こころが動いた瞬間を、たくさんこころに残しておきたい。
友人とカフェに行き、「またね」とわかれた後の夕方。
どこもかしこも新春セールのまっただ中。
まっすぐ帰るのはもったいない気がして、あてもなくお店を見てまわることにした。
通りの両側にお店がならぶ地下街をずらずらとすすむと、最後に行きつくのは本屋さん。
ちらりと本棚がみえると、あかりのついた家に帰ってきた気分になる。
本屋さんがそこにあると、知っているのにほっとする。
ならぶ本棚の間をぬって、こちらにむいた表紙をながめていく。
「すばらしい人体」「マイノートのつくりかた」「LISTEN」「スマホ脳」……
気になる本、気になっていた本を手にとってぱらぱらと流し読む。
やっぱりおもしろそうと思ったり、なんかちがうなと感じたり。
結局、手にとった本はすべてもどした。
次は文庫コーナーへ。
文庫コーナーの棚、ぱっと目をひかれた表紙に「江國香織」の文字。
白っぽい表紙にぶどう色のイラスト。
その色がなんとも絶妙で、すてきな本の予感がした。
ぱらぱらとページをめくる。小説かと思えば、なんと詩集だという。
見開きにおさまる詩の数々は、読むだけならあっという間だろう。
無性に気になる本だけど、この詩集を買うにはまだはやい気がした。
なにがはやいのかはわからない。
ただ、今じゃないんだろうなって感覚。
結局、江國さんの詩集ももとの場所にもどした。
もしかしたら、またどこかで出くわすかもしれない。
詩集が心をほぐしてくれたのか、本を買いたい気持ちになる。
文庫コーナーをみわたして、「常設展示室」を見つける。
今度は小説、しかも原田マハさんだ。
どうやら絵画にまつわる短編集らしい。
ひとつめのタイトルは「群青」。
ブルーピリオドを最新刊まで読んだおかげか、ピカソの名前が頭に浮かぶ。
手にとった時点で、買うのはほとんど決まっていた。
でも、なんとなくあと一押しがほしくて、解説ページを探す。
上白石さんの書いた解説。文章からは原田マハさんへの敬愛を感じられて、それだけでうれしくなる。
解説を読み終え、そのままレジにむかった。
本屋を出て、ほくほくとした気分のまま駅の改札口へ足を運ぶ。
今なら、ささいなことにもこころが動きそうだった。
ひらかれている、というのだろうか。
外していためがねをかけたみたいに、いろんなものがよく見える。
今がおさんぽ中なら、わたしはいろんなものを写真におさめるんだろう。
わくわく、ふわふわとしていた。
・ ・ ・
ちょっと話が変わるんだけど。
こころが動くといえば、わたしの好きな言葉がある。
「20代で得た知見」という本の言葉だ。
初めてこの言葉に出会ったとき、なるほど、と腑に落ちた。
それから、自分のこころが動いたときを思いかえしたはず。
たとえば、初めて大学に登校した日。空の青さと木々の新緑にきらきらとしたきもちがわきあがったとき。
たとえば、美術館で思わず「うわ…」と声がもれるほど目に飛びこんでくる絵に出会う瞬間。
出会ったものが絵でも文でも景色でも、
ひと目でこころの奥に焼きつく瞬間が、こころの動いたときなんだろう。
そう思うと、たくさんのものに出会って、たくさんこころにのこしておきたい。たくさんの一瞬をもっている人でいたい。
そのためにも、こころの動くよゆうを持っている人でいたい。
そんなことを思うのでした。
・ ・ ・
2022年ひとつめのnoteでした。
今年の抱負というよりは、その日に思ったなりたい姿です。
おっきい目標をたてて、突き進むより、
おもしろそう、楽しそうって感覚で方向を決めるタイプです。
よりみちしながら、いいなと思う方へ進んでいきます。
今年もよろしくお願いします!