和食人、餃子を語る。 (其の壹十壹) 菜芯と車海老。
日本人の私がそれまでの仕事のつながりから、中国の常州という街に
小さな会社と1軒の居酒屋を作って暮らしていたという昔話。
ここでは、その外伝。
私の中国での餃子に対する学びと、”餃子愛”をお伝えしたい。
近く、遠い国、中国に関わった20年。
私の風変わりな経歴などは、プロフィール記事(長篇)をご覧ください。
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(餃子、其の壹十壹) ver. サイシンと車海老。 - 2023.3 -
これが2023年、私の中国常州での最後の餃子作りとなる。
2022年12月をもって居酒屋風天の営業を終了し、明けの1月からは一人、会社の清算手続きと、店舗の整理と譲渡、帰国の準備に入っている。
とは言っても、審査などの待ち時間はあるので、旅をしたり、家にいる間は店の冷凍庫を空にする為に連日やっつけ料理に入るわけで。
具材の特大の車海老、写真を見るに美しくない。店を締めて3ヶ月通常の冷凍庫に取り置いたのでこのような見た目に(営業用の冷凍庫でなく、超低温の冷凍ストッカー:零下20〜40度に移していれば変化しない)。
廃業決定後に気が回らなかった。しかし、自分メシ用としては問題なく、贅沢な餃子を作ることに。
餃子の記事であると同時に、私の中国撤収前の一場面としての記録でもあるので、あえて海老の写真を含めた。
”菜芯 cai xin ツァイシン”
日本では漢字そのままの読みでサイシン。華東華南地区、上海、浙江省、江蘇省あたりで採れるアブラナ科の中国野菜。ナバナによく似ている。
私は以前、日本から上海の浦東空港に着陸する飛行機から湾岸一帯の広大な土地が黄色い花で埋め尽くされている光景を見たことがある。 壮大である。
サイシンは通年栽培はされているが、気温が高過ぎても、低過ぎても育ちが悪いらしく、この3月の時期の茎の大きく育っていないものが私は一番美味しい。
様々な野菜が通年、市場に出回っているが、4月には十分に気温が上がり過ぎて、大ぶり、大味な野菜が増えるように思う。
ナバナに似ているが、調理法も同じ扱いでおいしく食べれる。お浸し、からし和え、炒め、天ぷらも。
写真のような小ぶりのものは、あまり多く見かけない。時期を逃すと、市場中が20cm以上の茎、アスパラ並みに育ったような黄色い花付きになる。やはり3月もの、小ぶりな若いサイシンが甘くて” 嫩 nen ヌン”=”やわらか”である。車海老の風味と相まって良い餃子の出来上がり。
” 嫩 nen ヌン "という単語について
” 嫩 "という言葉、中国では料理を食した際に食感表現として頻出するので少し寄り道して紹介したい。
” 嫩 "という文字、日本ではあまり使われていないが調べたら、
音読み= ドン、ノン。 訓読み= 若(い)。 意味= 若い、やわらかい。
意味に違いはない。 嫩芽、嫩葉… なんか文学的表現に感じる。
対義語としては、” 老 lao ラオ "=”硬い” を使う。使い分けは、
( 嫩 ) 赤ちゃんの肌、 絹ごし豆腐、 ミディアムレアの肉
( 老 )私の肌、 木綿豆腐、 ベリーウェルダンの肉
” 硬 ying イン"、" 軟 ruan ルァン”の表現も普通に使われている。
どちらの表現を使っても意味は通じるが、特に料理、食事の機会では
嫩 (ヌン)、老 (ラオ)表現が多いように思う。
これは、料理、動物、植物 、有機物 🔜 嫩(ヌン) ー 老(ラオ)
工業製品、無機物 🔜. 軟(ルァン)ー 硬(イン)
というジャンル基準よりも、水分量を基準とした言葉の表現ではないかと、私は捉えている。食べ物でも、水分の少ないやわらかなもの、例えば” 綿菓子 "なんかは水が無いからきっと " 軟 ルァン”というはずだ。
まず中華料理屋で、
『めっちゃ、柔らかくてジューシーや。』よりも、『好嫩!ハオヌン!』、
ナイトクラブで中国の女の子に出会ったら、手をとり、『好嫩!ハオヌン!』
(好ーハオは強調表現)で。日本でも使える場面は多いハズ。
餃子からまた脱線気味で、セクハラめいた発言が出る前に今回も終了。。