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フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン | 良い意味で軽い、ハリウッド式宇宙開発ラブコメ

Story

アポロ1号の事故、終わりの見えないベトナム戦争の余波を受けて、いまいち盛り上がってない月面着陸計画。予算難に苦しむNASA(というよりもっと国の上層部)は広告のプロであるケリー(スカーレット・ヨハンソン)を雇ってイメージ回復を計る、どんな手を使ってでも。そんな破天荒なやり方にプロジェクトリーダーのコール(チャニング・テイタム)とは対立する。その一方で2人は惹かれあってもいくのだった…

review

おすすめ度 ★★★☆☆

日本版の予告がやけに重々しい、いわゆる“宇宙開発もの”映画っぽい仕上がりだったので勘違いされてそうだが、いかにもハリウッドらしいラブコメ映画だった!

『ライトスタッフ』(1983)みたいな重厚な宇宙開発ドラマを予想して見に行くと軽いノリのコメディなのでガッカリかもしれないが、むしろラブコメ好きって人にはこの夏ピッタリの1本かもしれない。

NASAに雇われた広告のプロ ケリーを演じたスカーレット・ヨハンソンは自身でプロデューサーも担っていて、その分彼女がやりたい役を思い切り演じていて楽しそう。全てを嘘で塗り固めて男たちを手玉に取る姿は、まさに現代のマリリン・モンローそのものだ。
スカヨハは最近でも『アステロイド・シティ』(2023)でもマリリンらしき役を演じていたが、今作ではマリリンのダークな側面は押し込めて痛快で魅惑的なキャリアウーマンを演じている。

このケリーというキャラの女性観には少し古臭さも感じなくはないが、ただその古臭くさがむしろ1950年代〜60年代のハリウッドラブコメの空気感を醸してもいる(まさにマリリンが活躍した時代!)

その相方をつとめるのは、大好きな俳優チャニング・テイタム。彼が出てる映画は基本見に行こうと決めてるのだが、さすがスカヨハは魅力の引き出し方をわかっている。
ハンサムだしマッチョ、だがそれを補ってあまりある不器用さ。チャニング・テイタムの魅力は“融通の効かなさ”だと個人的には思っていて、不器用な役をやらせたら抜群に光るし、どうしようもないバカ役なんかもピッタリくる。

全体的に古臭いラブコメ臭は抜けない映画ではあるのだが、この古臭さは言い方を変えればクラシックだろう。そんなクラシックな面白さこそ、『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』の最大の魅力。

また宇宙開発ものとしても新しい視点を持ち込んでいるなとも思っていたりもする。
宇宙開発ものの醍醐味の一つに、この巨大な国家規模プロジェクトをどの切り口で描くかというポイントがある。
例えばここ10年の傑作『ドリーム』(2016)は「女性職員たちの功績」という切り口が斬新だったし、アームストロングの伝記映画『ファースト・マン』(2018)は今までクローズアップされて来なかったアームストロング個人の心情に寄り添ってみせた。

そんな流れの中『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』は「予算と金策」というアポロ計画で一番顧みられてこなかった、だが絶対に発生したはずの問題を中心に据えている。それでいてアポロ計画の中で一番下世話な話でもあって、軽いラブコメとは相性ピッタリ。
そのせいか見た後の感触としては宇宙開発ものというより、『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』(1997)のような広告業界内幕ものっぽい。言わば、「やったもん勝ち、言ったもん勝ち」の世界だ。

軽く見れる宇宙開発コメディとして上々の出来だったと思う。週末に友達や恋人とフラッと見るには最適なちょうど楽しいハリウッド映画だった。

あとネコが出て、大活躍するよ!

文責=1世

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