タイムカプセル
9歳の時である。
タイムカプセルに憧れて人生で初めて実行した。
幼稚園からの幼馴染とあれこれ自分の大事なものを、
ガチャガチャの小さな小さなカプセルに詰め込んだ。
特に、タイムカプセルといえば、
私たちにとって一番大事だったのは未来の自分と未来のお互いに向けたお手紙。
大して本気で思ってもないこと、
ずっと親友!とか
優しいところが好き!とか
適当に、でも時間をかけて書き連ねていった。
埋める、といっても
信頼できる場所じゃなきゃいけない。
裏の空き地はアパートでも建ってしまいそうだったし、
公園じゃ犬に掘られてしまいそう。
たどり着いたのは結局うちの庭の隅だった。
龍のひげが生い茂ってる石造りの花壇。
掘ったらおばあちゃんに怒られそうだったのと、
深く掘るのは面倒だから
草の中に隠しいれただけだった。
幼い私たちには、
大人と違って時間が長く感じる。
膨大な時間は待ちきれない。
だから私たちのタイムカプセルの開封予定は一年後。
タイムカプセルが何かの拍子に無くなってないか、
おばあちゃんにバレてないか、
確認するために友人とふたりで週に一回はその存在を確かめにいっていた。
そんなこともそのうちに忘れてしまって、今やっと思い出した。
開封を待っていた数カ月よりも、
存在を忘れ他の人生を全うしていたこの時間の方が
今ではとっても短く感じてしまう。
私たちのカプセルはもうきっとないんだろうな。
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