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故郷の墓じまい、仏教の葬儀と供養の変遷|行政書士が解説

1.死者の供養の考え方
墓じまい・改葬を検討する際、「ご先祖様に申し訳ない」とか「世に反するのではないか」といった感情に悩まされる方は少なくありません。
特に、ご先祖様を大切に思う気持ちが強い方ほど、そのような葛藤を抱えやすいものです。
しかし、よく考えてみると、死者を供養するという行為は、私たちが思っている以上に、仏教という宗教と密接に結びついていることに気づかされます。

日本人の多くは、特定の宗教を信仰しているわけではありません。
しかし、葬儀や法事など、人生の節目となる儀式は、仏教式で行われることが一般的です。
これは、日本人の生活に仏教の文化が深く根付いていることを示しています。

2.神道の考え方
日本には、古来から神社における「神道」という宗教があります。
神道は、自然や祖先を神として崇拝する宗教で、日本人の生活や文化に大きな影響を与えてきました。

神道における死の概念は、仏教とは大きく異なります。
神道では、死は穢れたものとして扱われ、黄泉の国は汚い場所という世界観を持っています。
そのため、神道の葬儀では、死者を穢れとして扱い、速やかに埋葬したり、隔離したりする習慣がありました。

3.仏教の考え方
一方、仏教では、死後は極楽浄土に往生するという考え方が、平安時代末期から広まりました。
仏教では、死は苦しみからの解放であり、極楽浄土で安らかに過ごすことができると考えられています。

仏教が死者の供養を担うようになったのは、こうした浄土教信仰の普及が背景にあります。
浄土教では、阿弥陀仏を信仰することで、死後に極楽浄土に往生できると説かれています。
そのため、多くの人々が阿弥陀仏を信仰し、仏教の葬儀や法要を通じて、死者の供養を行うようになりました。

現在行われている仏教式葬儀は、曹洞宗が最初に考案したと言われています。
曹洞宗は禅宗の一派で、総本山は福井県にある永平寺です。
永平寺は、禅の修行道場であり、厳しい修行を通じて悟りを目指す僧侶たちが生活しています。

その禅の修行道場を維持運営するため、その資金として、密教も取り入れながら葬儀の方法を編み出していきました。
曹洞宗が考案した葬儀の方法は、死者を供養し、極楽浄土への往生を願うという仏教の教えに基づいています。

このやり方は、日本全国に広がり多くの信者を獲得することになりました。
曹洞宗の葬儀は、他の宗派にも伝わり、仏教で葬儀を行うことが普通になっていきました。

4.寺請制度の始まり
江戸時代初期には、幕府の制度により寺請制度(檀家制度)が始まりました。
これは、キリシタンでないことを証明するための制度で、檀家となった住民は、寺院に出生、死亡、結婚などを管理されるようになりました。

寺請制度は、江戸幕府がキリスト教を禁止し、仏教を奨励するために導入した制度です。檀家となった人々は、金銭などを提供するなど寺院の運営を支える義務がありました。

寺請制度の導入により、寺院は地域社会における重要な役割を担うようになりました。
寺院は、住民の戸籍管理や葬儀・法要の執行、教育など様々な活動を行っていました。

単に市町村役場の役割ではなく、檀家となった家がお寺に葬儀や法要を依頼するようになり、お寺イコール葬式仏教という形が作られました。

5.明治時代
しかし、江戸時代末期には、本来の宗教活動がおろそかになり汚職の温床になりました。寺院は、宗教的な修行や教えの普及を怠るようになりました。

そのため、明治4年(1871年)に明治政府による廃仏毀釈運動が起き、この檀家制度がなくなりかけました。
しかし、寺院の墓地にお墓がある関係もあり、すべて檀家制度が消滅することはなく、現在まで延々と続いています。

また、廃仏毀釈運動は、仏教信者の反発を招き、社会的な混乱を引き起こしました。
そのため、明治政府は、廃仏毀釈運動を途中で中止し、仏教と神道の共存を図る政策に転換したという複雑な歴史の背景があります。

6.まとめ
墓じまい・改葬を考えるにあたっては、このような歴史的背景を知っておくことが重要です。
墓じまい・改葬は、決してご先祖様をないがしろにするものではなく、時代の変化に合わせて供養の形を変えるための選択肢の一つとして捉えることができます。

ご先祖様を大切に思う気持ちは、墓じまい・改葬を行うことと矛盾するものではありません。
むしろ、墓じまい・改葬を通じて、ご先祖様への感謝の気持ちを新たにし、未来へと繋ぐことができるのではないでしょうか。

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〇 お問い合わせ
行政書士藤井等事務所(所在地:岩手県北上市)
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