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『星の王子さま』で知られる、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの「Le Petit Prince」の新訳。逐語訳や直訳にこだわらず「今のこどもや若者にもすっと通じることばで」新…
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2020年8月の記事一覧
「ちっちゃな王子さま」電子書籍発売しました!
noteで連載していた「Le Petit Prince」のオリジナルの翻訳、「ちっちゃな王子さま」が、電子書籍で販売中です! Kindleの電子書籍は、タブレットや専用端末がなくても、みんなが使っているスマホでかんたんに読めます。
オリジナル訳の出版は、僕のライフワークとさえ考えていたことで、本当に感慨深い……。一人でも多くの人に、読んでもらいたいです!頼む!
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.16
ⅩⅩⅥ
井戸のそばに、古い石の壁のあとがあった。
次の日の夕方、ぼくがいそいで修理からもどってくると、ぼくのちっちゃな王子さまがその壁の上に座って足をぶらぶらさせているのが遠くから見えた。そして砂漠の風に乗って、あの子のしゃべる声が聞こえてきた。
「ねぇ、覚えてないの? 全然、ここじゃなかったよ!」
どうやらあの子はだれかと話しているみたいだった。
「いや、そう……日にちはたしかに今日なんだ
ちっちゃな王子さま(超意訳版『星の王子さま』) vol.17(最終回)
ⅩⅩⅦ そうして、今。
あのときから、もう6年になるんだね……。ぼくはこの話を、今までだれにも話したことがなかったんだよ。
ぼくは修理した飛行機で家に帰ることができた。再会した同僚たちは、ぼくが生きて帰ったことをとてもよろこんでくれたよ。ぼくは、あの子のことでとても哀しかったけど、彼らにはこう言った。
「ぼくは疲れたよ……」
今では、哀しみは少しはやわらいでる。『少しは』ってのはつまり……す