日本全国不動産掘り出し情報⑨
このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。
今回は、「日本全国不動産掘り出し情報」。
知る人ぞ知る全国各地の不動産情報を(株)遊都総研が解説するコーナーです。『月刊不動産流通2019年9月号』より、「宮古島市」「横須賀市」を紹介します。
★宮古島市
第2の空港が開港。開発ラッシュの余波で
賃貸物件が「異例」の品薄に
2019年3月、全国チェーンに加盟する宮古島市の不動産会社が、HP上で異例とも言える「告知」を掲載した。宮古島市(宮古島)では賃貸物件が極端に不足しており、新規の申し込みに対応できないという。現在は、この告知頁は削除されているが、これは同市の特殊な不動産事情を物語っている。
同市は、6つの島(宮古島、池間島、来間島、伊良部島、下地島、大神島)で構成する自治体。人口は約5万5,000人で、沖縄本島を除く県内の離島では、石垣市と並ぶ人口の多い島だ。ただ、比較的早い時期から観光開発が進んだ石垣島に比べ、観光流動は少なく、のどかな雰囲気が漂っていた。以前から東京の大手資本によるリゾートホテルも立地していたが、外資を含め、大規模なリゾート施設が進出し始めたのは近年のことである。
こうした中、19年3月に同市2つ目の空港としてオープンした下地島空港は、こうした流れを加速させた。同空港はもともと、航空会社の訓練用の飛行場として設置されたものだが、一般の旅客路線が就航できる空港にリニューアル、東京の大手不動産会社傘下の事業会社が運営を受託している。現在、同空港にはLCCなどが就航、本土からだけでなく、アジア圏からのインバウンドも見込む。
同空港がある下地島は、宮古島とは橋でつながっており、既存の宮古空港に比べ、立地面でのハンデはあまりない。同市では、こうしたリゾート開発需要の高まりに伴い、建設・サービス関連従事者などの住宅需要が急増、一部では家賃の高騰も生じていた。ただ、こうした旺盛な住宅需要に着目した本土資本なども参入。一時的な建設ラッシュに伴う需給の逼迫については徐々に緩和の方向にあるという。
今後は継続的な需要が見込まれるサービス業従事者等に向けた賃貸住宅の需給がどのように推移していくのかが、注目されるところだろう。
★横須賀市
軍都・ベッドタウンとして発展するも
近年は人口減少。空き家に芸術家を誘致
神奈川県南東部、東京湾と相模湾の間に突き出し三浦半島中部に位置する横須賀市。明治期以降は国防の要衝とされ、昭和初期には海軍の一大拠点となり、軍事上の理由などから比較的早い段階から周辺町村を編入、広域都市として発展してきた。軍都としてのまちの性格は、現在の海上自衛隊や米軍基地に引き継がれている。
一方、横浜まで約25㎞、東京都心まで約55㎞という近さもあり、戦後はベッドタウンとしての開発も進み、人口が急増した。しかし、1990年の43万人をピークに減少に転じ、近年は40万人を割り込むなど、減少傾向が加速している。近年人口40万人を突破した隣接の藤沢市とは対照的だ。同市の人口減少の大きな要因は、その独特の地形にある。同市の市域はもともとほぼ全域が山勝ちで、可住地は限られた平坦地に集中していた。市内には、高台を造成し、高級住宅街を形成している一画もあるが、比較的平坦地の多い藤沢市に比べ、そもそも市街地の面的な拡大には限界があったという。近年は高齢化の進行により、傾斜地を開発した住宅地が敬遠されるようになり、特に「谷戸」と呼ばれる細い行き止まりの谷では、空き家が目立つようになった。また、海岸沿いの平坦地も一部、津波浸水想定区域に指定されるなど、必ずしも人気は芳しくない。
一方、京急本線「横須賀中央」駅近くの繁華街は、一見すると、首都圏郊外というよりも、地方中核都市が持つにぎわいが感じられる。近年、この地区にはタワーマンションが複数建てられたが、購入者層の多くは、横浜・東京方面からの流入ではなく、市内からの住み替えだという。
こうした中、同市では昨年より、「谷戸」の空き家に芸術家を誘致する試みを開始した。今年は新たに「谷戸」で空き家活性化のアイディア募集を行なう。こうした取り組みの成果が現れるのは、これからと言ったところだろう。
※PDFファイルをダウンロードいただくと、実際の誌面をご確認いただけます
※(株)不動産流通研究所の著作物です。二次利用、無断転載はご遠慮ください
地場で活躍する不動産会社から大手までさまざまな企業を取材し、不動産業界の最新のトレンドを紹介する業界誌『月刊不動産流通』
★★ 購読お申込みもこちらから ↓ ★★