学習のプログラムと評価制度の両輪をしっかりとです)。
一緒に、社員教育について考えてみませんか?
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?