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囚われの”ドローン”奪還作戦②

<前回のあらすじ>
ルワンダ入国時に没収された”ドローン”を奪還すべく、空港の「ドローン収容所」にアポ無し突撃訪問をかました僕は、実に約11ヶ月ぶりに相棒のドローンとの再会を果たした。しかし、警備員のおっちゃんから「これが君のドローンであることを証明しろ」という無慈悲の咆哮を浴びせられ、一時は「永遠の別れ」を覚悟したものの、僕はある一つの証明方法を思い付いたのだった――

前回の記事を読んでいない人は、まずはこちらを御覧ください!


200億%空港側のせいだが、約11ヶ月前に書いた「預かり証」が、ただの紙切れと化してしまった。

そんな万事休すな状況の中、「こんな場所行ったなぁ…あんな写真撮ったなぁ…」と感傷に浸っていると、僕はあることを思い出した。

ルワンダに来る直前、僕は何度か空撮をしている…!

出国前の日本にいる間、僕は暇だった飛行・撮影技能向上のため、ドローンの機能の確認や操作の練習をしていたのだ。

そして、その時の撮影データを収めたminiSDカードは、没収された時からドローンの中に入れたままになっていた。

そう。
つまり、目の前のドローンに挿入されているminiSDカード内のデータを確認すれば、僕が撮影した写真や動画が保存されており、それが動かぬ証拠となるわけだ。

僕が空撮した日本の美しい景色(地元の森や夕日、街並みなど)の写真を見れば、おっちゃんも納得せざるを得ないだろう。

こんなのとか(イメージ①)
こんなのとか(イメージ②)
こんなのとか(イメージ③)


早速、おっちゃんにその旨を申告した。

すると、おっちゃんは「じゃあデータを見せてみろ」と言い、今はまだ誰の物か分からないドローンから、miniSDカードを抜き取る許可をくれた。

取り出したminiSDカードをパソコンに繋ぎ、フォルダを開く。

すると、フォルダ内の写真や動画のデータがずらーっと「リスト」(ファイル名や容量などの情報が文字で一覧表示され、画像自体は見えない)形式で表示された。

どんな写真かはこの時点では分からないが、データの最終保存日も僕がドローンを使ったであろう時期と一致しており、しっかり辻褄が合っている。

よし、間違いないっ!

一時は奪還を諦めかけたものの、ここに来て逆転サヨナラホームラン完全勝利を確信した僕は、余裕の表情を浮かべ、リストに並んでいるうちの1つの画像ファイルをダブルクリックし、写真を表示させた――


この時パソコン画面上に表示されたのは、意外な写真だった。

なんとそこには、夕日や街並みなどの美しい景色ではなく、


パンツ一丁の僕が写っていた。



画像はイメージです

<補足>
「画像はイメージです」とか書いておきながら、この画像は「パンツ一丁である」という点以外、ほぼ間違っている。実際の写真は、こんなに仕上がった身体してないし、街を見下ろすような小高い丘の上でキメ散らかしてないし、履いているパンツは白ブリーフでもない。


もう一度書いておくが、そこに写っていたのは


パンツ一丁の自分だった。


僕の名誉のためにも先に弁解しておくが、僕は決して自撮りが趣味の「ジドラー(自撮ラー)」ではない。

ましてや、パンツ一丁という特殊な状況における自撮りが大好きな「変態的ジドラー(自撮ラー)」などでは神に誓ってない。

では、コレは何の写真なのかというと

出国前の真夏のクソ暑い日に家の中でドローンを飛ばしていて、特に被写体となるような物が見つからなかったため、とりあえず自分自身を真上から撮ってみたところ、たまたまパンツ一丁だったという写真だ。

家の中という狭い空間で、壁や天井にぶつかることなくドローンを自在に動かすという小手先の操作テクニックの練習およびカメラの角度調整や画角、ズーム性能などの確認という、至高の目的のために撮った一枚だ。


しかし、そんな言い訳は見苦し過ぎてできない。

そして、パソコンの画面いっぱいにパンツ一丁の僕の姿が映し出されているという事実は、もはや覆すことができない。

僕は意を決し、取り乱すことなくおっちゃんに言った。

画像はイメージです


ここにパンツ一丁の男が写ってるだろ?


よく見てくれ、ほら、この男は僕だろ!?


どうだ、これこそ動かぬ証拠だろ!!?



真顔だった。

僕は、真顔だった。

そして

おっちゃんも、真顔だった。

なんとも言えない、微妙な空気が流れた。

数秒後、おっちゃんが静かに口を開いた。


…Yego.

(キニアルワンダ語で”Yes”の意)


…よし。

とりあえず

証☆明☆完☆了


いやぁ

まさか真顔で自分のパンイチ姿を晒すことで相手を納得させるという奇跡をこの身をもって体験できる日が来るとは思ってもみなかったが、一応事態はこれで丸く収まった。


こうして、僕は無事目の前のドローンが自分の物であると証明することができ、ドローンを返してもらうことができた。


…と、
思ったのだが

おっちゃんが僕にドローンを手渡しながら、何気なくこんなことを聞いてきた。

じゃあ君は今から日本に帰るのかい?

僕は、正直に

いや、まだ1年以上ルワンダにいるよ。
今日は相棒のドローンを迎えに来ただけ。

と答えた。

すると、おっちゃんは急に眉間にしわを寄せ、ドローンを差し出していた手をサッと引っ込めて、言った。

じゃあダメ〜。

じゃあダメ〜。


はぁ!?


おっちゃんによると、出国するんだったら今この場で返してやるけど、まだルワンダに滞在するなら、ちゃんと許可を取らなきゃダメ、とのこと。

…クソッ

さっきの質問にクソ真面目に答えないで、適当に「Yego、Yego」とか言っておけば、多分返してもらえてた。

チクショウ!
ぬかった!

ちなみに、空港に入る時は「持ち物検査」をされたが、出る時は素通りだったので、多分やろうと思えば本当にこの方法で連れ帰ることができると思う。

とはいえ、こんな法の抜け道みたいな方法で犯罪ギリギリチョップを攻めるより、ちゃんと正規の手続きを経て堂々と連れ帰った方が、精神衛生上良い。

というか、人として良い。

今回はあくまで「アポ無し突撃訪問」なので、もともと簡単に連れ帰れるとは思ってなかったし。

それに、おっちゃんから「ドローン奪還作戦」を次の段階に進めるヒントも教えてもらえた。

それは、「お問い合わせセンター」的な部署のメールアドレスだ。

おっちゃんによると、

国内でドローンを使用する許可をもらうためには、ここにメールすれば良い

とのことだったので、帰って早速メールを送信してみた。


…が、1週間以上経った今も音沙汰はない

果たして、ちゃんと返信は来るのだろうか?

てゆーか、そもそもちゃんとメールは届いているのだろうか…?

今はとりあえず「待つ」ことしかできないが、しばらく経っても返信がなければ、頃合いを見て第2回突撃訪問をかましてこようと思う。

(多分そうなる可能性が9割)




今回、約11ヶ月ぶりに面会を果たし、無事を確認することはできたものの、結局ドローンは未だ囚われの身のままである…。

今後作戦に何か進展があれば、後日「囚われの”ドローン”奪還作戦③」として、記事にまとめたい(いつになるかは分からない)。

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