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スウェーデン発のユニコーン BNPLのKlarna(瑞)

今日は、スウェーデンのBNPL(後払い)サービスKlarnaを紹介します。BNPLは、Buy Now Pay Later(今購入して、後で払う)の略で、主にC向けの通信販売やECでの決済手段として利用されるところから成長してきた決済サービスです。日本では、2002年からNP後払いを提供していたネットプロテクションズが、類似サービスの事業者になります。 

Klarnaとは?

Klarnaは、EC向けに後払いサービスを提供する企業で、2005年にスウェーデンのストックホルムで設立されました。
直近の時価総額は$6.7Bまで下がっていますが、2021年6月の時価総額は$45Bと、デカコーンでした。

Klarnaの後払いサービスについて

Klarnaの後払いは3つのプランに分かれます。

4回払いプラン
利子を払うことなく4回に決済を分割して払うことが可能になります。決済は登録するデビット・クレジットカードのいずれかより2週間ごとに自動的に引き落とされます。

30日以内後払いプラン
商品到着から30日以内に支払うことで、無利子で購入することが可能です。購入に際しクレジットカード番号なども求められることがないので、多くの情報を提供せずともシームレスな商品購入体験を味わえる点にあります。また、後払い時にクレジットカードでの支払いも選択可能なため、実質的なキャッシュの支払いは商品購入の2か月先にできてしまいます。

即時ファイナンス(貸付)プラン
購入代金を貸付し、6カ月から36カ月の分割返済を求めるプランです。ユーザーは利用できるECサイトで、配達先に使っている住所と電話番号などの諸情報を入力さえすれば即時でクレジット与信枠を利用することが可能となります。6カ月までのプランであれば、無利子です。

Klarnaを導入する店舗側のメリットについて

Klarnaは、基本的にユーザー側に対しては無利子で後払いサービスを提供しますので、販売店舗側から決済金額に対して一定割合の手数料を頂戴するモデルです。(いわゆるクレジットカードとマネタイズモデルは同じです。)
販売店舗側のメリットについてですが、まず即日入金が挙げられます。クレジットカードでの支払いは販売店舗側にとっては手数料も取られる上に、実際の入金日も遅くなるため、お客様の利便性を考えると必要ですが、キャッシュフローの観点では苦々しい決済手段でした。
加えてユーザーに対してリスクフリーな分割払い・後払いオプションを提供できることはユーザーの購入を後押しする上でもちろんプラスに働きます。もちろん、クレジットカードを持っている人からすると、そこまで支払い方法に違いはないのですが、若者を中心にクレジットカードを持てない人々がたくさんいて、彼らがECで決済をする上で欠かせないサービスとなっています。クレジットカード大国のアメリカでも、消費者金融保護局(CFPB)調べで推定4500万人のアメリカ人(成人の5名に1名)がクレジットカードを持てない状況だそうです。少なくはない規模と言えるでしょう。

話を戻しますと、Klarnaの手数料は月額固定の利用料+決済時の手数料で構成されており、通常のクレジット決済より低価格に抑えているとされています。日本のBNPL事業者のネットプロテクションズも同様のモデル(月額利用料+手数料)で手数料率が2.9%~5.0%なので、それと同程度もしくは少し低いくらいの水準かと思われます。

また、Klarnaのアクティブユーザーは約1.5億人で、加盟店舗数は40万店舗以上、1日の取引件数は200万件だそうです。日本のネットプロテクションズが、2021年3月期の数値ですが、加盟店舗数7.6万店舗、年間取引件数が6,600万件ですので、いかに大規模な決済サービスかが伝わるかと思います。
ちなみに、Klarnaの営業収益は、2020年時点で$1Bで、ネットプロテクションズは2021年3月期で180億円です。一概には比較できませんが、取引件数で10倍、収益規模で7倍程度の差がありそうです。

Klarnaのマーケティング

Klarnaのマーケティング戦略は非常にシンプルです。消費者向けのサービス認知を上げて利用者を増やすと同時に、アライアンス強化と低い手数料率で加盟店を一気に開拓するという超アグレッシブなマーケティング投資を行なっています。日本だとQRコード決済のPayPayのマーケティングをイメージしていただけるとわかりやすいかと思います。
CMでは、2019年に実施したアメリカ人ラッパーSnoop Doggを起用したものが有名です。(このCM公開時に、Snoop DoggがKlarnaに出資したことも明らかになった。)このCM効果でKlarnaのアプリはGoogle Playのトレンド入り、1600万人の新規加入者を獲得し、世界中の提携先数が前年比140%の増加をもたらしたと言われています。
アライアンスでは、2021年に発表されたStripeとの提携が印象的です。Stripeは、Klarnaを消費者向け決済の「優先支払いパートナー」に指定し、消費者が買い物でKlarnaを利用すると、Klarnaが支払いをいったん立替し、残りの決済処理をStripeが請け負うという座組みです。Klarna側もアメリカとカナダにおける取引の約90%をStripe経由にする計画をしています。

Klarnaの今後の戦略について

ここまでKlarnaの凄さについて説明してきましたが、最近は逆風が吹いています。ウクライナ情勢、BNPLの競争激化などもあり成長スピードが減速しており、アグレッシブな先行投資が裏目に出ているようです。(2021年は第1四半期だけで300億円以上の赤字を出しています)また、時価総額も$45Bから$6.7Bと7分の1くらいになっています。これに伴い、10%のレイオフも実施されています。
また、BNPLが若者の過剰支出を助長していると社会問題になりつつあり、BNPLを優先的に支払い手段として案内することを禁止したり、BNPLのテレビCMを禁止する国も出てきています。

Marketing Solutions

KlarnaのBNPL以外の取り組みとして、圧倒的なアクティブユーザー数を活かした形でのマーケティング支援が挙げられます。

わかりやすいところで言うと、Klarnaアプリ内での広告掲載やKlarnaユーザーへのCRMキャンペーンなどです。
また、仮想ショッピング(スマホのビデオ通話機能で実店舗での買い物に近い体験をするなど)のためのソリューション提供などもはじめたようです。

Klarna Kosma

もう一つの取り組みとして、KosmaというオープンバンキングAPIの提供です。24 か国の 15,000 を超える銀行との接続を提供しています。オープンバンキングとは、APIを介して銀行側の顧客データ(入出金情報など)を活用できるようにする取り組みです。家計簿アプリやクラウド会計ソフトで銀行APIによって記帳データを同期しているのがわかりやすい例です。

BNPLだけでは、決済の大部分をおさえることは難しそうかつ競争激化で利幅も薄くなると考えられるので、BNPL以外の取引データの把握やBNPLの手数料収入以外のマネタイズに向けて上記のような取り組みをしているのではないかと思います。

SmartApproachもスタートアップ向けに売上連動型ファイナンスという形で後払いを提供しているサービスという意味で、BNPL事業者の動きは参考にしています。また、今後どのような成長戦略を描いていくのかもとても興味深いです。

SmartApproachとは?

よいサービス、製品が、きちんと世に広まる社会の実現を目指して、これからサービス、製品を広めていくスタートアップ(挑戦者)のマーケティングとその資金をサポートするSaaSプロダクトです。

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片山 幹健 |Social Bank
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