【詩】たどう

向かい側の生活
そのアウトラインを辿ってみた

右足に履いたレザーブーツは
マスタードカラーの紐がほどけて
でんでん太鼓の両手みたいに自由気まま
左足に履いたお勝手サンダルは靴裏の内側だけ削れてる

揃った靴は全部誰かにあげてしまったから
残ってる靴は全部バラバラ
思うように歩けない

それでも
路肩にたなびくハルジオンや
真っ直ぐに幹を伸ばす楠の木の梢を
しっかりとみられるから
私は歩ける 辿っていける

多分20mくらい先には
地割れしたアスファルトが
パッキリと道を断っているんだけど
脇の道を遠回りすればいい

美しい新緑の野原の
誰も知らない小径だ

夜になったら
街灯のランプが粉々に割れていて
懐中電灯もベッドの上に置きっぱなしでも
道に沿い流るる清流の、蛍の向かう方へ
ついていけばいい

私ならかならず辿っていける

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