ニムロッドを読んで
2018年芥川賞受賞作、ニムロッド(上田岳弘、講談社)を読んだ感想を書きます。
うーん、うん。
良いところはすごく良いけど、
嫌なところは嫌な作品でした。
多分評価が別れるのはそこだと思います。
ではまずいいところから。
なんといっても思想が良い。
うーん、なるほど。なるほど。
思想というかこの人の持つ根本の社会哲学や考え方はすごく良いと思う。
そこは多分ピカイチで、不気味だけど現実感があって興味を持てるので、最後まで読める。
ただ、(ここから始まる怒涛のただ)
以下、批判ばかりなので、苦手な方はバックでお願いします。
①そもそも、小説としてどうなんだ
考え方はすごく良いと思った。それは認める。
ただ、描写があまりにも浅すぎる。
そして、中2臭い。
書き方全てが中2臭いんだ。
とにかく臭い。
書きたい根本の思想以外は全部惰性で書いてる感じ。自己陶酔垂れ流し感が漂いすぎている。
②人間を全く書いていない。
考え方には納得できるが、
人の内面の描写があまりに浅すぎて、全く共感できない。
固有名詞とか、そういうものでリアリティを出そうとしてる感じはつたわるけど、それもなんというかやり方が臭すぎる。
多分、響かないっていう人が多いのはそういうことだろう。
登場人物みんな同じ性格をしている。
③そんなむりくりビットコインの話にしなくても良かったんじゃないか
これも浅い要因のひとつだ。別に無理にビットコインの話にしなくたって、この物語成り立っただろうと思う。
描きたいことの軸が二つあって、それを無理やりひとつに統合したかんじ。繋がってるからいいでしょ、っていう魂胆が透けて見える。
後これは超個人的な感覚だが、ビットコインという単語ださすぎないか?造語でもなんでも作った方が良かったろうに。
まあ、とかく根本の部分以外は浅いという変に矛盾してる作品でした。
でも、思想は面白いので、読む価値はあると思います。ただ、小説としてはどうなんだろう。
ここに書いてあること、ただ新書にすればいいのに、そんな感じ。
後ここからは個人的な自分の創作の話だけど、
今このニムロッドの批判で挙げた、人間を書けていないという点は、
実は自分が一時期めちゃくちゃ編集さんによく言われていたことです。内面の哲学は良いが、キャラに共感できない、とか。
それから少しは克服しましたが、それもなんとなくだったので、この作品を読んでより客観的に自分の状況がわかりました。
だからこそ、とても参考になりました。ありがとうございます。ははは……