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和紙いろいろ 和紙と版画について

和紙と版画の関係

和紙は古くから版画によく使われています。
日本ではお馴染みの浮世絵には楮和紙が使われていましたし、ヨーロッパでも銅版画のために雁皮紙が使われることもありました。
今回は、版画に使われる和紙について書いていきたいと思います。


版画いろいろ

版画にもいろいろ種類があり、主に凸版、凹版、平版、孔版の4種類に分けられます。

凸版は木版画やリノリウム版画のように、インクを版の出っ張った部分に載せて紙に転写する方法です。消しゴムはんこなどもこの要領ですね。

凹版は、ドライポイント、メゾチント、エッチングなどに代表される銅版画の要領で、版の削った部分にインクを詰めて印刷する技術です。

平版はリトグラフのように、平らな版にインクが乗る部分と乗らない部分を作り出して印刷する技術、孔版はシルクスクリーンのように細かい穴を通してインクを紙や布にのせる技術です。

もちろん和紙もいろいろ

当店で扱っている和紙をざっと分類すると、楮紙、雁皮紙、三椏(みつまた)紙、ブレンド和紙があります。

楮紙は繊維が長く、複雑に絡み合っているので和紙の中では特に破れにくく、強いです。

雁皮紙はとても繊細で短めの繊維が絡み合ってできている和紙です。何をしても滲まない…というぐらい滲みにくい紙で、艶のある紙肌です。

三椏紙は雁皮紙に少し似ており、とても滲みにくい紙です。紙肌は少し赤みがかっており、発色が独特で面白い和紙です。お札にも使われていますね。

ブレンド和紙は楮と雁皮など、複数の原料を一定の割合で漉いている和紙です。各原料の特徴が混ざった紙が出来上がります。

このほか石灰煮や木灰煮、ソーダ灰煮など、原料の処理方法によっても発色や描き味、滲み方が変わるのが和紙の面白いところです。

作品によって紙を変える事の大切さ


作品の雰囲気や作り方に合わせて、紙を変えることは非常に重要です。

例えば、色を何度も重ねたり圧力をかけて刷ったりすることもある凸版画には、丈夫な紙が適しているため、浮世絵等には和紙の中で一番強く、また発色も鮮やかな楮100%の和紙が使われていました。

これに引き換え、より繊細な表現をする銅版画などの凹版画には、繊維が細かくて滲みにくい雁皮紙がとてもよく使われます。

こういった基本を踏まえて紙を選ぶことは大前提ですが、楮紙でも産地や紙の厚さによって発色や滲みが変わりますし、三椏紙も雁皮紙に負けないぐらい繊細な表現を写し取れます。

作品は紙に左右されるところが本当に大きいと思うので、基本を踏まえながら、版画にもいろいろな紙を使ってみてください。
西洋の版画をされる方は、洋紙を選ばれる方も多いですが、和紙は薄くても強く、発色なども洋紙とは異なるので、表現に行き詰まっているという時には、和紙も選択肢に入れていただけると嬉しいな、と思います。

パルプ入りの紙には少し注意が必要

パルプ入りの紙が絶対に悪いというわけではないのですが、洋紙も和紙もパルプが入ると強度、発色、保存性の面で粗悪なものが多いのも事実です。
和紙でパルプの入っているものは、和紙の原料の処理にも水酸化ナトリウムなどの強力な薬品を使っていることも多いです。そのため、せっかくの和紙の繊維も傷んでしまっている上にパルプを混ぜるので、強度も落ち、水に弱く、黄変もしやすい悲しい紙質のものが出来上がります。
特に銅版画では紙を水に浸す必要があるので、要注意です。

もし和紙を使っていてすぐに破れる、時間が経つと作品の色が変わってしまうなどのお悩みがある方は、原料を一度確認してみてください。

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