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先生は100歳

フランス語の先生が100歳を迎えられました。
必死で暗記してきたフランス語のお祝いの言葉をいうと「Merci、
まぁ、こんなに生きると思わなかったのにね」と、きはずかしそうな笑顔。部屋はプレゼントされたという、大きな花束の百合の香りで満ちていました。

私のお祝いもピンクの花々をあつめた可愛い花束と、大好きと伺っていた、アップルパイ。日曜日には甥御さん一家が訪問して大賑わいだったそうです。
相変わらずの一人暮らしですが、ヘルパーさんが毎日来てくれるようになり
親戚のお医者さまも毎週訪問してくれるとのこと。半分我が家だと思っている猫ちゃんもベランダから「にゃあん!」と随時訪問、わたしとも顔なじみになりました。

今日のレッスンはフランスの古いシャンソン「さくらんぼの実るころ」を歌うこと。
まずは先生が自作のテキストを読みながら訳して下さいます。実は二回目。
最初のときは発音もよくわからないのに、それをメロディに乗せるのが難しくて、ひどい調子っぱずれで我ながら冷や汗ものでした。今回は予習してきたし、Utubeでイブ・モンタンの歌うのを何回も何回も聞いて来たのでまあまあ、自信があったのですが、やっぱり歌は難しい。

この歌は「さくらんぼの実るころ」というタイトルではあるけれど、さくらんぼの実るころ、美しい娘に失恋した胸の痛みを忘れない、という失恋の歌です。
パリコミューンのテーマソングでもあったそうです。イブモンタンがしっとりと歌っています。お時間ある方は聞いてみてください。↓

ずっと独身を貫いた先生ですが、「フランス人からプロポーズされたことが
おありなんじゃないですか」と無作法にも伺ってみたら「それは秘密ね」とのこと。かなり信憑性がありそうです。

先生にはまた、写真を撮る、という趣味もあり、時間に余裕がある時はファイルされた沢山の写真を見せてくださいます。この日はパリ市庁舎前とマルセイユの写真、A4に引き伸ばされた画面にはフランス人たちが楽しそうに笑っています。
「これみんな友達だけれど、みんな亡くなってしまってね」
寂しそうな言葉に何と答えていいか分からず困りました。

長生きをされ、100歳になってもフランス語を教えられるクリアな頭脳があることは時に寂しいことでしょう。でも、フランス語を話しているときの先生はいつも生き生きと若返って見えます。私も負けないようにフランス語がんばっていこう、もしかしてこれが元気で長生きの秘訣かもしれない、と思った日でした。

              おわり


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チズ
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