「家族」と「他人」と、それから「親戚」。~地域の里親会について~
#20230805-190
2023年8月5日(土)
地域の里親会が主催する里親家族のイベントがあった。
新型コロナウイルス流行の影響で、ここ数年あらゆるイベントは中止、もしくは少人数、Zoomなどオンラインを通したものに変わった。
里親同士といった大人の交流や打ち合わせはオンラインでもなんとかなったが、下は乳児、上は高校生と年齢のはばが広い子ども同士のイベントは難しく、中止が続いていた。
3年振りに見る里子たちの成長っぷりにのけぞってしまう。
タイムトンネル?
タイムトンネルをくぐったの?
まるでSF!
だって、児童相談所のベビーベッドに転がっていた赤ちゃんが立って、テコテコ走っている。
子ども然としていた男の子がすらりと背が伸び、もしや私より大きいんじゃないかと目を見張る。
幼児だった子どもたちはすっかり骨格がしっかりし、走りまわる姿がたくましい。
スマートフォンを手にした女子は、声をあげながら駆けまわる小さい子たちに混ざるのもためらわれるのか、里母の後ろに恥ずかしげに立ち、大人たちの話に耳を傾けている。
そして、この3年の間にも里親登録をし、里子との交流を経て、正式委託をされた里親たちがいる。
はじめましての顔が増えていることが嬉しい。
自分は毎日ノコ(娘小4)とああだのこうだのやっているあいだも、里親子が誕生している。
「あの方はどなた?」
里親会の連絡網で名前を目にしても、新しい里親子は名前と顔が一致しない。そっと役員に尋ね、記憶に刻む。
私たち夫婦がイベントの手伝いをすることもあり、早くから会場に入ったノコは、やってくる子どもたちに即駆け寄り、遊びに誘う。
小さい子は抱っこしたり手を引いたり、同じ年頃の子どもとは全力で走りまわり、時折遊びのルールを「こうしよう」と提案している(ノコに都合のいいルールのところが笑ってしまう)。互いに持ち寄ったポータブルゲーム機に興じる男子たちの画面をうらやましげに覗いたかと思えば、年上女子にくっついて甘えている。
会わなかった3年なんて、なかったかのようだ。
子ども同士というのもあるだろう。
だが、どこか似た生い立ちだと子ども同士でも察しているように見える。
ノコは幼稚園年長児に我が家に来たため、私たち夫婦が実親でないことを理解している。児童養護施設の保育士さんや児相のケースワーカーさんからも生い立ちは説明されている。年齢なりではあるが、わかっている。
「生みの親」「育ての親」というのもいいにくいので、ノコにはすでに「実親」「里親」「里子」という言葉は教えてある。「里親会の集まり」といえば、里親子の集まりである。
はじめの頃、ノコはそっと里親子を指差しては「あの子もあのママから産まれてないの?」と私にいった。
「あの子も?」
「あの赤ちゃんも?」
「あっちの子も?」
その度に私は「そうだよ」と返した。
ノコの肩から力が抜けていく――張りつめていた何かがゆるんだのを覚えている。
里親にとって里親の存在が特別であるように、里子にとっても里子の存在は特別なのかもしれない。
「まだ帰らない!」
イベントの片付けをはじめた大人たちに気付いたノコが私に駆け寄って叫ぶ。
「まだいるから!」
まわりの大人たちが笑う。
「まだいる!」
「あとちょっとだけ!」
「帰りたくない!」
そうはいっても何事にも終わりの時間は訪れる。
途中まで帰路が同じ里親子がいるとわかると、ノコは置いていかれまいと慌てて靴を履いた。
そして、去りたくないと駄々をこねていた会場から飛び出していく。
それぞれがそれぞれの家へ向かう帰り道。
家族3人になった私たちは、ノコを真ん中に手をつないで夜道を歩いた。
「ノコさんにとって、里親会のみんなは何?」
私が問うと、ノコが叫んだ。
「家族!」
そりゃあ、ノコを見ていれば近しい関係だとわかる。私にとってもそうだ。
だが、この4年間毎日毎日一緒に暮らしている私たち3人と同じ「家族」だといわれると、ちょっと複雑な気持ちになってしまう。
家族かぁ……
やっぱりノコはまだ「家族」の意味を理解できていないのだろうか。
ふとノコをよく知る先輩里母さんがいった言葉を思い出す。私よりたった10ばかり年上なので、いわれたときは思わず否定してしまった。
「ノコちゃんと会うと、ばぁばみたいな気持ちになるわ」
もしや「家族」ではなく、「親戚」?
親の年齢やコロナ禍もあり、ここ3年、我が家は親戚づきあいがあまりない。ノコにとって「親戚」というつながりが希薄だ。
ノコに「家族/他人」という分類しかなければ、よその里親家族は「家族」になりうる。
親戚。親戚といいたかったのかな。
それなら、私にもわかる。
地域の里親会は、たくさんの伯父や叔父、伯母や叔母にあふれ、たんまりといとこたちがいる。
ホントにホント、親戚みたいだ。
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