鯨(lyric)

空の鯨。無死の鯨。
何かが始まったような
何かが終わっていたような
かの名前で呼ばれていたこの一日
垢のような鉛は、ことばにならないことばを鳴らして降り落ち
数々の鉄筋に当る様は
着地の恐怖をものともせず
メロディアスに描き
キン、カンと具現と化すそれは鉄琴


さて、あなた方の頭を旅してみよう
3分待っても見えぬ正解
世界観だけ揃えた言葉まぶし
大言壮語しても手足は置き去り
お飾りなのかこのサウンドは
リバウンド、インバウンド、サラウンドを目指す鑑賞家
砂漠に置き去りにされた皆の衆
釈明ばかりのサグラダファミリア
土俵に立てない即興クイズ
味見のつもりで舐めたその態度
程度も知れてる海の魔物
飲まれる当たりで帰路につく
ほんの余韻も許されない
俺は産まれ落ちたのだから
「常識を疑え」「公式を疑え」「標識を疑え」「金色を疑え」
反作用見越して狂う押し出される生活のはざま
北極星を夢見て間延びした
湾曲した背骨は俺すらも裏切った
ただでさえ
俺は昼寝をしている


俺は昼寝をしている


かつかつ と闊歩する革靴
足は体をどこへ運ぶのか 油の切れた頭は考えている
自分の名前が思い出せない
きしむ骨と胃の爛れを裏付ける記憶すらもない
それだけ幸せ者だったのだろう
今の今まで昼寝をしていたのだからね

機械に急かされ早まる寿命

いいことあるかも格好のカモ
イフを求め不意に飛び込んだ天翔ける列車の世界めがけ
浮上する風船を見ていた
宙ぶらりんのてるてる坊主
何止まってんだ歩けってけしかけられる
動画上の道化師みたいに
奥に運ばれて送られている間に引きはがされていた
ネームシール


「常識を疑え」「公式を疑え」「標識を疑え」「金色を疑え」反作用見越して狂う押し出される生活のはざま
「取れかけの乳歯」「落ち、割れる寸前の卵」「朽ちて崩れるまでの安寧」「そんな意識を疑え」反作用見越して狂う押し出される生活のはざま
南十字を垣間見て間延びした
床ずれした皮膚を削ぎ落とし
骨は断たずにしまい込んだ
遠くの夜を見据え別れは告げず
俺は 俺は 俺は
昼寝をしている


だってまだ何も終わってないだろ


ただでさえ俺は昼寝をしている




作詩、朗読にて参加

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