カガクの扉を開く本8 世界の環境は大丈夫?編
はじめに
今回は、世界の環境問題についての本を、岩波新書を中心にまとめて紹介します。
地球の温暖化の問題について、最近よく耳にしますが、国際会議では数値目標とか、先進国がいくら金を出すのかとかそんなことばかり話し合っています。何か違いますよね。あんなに何千人だか人が集まっているのですから、みんなで近くの山とかに植林をするとか、中東なんかの時には海岸沿いにマングローブ林の復活の種まきをするとか、行動を起こして欲しいですね。一体その話し合いをするためにどのくらいの二酸化炭素を放出しているのか計り知れません。
さらに、大きな問題としては、原子力発電所に対する評価が年々高くなっていて、温暖化対策の救世主のような取り扱いになっているところが、国際的な動きになっていて、気になります。
世界の環境はどうなっているの?
◎『地球環境報告』
石 弘之:著 岩波書店 岩波新書 新赤33
(1988年刊行です。この本では、まず都市の形成を問題視しています。今は、どの国も都市が形成されて、立派なビルが建設されています。それ自体がどれだけ環境に影響を与えているか。さらに、人口の増加によって、人が移動し森林等の破壊が進んでいること。そして、熱帯林は破棄され、農地は過度の使用により土壌流出が進み、商品作物を中心とした農業への転換により食糧が不足し、飢餓が広がっている。そのようなことが、報告されています。)
◎『地球環境報告Ⅱ』
石 弘之:著 岩波書店 岩波新書 新赤592
(1998年刊行です。この本では、熱帯林の破壊が進んでいること。黄河やアラル海のように水不足が深刻化している地域があること。逆に、森林の破壊などが原因で、洪水の頻発している地域があること。森林の破壊などで、先住民族などが生活場所を奪われていること。氷河などが減少していること。人類の危機が迫っていることを報告しています。)
◎『中国で環境問題にとりくむ』
定方正毅:著 岩波書店 岩波新書 新赤690
(中国の環境汚染はとんでもないことになっているらしい、という本です。昔、日本は中国に対して多額の資金援助を行っていましたし、多くの工場施設を中国に移転したりしていました。そのときになぜ公害対策の施設を持って行かなかったのでしょうか? 結局製品を作れるだけ作って売りさばく。公害対策など二の次という体質ができあがってしまいました。これは、他の国に対する経済援助でも同じようなことになっています。そして、世界の環境は悪化の一途を辿っているのですね。)
◎『アマゾン ー生態と開発ー』
西沢利栄・小池洋一:著 岩波書店 岩波新書 新赤229
(アマゾンは、地球の肺と言われるくらいに、広大な熱帯多雨林が広がり、二酸化炭素を吸収して酸素を作り出している所です。しかし、現在はものすごい速度でその熱帯多雨林が失われつつあります。
なぜそうなっているかというと、まず一つは豊富な鉄鉱石などの地下資源が見つかっているからです。地下資源開発はひたすら地面を掘るだけですから、多くの森林が破壊されてしまいます。
二つ目に農業や牧畜のための開発です。これも、ブラジル政府の政策に大きな欠点があるために、異常に無駄な開発が行われています。それは、とにかく森林を焼き払って、農地を作ると補助金がもらえるという政策です。そどうするかというと、どうするかというと、森林を焼き払い農地を作って補助金をもらうと、そのまま土地は放棄していなくなってしまうのです。そんな土地がどんどん増えてしまっているのです。
三つ目は、熱帯多雨林の場合表土が少ないので、一回木を切ってそこの土地を放置すると、植物の生えないような硬い土になってしまい、森林が再生しないのです。
そのような形で、アマゾンはどんどん森林が無くなって、地球はやがて窒息してしまうのでしょう。あーあ。)
◎『緑の冒険 ー砂漠にマングローブを育てるー』
向後元彦:著 岩波書店 岩波新書 新赤28
(アラビア半島というのは、今はほとんど砂漠地帯で、昔からそうだったと思っている人がほとんどだと思います。実は、昔は海岸線はマングローブ林に覆われていたそうなのです。ところが、ラクダなどの餌に使ってしまって、マングローブ林はほとんど消滅してしまったそうなのです。そこで、著者がマングロ-ブ林を復活させようと奮闘した記録です。しかし、そんなことは中東諸国のお偉いさんには通じることは無かったようです。現状は、高層ビルの立ち上る都市が造られただけで、マングローブ林の復活は実現していません。最近、ドバイとかでも国際会議などが行われていて、たくさんの人が世界中から集まってきているのですから、その人たちで、マングローブの木の植林をやれば、結構緑化が進むと思うのですが、数値目標がどうこうとか、お金をいくら出すとか、数字ばかりいじくっているだけです。そういう会議の時は、記念に植樹をするとか行動を起こして欲しいものです。
マングローブ林は、例えばバングラデシュなども無くしてしまったことが原因で水害がひどくなったと言われています。マングローブ林の復活は大切です。)
◎『キリマンジャロの雪が消えていく ーアフリカ環境報告ー』
石 弘之:著 岩波書店 岩波新書 新赤1208
(2009年刊です。温暖化により高山の氷河が溶けていること。人口の爆発的な増加により、さらに急激な都市化により、自然破壊が進んでいることが報告されています。
この前、テレビの『激レアさん』の番組で、アフリカの緑化に成功した京都大学の先生の話をやっていましたが、そういうことをやっている人はたくさんいるのですが、そういう人のところには資金は回らず。アフリカの国自体もそのような技術を受け入れない、活用できない事情があるようで、なかなか進んでいきません。残念です。)
◎『アメリカの環境保護運動』
岡島成行:著 岩波書店 岩波新書 新赤142
(アメリカは、環境保護に関しては、自国内では色々保護活動などをやっているようなのですが、なぜかその試みは世界には広がっていないという、謎の状態になっています。なぜなんでしょうか?アメリカで時々起こる銃の乱射事件の時に登場する「ライフル協会」という団体も、実は環境保護団体の一つなどと言われると一体どうなっているのか、訳がわかりません。)
◎『地球環境問題とは何か』
米本昌平:著 岩波書店 岩波新書 新赤331
(地球サミットとか、国連気候変動枠組み条約など、国際的な環境問題に対する動きについて解説している本です。どうも、国際会議では、数値目標とか、金をいくら出すとか数字的な物が動いているだけで、それで地球環境がどれだけ良くなっているのかさっぱりわかりません。)
◎『地球維持の技術』
小宮山 宏:著 岩波書店 岩波新書 新赤647
(地球環境の維持をするために、どのような技術があるのかを解説している本です。
日本では、再生可能エネルギーについて、企業はコマーシャルで宣伝をしていますが、実態はあまり増えていないのが現状です。問題点もいくつか上がってきています。
例えば、風力発電。なぜ、台風など暴風雨が多い日本で、風車型の発電所を推進しているのでしょうか? 風車型は、鳥などの生態系への影響も懸念されています。風車型で無いのも開発されているのですが、それを広めようとする動きはあまりありません。
最近は、メガソーラー計画とかいって、山の斜面の木を伐採して、ソーラーパネルを大量に設置するという、自然破壊の典型のような計画が各地で問題になっています。土地の有効利用と言うならば、レジャー施設や大型商業施設の駐車場にはなぜソーラーパネルを設置しないのでしょうか? ソーラーパネルがあれば、昼間でも車が熱くならないので、クーラーをかけたりしなくていいし、しかも電気を作る。一石二鳥なのになぜかどこもやろうとはしないのはなぜなんでしょうか?
さらに、バイオマス発電ということで、木質ペレットを燃焼させて発電を行う施設も少しずつ作られているのですが、なぜかその原料は輸入に頼っていたりするのです。日本は雨量が多いので、植物の成長が早いです。道路や公園や河川敷では毎年大量の雑草や落ち葉や伐採された木の枝などが回収されています。でも、そのほとんどはゴミ扱いでゴミ焼却場で燃やされてしまっています。そういう植物ゴミを、資源として活用できる仕組みをもっと考える必要があります。
最近は、使用済みの植物油を回収して航空燃料を作ることを始めています。他にも資源になるはずの物がゴミ扱いで燃やされてしまっています。例えば、豆腐を作るときに出る「おから」などは、牛の餌に良いと言われます。下水道処理で出る「活性汚泥」は、農業用のリン酸肥料が採れます。木などを燃やした後に出る「草木灰」も、肥料になります。コストの問題もありますが、日本が生きていくためには、利用できる物は何でも利用する。そんな考え方で無ければ、日本の未来も、人類の寿命も短くなるばかりですね。)
扉の写真
神奈川県平塚市にあるクッキーの会社です。なぜか、自動販売機でしか買えないです。神奈川県の所々に設置されています。これは、JR辻堂駅の近くに設置されている自動販売機です。
お薦めは、「コーヒールンバ」と「寄せ木細工クッキー」です。見かけたら買ってみてください。