【紹介】Marcus Comes Out Online
こんにちは。itch.ioで公開されているゲーム、Marcus Comes Out Onlineを紹介します。今回は日本語化はしておらず、紹介のみとなります。
基本情報
ゲームについて
本作は、以前紹介・日本語化した『ペイトンの術後訪問記』(紹介記事)と同じ作者の方の作品です。内容にもつながりがあり時系列的には前日譚に当たりますが、前作のプレイが必須というわけではありません。
前作はトランス男性のマーカスが胸部の性別適合手術を受け、自宅で療養中に同じくトランス男性のペイトンが訪問、親交を深めるという内容でした。
今回はそのマーカスが語り手となって、その手術からしばらく前にオンライン上で自分がトランス男性であるとカミングアウトした日のことが描かれます。
マーカスはカミングアウトしたり、ほかにも性別移行に伴ういろいろな手続きに集中するために街に出てしばらく一人で暮らすことにしています。その作業の第一歩として、レッグブック(作中のフェイスブック的なSNS)にカミングアウト投稿をするところから始まります。
以降、投稿に伴っていろいろな人からメッセージを受け取ったり、手続きに必要な書類を用意したり、といったことをこなしていきます。
マーカスはあらかじめ理解してくれなさそうな人のことはブロックしたりしていたので(この作業にもリアルさを感じます)、極端に敵対的なコミュニケーションが描かれるわけではありません。それでも、悪気はないんだろうけれども微妙にしんどい反応などが積みあがっていき、個人的にはけっこうつらいものがありました(これはとくに私がオンラインでのやりとりが苦手だからかもしれませんが)。いわゆるマイクロアグレッションにあたるものが具体的に描かれていると言えるかもしれません。
また、ストレスになるのは他人とのやり取りだけでなく、行政上の手続きが遅々として進まないもどかしさもあります。氏名の変更や性別移行が制度上可能になることはもちろん大きいですが、そのために必要な手続きが大きな負担になり得るというのが伝わってきます。
もちろん、一息つける嬉しい体験も描かれてはいるのですが、それもまた本当にささいなことで、そういう瑣末なことに救われる(救われてしまう)感触もリアルです。
前作でもそうでしたが、本作の魅力はトランスジェンダーとしての生活上の困難や喜びが、抽象的な議論ではこぼれおちてしまいがちな具体的な手触りとともに描かれていることにあると思います。比較的短い作品ですので、ぜひ触れてみてください。
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