選択
青にひかる信号機はすぐに赤へとかわる
渡りきれなかった僕と渡り終わった誰か
さめざめと降る雨粒は
ひとつとして僕を写しはしない
冷えた手は
信号のようにぼんやりと赤を灯し
するりと雨粒が手首をつたった
カバンに入れるか迷う折りたたみ傘は
頼りなくて
そうして
雨が降ると
いつも
いつも
折りたたみ傘をおもう
ねえ、カバンに入れられなかった
折りたたみ傘と忘れられたビニール傘
どっちがかなしいのかな
雨粒をはらって入るコンビニ
他人行儀なホットスナック
あたたかそうなコーヒーの湯気
私はねどちらもかなしいとおもうよ
記憶の中の誰かがささやく