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カガクの扉を開く本その7 原子力発電所は大丈夫?①編

はじめに


 原子力発電について、福島第一原子力発電所のメルトダウン事故後は、多くの原子力発電所が稼働停止になって、静かになっていたのですが、最近はまた騒がしくなってきました。
 日本では、60年を超えても原子力発電所を動かせるようにしましたし、各地の原子力発電所の再稼働が開始されたりしています。世界に目を向けると、地球温暖化対策として、二酸化炭素を出さない(本当はそうではありません)エネルギーとして、原子力発電所が再評価されて、見直しの機運が流行しています。
 そのような中で、今回は福島第一原子力発電所のメルトダウン事故以前に、原子力発電所の問題点について指摘している本を紹介したいと思います。これらの本は『原子力発電所は安全だキャンペーン』が大々的に行われた時代に書かれた物ですから、知っている人も少なく、あまり読まれていない本も多いのですが、もう一度みなさんで見直して、原子力発電所について考えて欲しいと思います。
 紹介しようとしたら、結構たくさんの本があるので、今回は岩波新書から出ている本に絞って紹介したいと思います。

1.原子力発電の基礎知識


◎『原子力発電』
 武谷三男:編 岩波書店 岩波新書 青版
(原子力発電所の基本的な仕組みについて解説している本です。)

◎『原子力発電所 ーコールダーホール物語ー』
 K・ジョイ:著 伏見康治、森 一久、末田 守:訳 岩波書店 
 岩波新書 青版274
(この本は、イギリスで初めて商業的に発電を始めた、コールダーホール原子力発電所の設計から施工そして発電に至るまでの過程を書いた本です。さらに、将来的には原子力発電所はどうあるべきかを書いてあります。)

2.放射線について

◎『放射線と人間 ー医学の立場からー』
 舘野之男:著 岩波書店 岩波新書 青版913
(この本は、医学の立場からX線による放射線障害や、遺伝学から見た放射線、放射線による障害についてや、自然放射線について、さらに未来への影響について述べた本です)

3.チェルノブイリ原子力発電所の事故について


◎『チェルノブイリ ーアメリカ人医師の体験ー』(上下全二冊)
R・P・ゲイル、T・ハウザー:著 吉本晋一郎:訳 岩波書店 岩波新書 新赤50・51
(1986年旧ソ連(現在はウクライナ)にあるチェルノブイリ原子力発電所の事故が発生。その六日後アメリカから骨髄移植治療のために医師が派遣されました。その医師の体験記になります。最後には原子力発電所についての提言や核の時代我々はどう生きていったら良いのかを書いてある本です。
 アメリカという国は、昔は、情報をつかむのが早く正確で、しかも行動が速かった。思い起こせば、福島第一原子力発電所の事故の時も、異変に最初に気がついたのはアメリカ軍だったし、軍艦などをすぐに福島あたりに展開していました。最近は、そのあたりが衰えてきているのが気になります。)

◎『チェルノブイリ報告』
 広河隆一:著 岩波書店 岩波新書 新赤168
(これは、チェルノブイリ原発事故の後、現地を取材して、一般市民がどのような被害を受けてきたのかを報告しています。
 この事故直後、日本政府や電力会社は、日本の原子力発電は事故対策が完璧で、このような事故は絶対に起こらないと豪語していましたが、福島第一原子力発電所のような事故を実際に起こしてしまいました。しかも、住民の避難の方法も全く考えていなかったため、病院などの入院患者の避難がかなり大変だったことを忘れてはいけません。)

4.原子力発電所事故について


◎『原発はなぜ危険か ー元設計技師の証言ー』
 田中三彦:著 岩波書店 岩波新書 新赤102
(この本は、原子力発電所の元設計技師が、書いた本です。この中では、福島第一原子力発電所4号機の圧力容器が製造段階でゆがんでしまったため、ゆがみの補正を行ったため強度に問題があるんでは無いか? ということを中心に述べています。福島第一原子力発電所4号機と言えば、定期点検中で核燃料を入れていなかったため、メルトダウンを起こさなかった唯一の原子炉です。もし、メルトダウンを起こしていたら圧力容器は大丈夫だったのでしょうか?
 そのほか、運転中の原子炉の安全性について述べています。)

◎『原発事故を問う ーチェルノブイリから、もんじゅへー』
 七沢 潔:著 岩波書店 岩波新書 新赤440
(この本は、チェルノブイリの原子力発電所の事故の原因と、その裏にある政治的な問題について述べている本です。そして、日本の原子力発電所は大丈夫なのか? チェルノブイリ周辺の放射能汚染の状況はどうなのかを述べています。)

◎『原発事故はなぜくりかえすのか』
 高木仁三郎:著 岩波書店 岩波新書 新赤703
(この本は、「原子力資料情報室」を設立した高木仁三郎さんが、原子力発電では事故を繰り返しているのかを考察している本です。基本的には、とにかく原子力を始めたのだからとにかく推進しようという姿勢。放射能を知らない人が中心にいること。自己検証をしない体質。そして、隠蔽や改ざんが行われる。そういった姿勢が原因であると述べています。その姿勢は、福島第一原子力発電所のメルトダウン事故後も全く変わっていないですね。)

5.原子力発電所の未来


◎『市民科学者として生きる』
 高木仁三郎:著 岩波書店 岩波新書 新赤631
(この本は、高木仁三郎さんがなぜ反原発運動に関わるようになったか? という自伝的な本です。)

◎『プルトニウムの未来 ー2041年からのメッセージー』
 高木仁三郎:著 岩波書店 岩波新書 新赤365
(この本は、原子力発電の燃料の主力がウランからプルトニウムにシフトしていくという未来を想定して書いた本です。しかし、残念ながら核燃料の再処理技術は日本では発展せず、プルトニウムを利用した原子力発電所が稼働できる見通しは、全く立っていません。核燃料は再処理もできず、ひたすら放射線を出さなくなるまで、何万年も冷却し保管し続けなければならないのが現実です。)

おわりに
 原子力発電の本は、たくさんあります。でも多くの人は見ないようにしています。今回は、岩波新書の本を中心に紹介しましたが、その他の本もまた紹介したいと思います。

扉の写真
 60って、新幹線の事なんですね。でも、なぜ、ウナギとお茶と富士山なのだろう。ミカンは? ワサビは? サクラエビは? 
わかりません。

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