先生、オシャレなランチより味の染みた煮魚が好きです
休日の過ごし方があまり上手くないと思う。予定もろくに立てず、家でケータイを触りテレビを見たり何もしていなかったりすることが多い。
何もしないより、なにかした方が実りがあるのは分かっているが体は行動という信号を無視し続けている。こういう休日も嫌いでは無いので尚更抜け出すのは難しそうだ。
そんな私にも、休日の楽しみはある。それは、夕食時に古い外観の定食屋に行くことだ。細かく言うなら、煮魚定食を食べに行こことが私を満たす行程なのだ。
オシャレな喫茶店やオシャレなランチを食べに行くのも好きだが、何十年も繰り返し作ってきたおばあちゃん、おじいちゃんの煮魚には敵わない。なぜ、あれほど旨みが染み込んでいるのだろう。自炊は割とするほうだが、到底届きそうにない。
実際に今日行った定食屋では、ブリ煮込み定食を食べた。客は私以外居らず、おばあちゃんちに遊びに来た空気感があって嬉しかった。
そこのお店はおばあちゃん1人で切り盛りしていて、歩き方も膝が悪いからか赤子のように1歩1歩重心を確かめながら歩いていた。また、湯気が信じられないぐらい出てる鉄製の落し蓋にもかかわらず素手でつまみあげ料理を進めた。いや、もうあれは握っていたと言ってもいいぐらいだった。僕は思わず「あつっ」と言ってしまっておばあちゃんと目が合い少し笑った。その笑顔も、そこに元々あったかのように自然で心地よいものだった。
煮魚定食は、予想通り美味しく頂いた。おばあちゃんに「美味しかったです」と伝えると「また来てくださいね」とまたあの笑顔で言ってくださった。
時速30キロしか出ないボロボロの原付に乗りながら、余韻に浸っていた。
店頭に飾られていた顔をそっぽ向けている猫の置物、なにかにじっと耐えているダルマ、見た目こそ古いが掃除されているであろう綺麗なキッチン。どれも私の目を奪っていった。
オシャレな喫茶店、ランチもいいが古い外観の熱さに物怖じないおばあちゃんが経営している定食屋もたまに行ってみてはいかがだろうか。
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