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【料理の旅人 再現中華1】 红烧鲈鱼 hong shao lu yu / スズキの紅焼

【料理の旅人ー再現中華ー】
2023年3月、既に風天を閉め、会社の清算、廃業申請の認可待ち。
帰国寸前に20年間に及んだ中国との関わり、生活の集大成。
ネガティブな問題の蓄積、結果として離れる中国だが、無駄にせずポジティブな経験とすべく、ギリギリまで中国旅をして郷土中華料理に親しみ、中国の素材を使った料理、日頃距離を置いた( 日本食を扱う仕事の為 )中華の技法を独自に学ぼうと試みた。
仕事と違う側面。日本人料理人による、中華への取り組みを記事にする。
日本人的なアレンジは多少あるが、食べて舌から学んだ料理を再現したもの。
旅の料理人としてのアーカイブ。

再現中華ー寄稿に際してのコメント


スズキのホンシャオ                2023.3

養殖物のスズキ

海鲈鱼 hai lu yu ハイルーユュ” 。
淡水魚の鲈鱼ルーユュ もいるので、日本人にとっての”スズキ”は中国でこのように呼ばれる。養殖物だが、近所の菜場ツァイチャン で氷鮮のモノなら日常的、活けにも時折出会う。

30cm強ぐらいの大きさが出回っている、日本なら出世魚で、” セイゴ " と呼ばれるサイズ ( 60cmオーバーが鱸となる。ここでは広義のスズキ )だ。

未発達の鰭であったり、自然なものとはやはり姿が違う。
養殖物の全盛の時代、少し心苦しいものはあるが、中国の養殖技術の発展をつぶさにみてきた自分は、より自然に近づく進化に期待を持つ。
こんな、海から離れた街でも、さまざまな海の魚が廉価で全ての庶民の日常に届く。この面においての中国の取り組みは素晴らしいものだと思っていた。

鱗をひき、鰓、内臓を取る。火が入りやすいように身に切り込みを入れる。
骨からの熱伝導も期待できるので、骨まで当たるように包丁を入れる。
水気を拭って、粉打ち。

揚げる

大きな中華鍋は、魚を丸一匹、姿で調理できるので便利だ。
油を魚の半身が浸るぐらいの量使って揚げる。寸胴型の鍋より油の量が少なくて済む。
表面側はお玉ですくった油をかけるようにして揚げる。魚は裏返さない。腹の中は空洞だし、骨まで切り込んでいる約3分あれば、ほぼ火が入る。
中華料理といえど、鮮度の良い魚に対しての火の入れ具合は日本人が思うより遥かに繊細なものがある。素性の知れないモノはしっかり加熱するが、これは80%加熱のイメージで。
あとは余熱で、ふんわりとした食感を楽しめる。

紅焼

” 紅焼《ホンシャオ》" は、醤油で味付け、色付けされた料理のことである。
炒め物、煮炊きしたものに関わらず、その表面のソースの色合い、煮汁、染みた身の色を指して、そう呼ぶようだ。

中国の通常の醤油自体は " 生抽 sheng chou シュンチュウ " と呼び、少し色の明るい濃口醤油を使う。そこに、” 老抽 lao chou ラオチュウ ”( 日本人は老酒をラオチュウと呼ぶことが多く、発音の微妙な違いが難しい ) =中国の溜り醤油を数滴加えれば、料理は一気に色濃い” 紅焼ホンシャオ になる。
この" 老抽ラオチュウ ” は日本の” たまり ”より塩分が少なく、トロッとした濃度を感じる。

鍋に少量の油を熱し、香りのもの( ニンニク、生姜、鷹の爪 )を入れて香気を抽出したら水( 薄い鶏や豚のスープが美味しい、なければ酒にチキンコンソメ少量 )を加え、砂糖、醤油で整え、揚げたてのスズキを煮汁の中で1分程煮立てる。
仕上げの溜りで色を差し、刻んだネギを入れて出来上がり。
スズキの粉打ちした衣が溶け出して、煮汁に良いとろみのついた” 紅焼ホンシャオ” の完成だ。

文字変換

” 红烧 hong shao " 。
” ホンシャオ ”と中国発音的に入力すると、” 紅焼 " と文字変換されて驚く。
” ホンショウ " と入力してもダメみたいだ。カタカナ英語と同様に、文字入力の変換にカタカナ中国語、が浸透しているようだ。
ショウロンポウ=小龍包とか、日本人にもスタンダードとなった響きのモノが、スムーズに変換される様子。

だが、私のように日本人にありながら、中国語のピンイン( ローマ字表記 )とリアルな発音が頭に染みついた人間には少し厄介だったりする。
” 小笼包 Xiao long bao " を、シャオロンバオと入力しても変換されないから。匙加減が難しい。。。



 廃業の在庫処分だ。贅沢に” 獺祭 " 最強の純米大吟醸 23% で一杯やりながら。


                                以上


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