魔法の料理~君から君へ~(BUMP OF CHICKEN)

今年上半期のJポップでは「ありがとう」(いきものがかり)と並ぶお気に入りナンバー。僕のブログを読んでくれてる人のなかには、この曲、さらには、彼らの世界を好んでいそうな人が、けっこういるような気もする。

これが傑作な理由。詞についていえば、それは、人間(特に男性)の生の連続性を、子供と大人とが、可逆なものとして描ききったところにある。
通常、子供と大人は、非可逆なものとしてとらえられがちで、それゆえ、子供の気持ちを歌おうとしても、それは、大人になった者からのノスタルジーになりがちだが、ここでは、主格が「子供の自分」と「大人の自分」を行ったり来たりすることで、過去を振り返りながら未来を夢見るという、両極性が表現されている。さらに「ヒゲじい」の死と、おばあちゃんの認知症いうエピソードを盛り込み、そうした肉体的な生老病死に加えて、思い出もまた、うつろいゆくものだと、指し示す。しかし、思い出が死ぬことはなく、心の中で何度でも再生されるのだ。

♪これからなくす宝物が くれたものが今 宝物

子供時代のおもちゃも遊び仲間も、やがて失われるけど、そこから得たものが、大人としての財産になる。こんな「魔法の言葉」を紡ぎだす藤原基央は、極端に痩せた体型でも知られるが、子供と大人を行き来できる能力と、その身体性とは、何らかの関係があるのかもしれない。


(初出「痩せ姫の光と影」2010年5月)


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