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科博ディスカバリートーク「生物の大分類」レポ

先週、国立科学博物館でやっていたディスカバリートーク「生物の大分類」というものを聞いてきたのでそこで聞いた話のまとめなんかを。

ディスカバリートークというのは毎週土・日曜日に研究者が科博にやって来て行われる30分くらいの講演のことだ(僕が行った回は講演15分、質疑15分だった)。
前日、twitterでその講演がやってるというのをたまたま知ったので、ふらっと行ってみた。

講演は当日受付、定員は50名で聞けるのは先着順。
僕は初めてで勝手がわからなかったから30分くらい前には講義室のある地球館3階に行ったんで講演の受付が始まる15分前くらいまでスマホ見ながら時間をつぶしてたけれど、定員がいっぱいになるわけではないみたいだったから5~10分前に行けば普通に入れるんじゃないかな。

今回行ってみて結構面白かったし面倒な手続きもなく気軽に聞きに行けるから、年パスでも買ってこれからはたまに行こうかな。
twitterの国立科学博物館のアカウントが毎週土日の朝にその日やる講演のタイトルをツイートしてるから、そのアカウントをフォローして面白そうなのがやってたら上野に行くみたいにしたら結構いいライフスタイルになりそう。
土日はたいていやることなくてぼーっとしているので。


そんなこんなで、聞いてきた講演の話。

講演のタイトルは「生物の大分類」。
お話ししてくださったのは、谷藤吾朗さんという方。

令和のはじめに平成の間で分類学がどう変わったかって話をしようっていうのが講演のテーマで、まず分類学が生まれてから昭和までの間にそれがどのように発展していったかっていう話、その後に平成に生まれた新しい考え方の紹介、それによって現在の分類がどうなったか、そしてそのちょっと先の未来の話をしてシメ、みたいな感じでした。

中身をちょっと踏み込むと...


分類学が生まれてから昭和まで
講演で聞いた昭和までの分類学の発展の流れをまとめると↓のような感じ。
・カール・フォン・リンネが体系的な生物の分類を作り上げる。分類学の始まり。(『自然の体系』1735年出版)
・チャールズ・ダーウィンが進化の概念を提唱する。(『種の起源』1859年発表)
・エルンスト・ヘッケルが系統樹によって、進化的な類縁関係をもとに生物分類を描いた。(『生物の一般形態学』1866年出版)
・ロバート・ホイタッカーが現在高校で習う生物分類でもある『5界説』を提唱(1969年発表)

というわけで、現在高校では『5界説』をもとに生物の分類を教えているわけだけど、現代の生物の研究者は誰一人この五界説を信じてはいないらしい。
それが何でかってことで、その後生まれた新しい考え方の話。


分類学に生まれた新しい考え
講演で例に出していたのが、「魚・さかなクン・チンパンジー、この3つの生物を2つのグループに分けるとしたらどのようにわけるか。」というもの。

これを聞くとたいていの人はさかなクンとチンパンジーを同じグループに分ける。
でも中には、さかなクンの頭についてるやつが魚に似てると言う人もいる。
この3つはどうやって分けるのが適切なんだろう。

例えば「大脳が発達している」みたいな特徴を取り上げると、さかなクンとチンパンジーは当てはまるけど魚は当てはまらない。
「体中が毛で覆われている」という特徴を取り上げると、チンパンジーだけが当てはまって、魚とさかなクンは当てはまらない。

じゃあ「大脳が発達している」というのと「体中が毛で覆われている」というののどっちが重要な特徴かって言うと、重要さなんて数値化できないし、どっちが重要かなんて科学的には決められない。

でも、これを解決する手法が後に生まれた。
DNAを使った分析だ。

DNAを使えばその塩基配列の違いによってどこがどれぐらい違うかということがはっきりとわかるし、その違いを数値化することもできる。
この新たに生まれた武器を使って、分類学は大きく変わった。


現在の分類がどうなったか
分類学を変えたという、生物の違いの数値化とはどういうことか。

これは講演の中で特に説明がなかったから僕のイメージで話すんだけど...

DNAはそれぞれの頭文字がA, T, G, Cで始まる4種類の塩基が1列に並んだ構造をしている。
「…ATTCCAGTATC…」といった感じで、4つの文字が延々と連なったすごく長い文字列だ。

地球上の生き物は、人から微生物から何億年も前に絶滅した怪しげな生き物に至るまで、全員がこの4文字で記述された文字列を持っている。
だから、この文字列の対応する部分を比較すれば2つの種の違いが1文字分なのか10文字分なのかそれとも1万文字分なのかってことがわかる。

それまではどの特徴をもとに生物を分類したらいいのかが判別できなかったのが、この数値化によって生物同士がどれだけ近くてどれだけ遠い種類なのかということが明確にわかるようになった。

新しい基準をもとにして新たに分類を再構成するわけだから、当然今まで作り上げてきた分類とは詳細が異なる。
一番大きな違いというと、今までバクテリア(細菌)というくくりで分類してきた生物の中から新しい分類が生まれたこと。

講演の話だと、こうして新しく生まれた分類は次の指導要領?だかなんだかに記載されるとかなんとか。
講演では下の図を使っていたからたぶん3ドメイン説のことだと思う。

これはざっくり言うと、生命は太古の昔にバクテリア(細菌)・アーキア(古細菌)・真核生物っていう3つの大きな分類(ドメイン)に枝分かれしたっていう説。
それまでひとくくりにされていたバクテリアとアーキアだけど、実は真核生物とバクテリアの間と同じくらい違いがある全然別の生物なんだとか。

真核生物というと動物とか植物とかいった多細胞生物を含む分類で、それと比べるとバクテリアとアーキアはほとんど同じような生物に見えるんだけど、アーキアはバクテリアよりもむしろ真核生物に近くて、アーキアと真核生物が枝分かれしたのはバクテリアとそれ以外の2つが分岐したのよりも後のことらしい。

新しい分類では動物と植物を示す範囲はほんのちょっとで残りの全てが微生物だ、みたいな話をしてたかな。
植物と動物が目に見えるサイズの生き物だから注目を集めるけども、実際の生き物のほとんどは目に見えない小さな生き物だっていう。

医療とか農作物とかの課題があるから植物・動物の研究も大事なんだけど、珍しい病気の原因になることもあったりするから微生物の研究もそれはそれでやっていかなきゃいけない、みたいなことを言ってた。


ちょっとその先の未来の話
そんなわけでこれからの高校生はそうした新しい考えで生まれた分類を教わるわけだけど、その分類も最近になって変わりそうな気配を見せているらしい。

っていうのも、アーキアと真核生物の中間のような微生物が新しく発見されたんだとか。
そいつらは北欧神話の名前をとってアズガルド古細菌と名付けられたんだけど、いくつもの段階にわたってアーキアと真核生物の間の溝を埋める種が見つかっていて、今後これが分類にどういった影響を与えるのか講演をしていた谷藤さんもよくわからないんだとか。

境目がなくなるということは真核生物がアーキアの一部に統合されて1つのドメインになるんだろうか。
まあこの先のことはよくわからないけど、講演のレポとしてはそんな感じかな。


この後質疑があってそこでも気になる話があったからそっちの話も今度まとめよう。
以上。

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