映画鑑賞日記 2023.04




■ザ・スウォーム(1シーズン)

シーズンが続くのが前提なので立ち上がりがおっせえ…のよ…
とはいえ、本当に些細な違和感から、海洋生物が一斉に人類に牙をむいているのかも…?となるまでの積み重ねはバリエーションにも富んでいてよかった。特に甲殻類が感染症を巻き散らかすやつ。ごみを下水に流してしまったからもう町全体が手遅れかもしれない、となった瞬間の背筋の冷えはなかなかでしたね…
イール君の設定はめっちゃいいんですけど、その発見を学会に発表する主人公たちの言動は現実の陰謀論者がモデルとしか思えなくて、フィクションの中とはいえこいつらが正しいと現実のほうのかたも喜んじゃいそうでやだな…と思いました。

■シャザム!

聞いてたより全然コメディじゃないんですけど…
しっかり家族とは何か、という話と向き合っていてよかったです。ていうかSHAZAMって主人公じゃなくてあのジジイの名前なんだ、めちゃくちゃ欲張りな命名してやがるぜ。
さえないご家族のスーパーヒーロービフォーアフターが超よかったですね。お前がそのムンムンなイケメンマッチョになっちゃうのかよとかお前かっこよくなっても全然変わんねえじゃねえかとか。2見たいけど終わっちゃうよ~ん。

■RUN

母と娘どっちが本当に狂ってるかわからないタイプかな?と思っていたら超序盤で普通に母がイカレてるしごまかし方が超雑なのが露呈するんですよ。でも、なのに、娘はこれまでの積み重ねの中でかけられたデバフが(実際の身体障碍)大きすぎて全然逃げられる気がしないわけ。絶望的だし悔しいしでかなり新鮮なもどかしさがありました。あと駆け付けた警備員がちゃんと仕事したのもかなり新鮮だった。当たり前なんですけど都合よく自分でなんとかできるとは限らないんですよ、ハンディキャップがあったらなおさら。そのお約束からの「外し」が当事者の方が日々どんな気持ちで生きているかを示しているようでよかったです。

■ダンジョンズ&ドラゴンズ

インターネットでの評判がトンチキなとこばっかり(セクシーパラディンとかデブゴンとか)だったんだけど、普通にこれまでのD&Dの積み重ねてきた世界観の再現ぶりもめっちゃよかったのでは!?小物から背景から全部凝っててすごく目が楽しい映画でした。私はこのゲームについて「映画の中でアメリカのガキンチョどもが遊んでるやつ」以上のイメージがなかったんですけど、その世界の広がりについてはだいぶ興味が出ちゃったな。一番気に入ったのはデカ女趣味のハーフフット?です!

■ペルシャン・レッスン★

正直、「ナチスにつかまったユダヤ人が嘘のペルシャ語レッスンで乗り切る!」というあらすじからもっとコメディ寄りを想像していたのですが、これは完全に甘えだった…。
主人公は生き延びるために死に物狂いで言語を創造し、レッスンを受けるナチスの将校もまた戦時下の苦しみから目をそらすために必死にペルシャの夢を見ている…。最終的に身分を偽ってイランに亡命した将校であったけども、当然嘘ペルシャ語だったのだから捕まって破滅してしまうんですね。取り押さえられそうになりながら叫ぶ「なぜわからない!」という慟哭、これは迫害されたユダヤ人たちの魂の叫びでもあって。彼を滅ぼした偽のペルシャ語はすべて彼が見殺しにした人々の名前から来たものであり、まさしく一つの呪いの成就だったといえるでしょう。

■犯罪都市2

まだ2なのに寅さん並みの「お約束」「いつもの」みたいな空気感があってとっても嬉しい。末永くたくさん作ってほしいな…。最終的にマ・ドンソクに半殺しにされるのがわかりきっているので、ヴィランがどれだけ最恐だろうが最凶だろうがすごく安心して見ていられるはずなんですけど、あの…怖いんですが…。ちゃんと韓国ノワール仕込みのガチ暴力・犯罪・拷問シーンを映すのでコメディなのに死傷者が多すぎることになる。最終決戦ではなによりもバス本体の安否が一番気になったし(なお犠牲になった)。

■名探偵ピカチュウ

めっちゃ久しぶりに見たけど主人公がD&Dの魔法使いだったしヒロインがザ・スイッチのJKだったのでなんか謎の感慨深さがありました。ソニック映画の騒動のことを思うとピカチュウの絶妙なバランス(本当にずっとかわいい)を生むためにめっちゃ監修入れたんだろうなあ…と思う。マリオも頑張ってほしいな。(声がウ~ンという気持ちはどうしてもあるが…)

■夜の来訪者

お屋敷の中の会話劇と回想シーンのみで構成されたサスペンス。
婚約祝いの食事会に参加している家族と新郎、その全員がとある一人の女性を追い詰め続けた関係者であり、ひとりひとり己の行いを告白していく…という流れなのだけど。
一番怖いのって彼女にとっては疫病神のようなこの家族が彼女を追い詰めたというの事実だとして、かといってじゃあ誰か一人の責任にはできないのではないか、という状況と、そこで現れ出る人間性ですよね。たった90分足らずで自分の手の上に載ってる責任が相対的に重くなったり軽くなったりすると、人は本当にあさましいふるまいを見せますよ。
個人的には、「ただクレームをつけて仕事をやめさせただけ」の娘が途中から見せる清廉なふるまいはどこまで打算だったのかな、とか思います。内心、「でも私が致命的な仕打ちをしたわけじゃない」と安心しなかったか?その立場から一番罪が重そうな兄に同情し、ほかの関係者を「罪を認めぬ愚か者」として扱うのはきもちいいか?というね。まあ一番すごいのは「彼女の最後の男が自分じゃないとわかったらさっき振られた婚約者によりを戻さないか打診する」婚約者の男なんですけど。

■護られなかった者たちへ

阿部寛って本当に名優なんだなあ、と思った一本。
妻の遺体が見つかって「よかったのか悪かったのか分からない」という表情と、息子の最後がわかって(そしてそれが巡り巡って、過去のささやかな救いと、現在の凶行につながったのを踏まえて)、「助けようとしてくれてありがとう」を言う声!!!そのことを知ってよかったのか悪かったのか本当にわからないだろうに、折り重なった苦しみや悲しみにうずもれた奥の奥にある、そもそもの「助けようとしてくれてありがとう」を見失わない主人公は本当にすごかった。ところで、殺された人が瑛太だったのに全然気づかなかった。カメレオンすぎる…

■ザ・ギルティ

タイトルが何を意味しているかを理解した瞬間の苦みがすごすぎる一本でした…
ほぼほぼジェイク・ギレンホールの顔の演技や居振る舞いを楽しむつくりなんですけど、その構成が脚本と相まって本当に皮肉で。ギレンホール演じる主人公は、電話で聞いた声や説明だけを鵜呑みにして正義感を暴走させ、結果として大変な悲劇を引き起こしてしまうのですが、彼の過去の罪も含めて彼は「相手の顔を見ていない」ということが強調されているんだと思うんですよね。だからこそ、最後に罪を受け入れるための電話を掛けた時、相手からギレンホールの逡巡し葛藤し煩悶している顔は見えない。彼がどういう気持ちなのか、なぜそこにいるのか、伺い知れるのは本人と鑑賞者だけなんです。


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