国を訴えた情報公開の裁判、初弁論は10月5日です
フロントラインプレスはこの2月から4月にかけ、「沈没 寿和丸はなぜ沈んだか」という記事を発表しました。サブスクの「スローニュース」で8回連載しています。
2008年6月、千葉県の犬吠埼沖350キロの太平洋上で、停泊(漂泊)中だった第58寿和丸は白昼に突然、転覆・沈没しました。犠牲者17人。助かった乗組員は、わずか3人しかいません。この事故を巡って国の運輸安全委員会は「波による転覆」と結論付けましたが、当時の海況、事故後に現場海域に漏れ出た油の量、生存者の証言、僚船の証言などの客観証拠と、報告書の内容には大きなズレがあります。船主の依頼を受けて独自に状況を分析したり、再現実験を手掛けたりした専門家たちは「波とは考えにくい」「船底が損傷したのではないか」と指摘しています。
船底損傷?
太平洋のど真ん中ですから、岩礁ではありません。135トンもの停泊中の船がクジラとぶつかって沈むことも考えられない。では、なぜ? 研究者たちは「潜水艦との衝突ではないか」と疑っています。実は、国の調査機関も当初は潜水艦との衝突も視野に入れ、潜水調査を検討していました。
連載はその調査報道取材のプロセスに読者を誘い込む内容です。
この取材過程で国(運輸安全委員会)に情報公開請求しました。ところが、それに対する国側の姿勢が実にひどい。事実上、何も開示しません。例えて言えば、ファイルの背表紙の文字すら見せないという状態です。不服申立ても通らなかったため、フロントラインプレスは国を相手取って提訴したわけです。
その第1回口頭弁論が10月5日の火曜日、東京地裁で開かれることになりました。703号法廷、開廷は10時30分。答弁書などの書面の行き来だけですが、フロントラインプレス側は顧問弁護士(清水勉弁護士)だけでなく、取材に関わったメンバーらも足を運ぶ予定です。
第58寿和丸の沈没をめぐる取材はまだ続いています。本当に潜水艦だったのか? 水面下での取材はさらに深まっています。